第30話 いつもと違う冬休み。王都旅行決定!
今回からいよいよ王都旅行編です!
基本ヴェルダの街周辺しか知らないセレナ、そしてアミーカが、王都でどんな人と絆を結び、どのような成長を果たすのでしょうか?
ハァーと吐いた息が白く染まる。
冬休みも迫り、学校では年末をどう過ごすかという話がチラホラ出てきた。
(うちはいつも通り『月のしずく』でバカ騒ぎかなぁ)
今年になってバルドさんとパパが仲良くなったのだ。
ヘタをしたら徹夜で騒ぎかねない。
ブルルッ。
そうならないよう、ママと止めなきゃね。
そんな私の想像は、帰宅後すぐに破られることとなる。
家に帰るとママが工房から出てきて
「セレナ、ちょっといい?」
と私を呼び止めた。
何気ない呼びかけだと思ったのに、続いた言葉で一気に目が覚めた。
「王都からお仕事の依頼が来たのよ。」
「えっ、王都?」
声が勝手に上ずる。
ママの昔の師匠ベーネさんから、王都の街灯交換の手伝いを頼まれたらしい。耐用年数が一気に来て、周辺工房にも応援が回ってるとか。
お給料もしっかり。生活は心配なし。
(でも、ママだけ王都に行って、わたしはパパとお留守番? いや、リオはいてくれるけど。)
(ママが長くいないのはさすがにイヤだな。)
そんな気持ちを見透かしたように、ママは笑った。
「セレナも一緒に行きましょ。パパもリオも連れて、みんなで。」
「……みんなで?」
「下宿も用意してくれてるの。ペット可よ。私も昔ね、そこで猫を飼ってたの。」
懐かしそうに言うママの横顔で、不安が一気に消えた。
「リオ、一緒に王都だって! よかったね!」
頭を撫でた瞬間、リオが勢いよく飛びついてきた。
「ちょ、リオ、待った……あーっ!」
ドスン。
「グエッ。」
椅子ごと床に倒れて、思わず変な声が出た。
「あらあら、大丈夫?」
「平気。あー、うん、どこも痛くないよ。」
リオが上目遣いで「クゥン」と鳴く。
しょんぼり具合が分かりやすい。
「もう、リオったら。怒ってないよ。王都でもいっぱい遊ぼうね。」
抱きしめたら、あったかくて、冬の冷えなんて一瞬で飛んだ。
王都。
パパが若い頃に住んでいた街。ヴェルダの何倍もあって、珍しい素材も魔導具もある。
(うわ、最高じゃん。色々見たいなぁ。)
と浸ってると、工房からパパがぬっと顔を出した。
「昼はママが仕事だからな。パパが案内してやるぞ。」
手を拭きながら得意げだ。
「王城に冒険者ギルドに錬金術師ギルド、昔馴染みのうまい飯屋もな!」
(王城!どれだけ大きいのかなぁ。)
「うわぁ、楽しそう。よろしくね、パパ。」
そう返したら、リオまで尻尾をぶんぶん振って楽しそうにしていた。
次の日、学校でアミーカに話したら案の定だ。
「えー、いいなぁセレナ。うち食堂休めないから旅行なんて行けないのに。」
そりゃ羨ましがるよね。
でも冬休みはほとんど遊べなくなるし、ちゃんと話しておかないと。
(でも私だって本当は、アミーカと一緒に行けたら。)
あれ、でもウチなら無理じゃないよね?
けど先にこれアミーカに言って、ママ達に断られたら、きっと私もアミーカも立ち直れない。
まずは家に帰ってからだ。
家に帰るなり、工房へ突撃。
「ママー!」
「いいわよ。」
「…まだ何も言ってないんだけど?」
謎の即答に、思考が止まる。
「アミーカちゃん連れて行きたいんでしょ。顔見たら分かるもの。」
「え、えっ?」
「フローラさんとバルドさんにももう話してきたわよ。あなたのところなら安心して預けられるって。」
さらっと爆弾を置いてくる。
さらに追い討ち。
「今日は『月のしずく』で夕ご飯よ。お礼にごちそうしてくれるって。」
(…ママ、凄い。)
もう笑うしかない。
胸が軽くなるのに、頭だけはずっと追いつかない。
「ママ、ありがとう!」
「家族旅行は賑やかなほうが楽しいでしょ?」
そう言われた瞬間、胸がぽかっと温かくなった。
アミーカと一緒に王都。
王都では何が起こるんだろう。
考えただけで、胸の奥がずっと落ち着かなかった。
ママのマリエッタが恐ろしい行動をしてくれてますが、たぶん王都旅行編で一番雰囲気変わるのこの方かもしれません...
さっそく次の話でそれが垣間見えます。
次回もお楽しみ下さい!




