第32話 歩いて5分で大爆発!?王都ってこんなカオスなの?
王都に到着したセレナ達一行。
ママの昔の姿にビックリして…
今回は王都観光開始です。
「爆発」とはいったい?
さて、セレナたちの驚きっぷりはひとまず置いておこう。
私はそろそろ、師匠の弟子としての顔、マリーに戻ることにした。
「マリー」という呼び名は、工房に入った初日に師匠が勝手に決めたものだ。
「マリエッタは呼びづらいから、マリーで。」
今考えるとなんて横暴な師匠だと思うが、その一言が、今ではすっかり定着している。
「で、手紙にも書いたけどさ。王都の街灯、来月で耐用年数切れなのさ。だから工房に新規製作の依頼が来てるわけ」
「どれくらい来てるんです?」
師匠は紙束を取り出し、机にぽん、と置いた。
「王城から伸びる主要道が三本。全部で百八十個。本来なら一年納期だが……今月末だとさ。耐用年数の計算を担当した役人がミスったらしいよ。」
「そりゃ迷惑ですね…」
「ほんとだよ。今日が十八日で、納期まで実質十日かと思いきや……十二日でいいらしい。無茶を言った自覚は王城にもあるみたいでね。翌月一日から、職員総出で回収するんだと。」
「新年の休み返上じゃないですか。」
思わず、師匠と顔を見合わせて笑ってしまった。
ああ、この空気。懐かしい。
「荷物置いたら、すぐ作業に入るわ。ルキウス、あとのことお願い」
「任せとけ! お嬢様方には、この俺が最高の王都ツアーを見せてやるさ。」
酒好きでだらしないくせに、こういうときだけ妙に頼りになる人だ。
「飲みすぎて潰れないようにね?」
軽く釘を刺すと、ルキウスは気まずそうに笑って頷いた。
◆◇◆◇◆
ママー、カムバック。
…口に出したら本当に戻ってこようとしそうで、言えない。
私たちはパパの案内で、王都散策に出かけることになった。
リオは“ペット扱いです”と分かるように、首輪とリードをつけている。
パパがつけようとしたときは全力で拒否したけれど、私が
「一緒に歩きたいから、ちょっとだけ我慢して?」
と頼むと、渋々受け入れてくれた。
(嫌だったよね……でも、一緒に行きたかったの)
「まずは王城だな。王城を見ずに王都は語れん!」
一番はしゃいでいるのがパパで、これはだいたい予想通りだった。
歩き始めて五分もしないうちに――
ドオォーン!!
爆発音が響き、アミーカが震え、リオが毛を逆立てる。
私は反射的に二人と一匹の前に出た。
(二人を守らなきゃ!)
腕をかばうように前へ出しただけなのに、アミーカの表情が少し落ち着いた。
「な、なに、今の?」
「セレナぁ、こわいよ……」
「グルルルルッ!」
その場にしゃがみ込んだ私たちとは対照的に、周囲の人々はのんびり歩き続けていた。
近くを通ったおばさんは「かわいいわねぇ。」と微笑みながら去っていく。
「悪い悪い。言っとくべきだったな。」
パパが皆の頭を軽く撫でて苦笑する。
「この先に小さな錬金術師の研究所があってな。鉛を金にするとか、不老薬とか、変な研究ばかりしてるんだ。」
(前世では普通の錬金術だけど……?)
「で、二日に一回くらい、ああいう大爆発を起こす」
(頻度がおかしいよ!)
「最初は警備隊が駆けつけてたが、防爆処理が完璧で被害ゼロらしい」
(街灯、巻き込まれないよね…?)
アミーカがおそるおそる聞く。
「で、でも本人は?」
「鎧みたいな防護服で、いつも無事なんだとよ」
「何その防護服、見てみたい!」
私が爆発の合った方向へ向かおうとすると、パパは咄嗟に私の襟首を掴み、私を肩に乗せた。
「さ、王城に向かうぞー!」
(あー!防護服見たかったのにー!!)
そして今度こそ歩き出した。
◆
「これが王都セントーレ最大のシンボル、セントーレ城だ!」
王城前に着いた瞬間、パパが片膝をつき、両腕を大きく広げた。
なぜか効果音が聞こえそうな気迫で。
門番は一ミリも反応しない。
(パパ……完全にすべってる)
「今度こそウケると思ったんだけどなぁ」
「いつもこんなことしてたの?」
「あの門番が笑うか笑わないかで酒をかけてたのさ。」
そう言って照れくさそうに、鼻先を掻いた。
見上げた王城は壮大だった。
前世で見たシャンボール城に似て、左右対称で美しい。周りは堀に囲まれ、跳ね橋で渡る構造は防御にも優れている。
こちらの道には花壇と街灯が整然と並び、夜はきっと明るいのだろう。
王城を見上げながら、ふと思った。
もしママがここを歩いていたら、どんな顔をしただろう――
その想像が胸の奥をあたためた。
「そういえば、国の名前も王都の名前もセントーレなの?」
「そう。国はセントーレ王国、王都もセントーレ。“セントーレ”とだけ言えば普通は国を指すな
パパは城を見上げながら続ける。
「この城には、二人の通う初等学校を管轄する教育省や、錬金術ギルドをまとめる魔導省のトップが集まっている」
そして補足するように言った。
「ただし料理関係は別だ。昔、食材名を統一した偉人がいてな。分かれると呼び名が乱れるからって、その名残で別管理なんだ」
(ああ、あの転生者らしい人…)
思い出して尋ねた。
「『セントーレ王国食材辞典』って、どこで買えるの?」
「王都ならどこでも売ってるぞ」
「見てみたいな」
アミーカが申し訳なさそうに言う。
「ごめん、それ…うちにある」
(そんなメジャー本だったの?)
ショックを受けていると二人が補足してくれた。
「食材を扱う店を開業申請すると、役所から必ず渡されるんだって。」
「名前の統一と、正しい食べ方を知ってもらうためだな。」
(制度まで整えちゃうなんて、本当に有能だったんだ)
「名前は?」
「アリーチェ・プラートって書いてあった」
(まあ、そりゃそうだよね。私だって“セレナ・シルヴァーノ”だし)
パパが両手を叩いた。
「よし! 次は王都名物の大噴水だ!」
歩き出した瞬間、街灯の支柱がふと目に入った。
根元がわずかに歪んでいる。
誰も気づかない程度の、しかし私には見過ごせない“嫌な気配”。
(間に合うよね……街灯の製作)
胸の奥に沈んでいた不安が、確かな形を帯びて広がった。
なんかセレナよりアミーカより、パパが一番浮かれてるように見えますね。きっと久々の王都が楽しいのでしょう。
次の話ではパパの昔の知り合いが登場します!
王都ならではのキャラ第2弾(第1弾はベーネ師匠なので)ですね。
ぜひ、お楽しみにっ♪




