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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第三章 王都という名の試練

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第37話 最強ママ、突然の乱入

悩むルキウスパパに突如声をかけた人物の正体は?

「さっさと手伝うって言ったらどうなの?」


 パパの背中から、力強く押し出すような声がしたので、見上げると、そこにママが立っていた。


「え、ママ?」


 私のビックリした顔を見ると、ママは呆れ返った顔で、


「パパが昔馴染みと酒樽まるごと飲んでたって、工房の子が教えてくれたの。放っておくと絶対潰れるでしょ。セレナにもアミーカちゃんにも迷惑かける前に、休憩もらって迎えに来たのよ。」


 と漏らした。

 相変わらずママの察しは速い。

 パステルさんが来てなかったら


「つむじ風コンビ」?あぁ、セレナが...

 今日はやけ酒だぁー!!


 とかなっててもおかしくなかった。

 危ない、危ない。


「あなたがパステルさんね。手紙では挨拶させてもらったけど、会うのは初めてね。これからもよろしく。」


 ママが手を差し出すと、パステルさんはさっき元カノの話を暴露された衝撃が残っていたのか、おずおずと握り返した。


「よ、よろしくお願いします。」


「ああ、元カノの件?気にしなくていいのよ。昔のことなんて気にしないから。」


 ママの柔らかい笑みに、パステルさんの肩が少し下りた。


「で、ママ。いつから聞いてたの?」


「ん?パステルさん来た最初から。」


 と、ママは悪びれもせずにそう言った。


「どーやって隠れてたのよ!?」


「女はそうカンタンに秘密を明かすものじゃなくてよ、お嬢さん。」


 何故かカッコいい感じの微笑をこちらに向ける。


「だれが......うん、もういいや。なんかそっちの方がママ、っていうかマリーさんらしい。」


「やーん、セレナぁ、マリーなんてやめて、いつも通りママって呼んでよぉ。」


 今度は泣いてないのに泣き声で抱きついてきた。


「はぁ、コロコロ変わるね。ホント、『台風娘』じゃんか。」


「あら、それ誰から聞いたの?」


 ほら、いつも通りの顔にすぐ戻った。


「グレッダさん。パパのお友達なんだって。」


 そう言って私はグレッダさんを見る。

 するとグレッダさんはまるで怖いものでも見たかのように、ちょっとビクビクしながら


「あ、ああ。久しぶりだな、マリエッタ嬢。お元気そうで何よりだ。」


 とえらく丁寧な挨拶だ。


「あれ?ママってグレッダっさんと知り合いなの?」


「えぇ。私が元々子爵家だったっていう話はパパから聞いたことあるでしょ?その時に少しと、後は師匠のところでお世話になってる時に少し.....ね?グレッダさん。」


 と、とてもにこやかな顔を向けるが、グレッダさんの表情を見る限り、猛獣に狙われた草食動物にしか見えない。

 おおかた大型台風の進路に巻き込まれたんだろうなぁ。


 そしてママはその笑顔のまま、パパの隣に移動して、


「ところで、パステルさんとの間に隠し子なんていないわよねぇ?」


 と、こっちは笑ってるのに、笑ってない顔で聞いてる。

 さすがに本気で言ってるわけじゃないと思うけど。


「い、いるわけないだろ。俺とパステルは、そ、そこまでいってない!」


 パパー、それを娘と友達の前で言う?

 アミーカがお年頃だったら、絶好案件だよ、それ!


 ママはメニューを丸め、パパの頭にパーンと一発。


「子どもの前で変なこと言わないの。」


 うーん、怖いこともあるけど、こういう時はさすがに頼りになるなぁ。

 ママはそこで真面目な顔に戻り、パパにあらためて向き直る。


「それより、手伝ってあげたら?『魔力酔い』の薬、ずっとヴェルダで研究してたんでしょ。」


「え、パパが?ヴェルダにはマナ・マテリアルが無いのになんで?」


 疑問が浮かんだ瞬間、ママが続けた。


「ヴェルダは王都より魔力量の低い人が多いじゃない?私もそうだけど。強い魔力の近くにいると体調崩すのよ。街にあるマナ・パイプラインの中継点なんかね。」


「そっか。要は強い魔力が近くにあるかどうかが問題なんだ!」


「そういうこと。パパはヴェルダに来て少ししてからそれに気付いて、ずっと研究してたの。設備が弱いから進んでなかったけど、ここなら十分やれるでしょ?」


 でもパパは「しかし、」「だがなぁ、」と迷ってばかり。

 どうせ私たちのことが気になるんだろう。


「パパ、私とアミーカは工房の周りで遊べるし本もあるよ。リオもいるし大丈夫。」


「そ、そうです。観光はひと通り楽しませてもらいましたし、私は街の様子を見るだけでも、すっごく楽しいから大丈夫ですよ。」


 ちなみにアミーカのこの言葉は遠慮じゃなくて本気だ。

 実家が食堂でほとんど旅行に行けない寂しさは学校でも聞いていた。

 今のアミーカからしたら、王都で走り回るだけでも特別な思い出に残るほどの貴重な体験になってると思う。


「うーん……!」


 ここまで言われて迷うとか、男らしくないなぁ。

 でもあと一押しかな。


「パパ、ママのこと大好きなんでしょ。ママのために薬作ろうと思って研究始めたんでしょ。だったら行ってきなよ。」


「なっ、なんで、それを!?」


 パパが派手に動揺した。ママも驚いている。


「街に来てすぐ研究始めたならパパ自身の興味だけど、しばらくしてからっておかしいなって思ってさ。しかもそれをママが知ってたってことは、ママと付き合ってたか結婚してたってことだよね?」


 私は指を立てて続けた。


「つまりママの体質に気付いたパパが、何とかしたくて研究を続けた。そういうことでしょ。パパってほんとママのこと好きだよねー。」


「「セレナッ!!」」


 二人そろって顔真っ赤。

 わー、二人の焦った顔、始めて見る。

 なんかたのしー!


「はいはい、ごちそう様」


 さすがに言いすぎかなと黙ってようと思っていた言葉が、うっかり口に出てしまった。

 その瞬間、さっきパパに向けていたママの笑顔が今度は私に向けられる。


 静かに、まったく怒ってる風でもなく、あくまで静かに私に近づいたママは、私の頭に手を置いた。

 撫でる…わけなく、上から頭を押さえつけられた。

 そこまで痛いわけではないが、ミシミシと音がしたような気がする。


「セレナ。今日の仕事が終わったら、ゆっくり話しましょうか」


 ああ、これは死刑宣告だ。

 ママはそれだけを私に伝えると、パパに


「あまり飲みすぎないでね。」


 とだけ伝えて去っていった。



 アミーカ、ごめん。今夜はたぶん遊べないかも。


 というか、無事にママの元から帰れるのかしら。

 夜までになんとか台風の勢いが弱まりますように。

 私は心の中で必死に祈り続けるしかなかった。

ルキウス説得のはずが、セレナが調子に乗ったせいで、夜中の恐怖の時間が確定しましたね。

ホント、口は災いの元です。

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