第3話 初めての魔石操作!青い魔力が私を認めた日
魔導具作りの『怖さ』とはいったい?
私は緊張した面持ちで庭に出た。
魔力の危険性。何を見せられるんだろうか?さっきママが石を割ったことを思いだし、背筋に冷たい汗が流れた。
「セレナ、よく見てて」
ママが握り込んだ青色の石から水が勢いよく飛び出し、庭を濡らす。
「今のは水の魔力を含んだ『水の魔石』ね。じゃあこれが『火の魔石』の場合はどうなるか分かる?」
それはもう嫌と言うほど分かった。
もしこれを家の中で暴発させたら......
私はその想像に身震いした。
ママは私の顔を見て理解したと分かったのだろう。
「そ。そういうことなの。魔導具を作るには魔石がほぼ必須。でもこの取り扱いを間違えたら大事故につながるの。」
ママは『火の魔石』を指先でいじくりながら、
「でもね、もっと怖いことがあるんだけど、セレナに分かるかな?」
と聞いてきた。
もっと怖い?
自分の家が火の海になるより怖いことなんて......そこで気が付く。
「お客さんの家で事故を起こすこと?」
そうだ、下手をしたらお客さんの生命を奪うことにもなりかねない。
「そ、よく出来ました!だから私たちの一番の仕事は、『安全な』魔導具を作ることなの。笑顔がどうとかはその先にあることなのよ。だからセレナの想いは良いことだけど、決して順番は間違えないで」
私は深くうなずく。
まずは『安全』
分かったよ、ママ。
私はしっかりとその教えを胸に刻む。
「さ、それじゃ次は種類について教えるわ」
そう言ってまた工房へと入っていった。
「さて、魔導具には大きく分けて二つの方法があるのよ。『付与系』と『回路系』」
ママは机の上に、木の板と金属の板を並べて説明を始めた。
「『付与系』は、素材そのものに直接魔力を込めて、特別な効果を持たせるもの」
そう言って手近にあった布を持つ。
「例えば、この布に火の魔力を込めれば燃えにくくしたり、水の魔力を込めて水を弾くように出来るの」
「へぇー!」
素材自体に効果をプラスする感じかな?
「それに対して『回路系』は、今朝ママが書いていたみたいに、まず紙に『魔導回路』を書く」
金属の板の横にあった図面を私に渡す。
「これは魔力をどう動かすか決めるお約束みたいなものね。これを素材の上に置いて魔力で焼き付けるんだけど...」
ママは手元からもう一枚魔導回路の書かれた紙を取り出し、金属の板の上に乗せる。
「この時の注意しないといけないのは、ちゃんと回路の最初が魔石にさわってること、回路の最後がゴールにさわってること。」
なるほど、そのまま電子回路だったわけね。澪の持つプログラミング?の感覚と似ている気がした。
きちんと初期情報を定義して、順を追って処理させる理屈はやっぱり似てるなーって。
―――
「じゃあまず付与系の基礎ね。付与系は例えば水の魔力を布に与えたりするんだけど、ママには属性がありません。さて、こんな時はどうしたらいいでしょう?」
「えっ!......うーん。誰かにやってもらうとか?」
「それじゃあいつまで経ってもママ一人で作れないじゃない。そういう時はこれを使うの」
ママが棚から小さな箱を取り出した。
開けると中には、キラキラした赤、青、緑、黄色の石が入っている。
これはさっきの魔石。
「自分にない属性の魔力は、この魔石から取り出して使うことができるのよ」
「じゃあ、ママも属性ないけど、火とか水の魔導具作れるのは、これがあるから?」
「そう、正解。錬金術師はこの魔石から魔力を上手に引き出す技術を覚えるのが、まず第一歩なの」
ママが頭を撫でてくれるが、なんだかちょっと気恥ずかしい。
なるほど、属性持ってなくても魔石があれば、色々な魔導具が作れるんだ。
魔石って便利!
―――
「じゃあ、まずはその『水の魔石』から、魔力を引き出す練習をしてみましょうか」
「まず水の出し方ね。魔石に、自分の魔力をぎゅーっと押し込むように入れてみて」
私は魔石をぎゅっと握って、お腹のあたりに力を込める感じで、「えいっ」て魔力を押し込んだ(つもり)
ビシャッ!!
「わっ!?」
突然、魔石からさっきのママのものより、強く水が噴き出して、ママのエプロンを濡らした。
「うわっ!ご、ごめんなさい」
「うふふ、大丈夫よ。でも勢い良すぎたわね」
ママは濡れたエプロンを気にせず、優しく私の頭を撫でた。
「これが魔石の力の使い方ね。火の魔石とかは今の勢いで火が出ちゃうから、セレナは一人で勝手に使わないこと。火事になっちゃうからね」
今の勢いで火が?魔石怖っ!
―――
「じゃあ次が本番ね。魔石から魔力を『吸い出す』イメージよ」
「まず、魔石を持っていない方の手、セレナなら左手かな?
その手のひらの上に、見えないコップがあるものと思ってごらんなさい」
見えないコップ?あー、あるある。
......ウソです、よく分かんないです。
「次に、右手で持ってる魔石から、魔力をそーっと手の中に吸い込んで、左手のコップに少しずつ溜まっていくイメージで」
(そーっと吸い込むって何っ!?ってか、石の中身吸い込むって想像もつかないんだけど)
「上手くいくと、左手のひらの上に、水色の魔力の球が浮かび上がってくるはず」
私は言われた通り、右手の魔石に意識を集中して、「吸い込めー、吸い込めー」と念じてみる。
左手には見えないコップ。
全然、何も起こらない。
どうやって吸い出すんだろう?
ストローで吸い出すのはイメージしやすいけど、石にさしたら折れるよね、絶対。
私がうーん?と難しい顔をしていると、ママは苦笑いして箱からさらにたくさんの水の魔石を取り出した。
「はい、これ、10個あげるから、ちょっと練習してみなさい。最初は難しいから、焦らなくていいからね」
ママは自分の作業に戻ってしまった。
置いてかれちゃった...
―――
私は目の前に並べられた10個の水の魔石を前に、途方に暮れる。
吸い出して移す、吸い出して移す......
何回か試してみたけど、全然うまくいかない。魔石はただの石ころみたいに黙り込んだままだ。
中身が勝手に移動してくれたら楽なんだけどな。例えば高いところにある水が低いところに勝手に流れてく......
(あ!『サイフォンの原理』!!)
これなら、無理に吸い込む必要もないぞ!
左手に水色の魔石を持って心臓より少し高い位置にかざす。
右手は左手より少し低い位置、おへその前あたりに構える。
魔石のことはマグカップでイメージしよう。
それなら外から中の水が見えなくても仕方がないし、ホースもストローもささる。
右手には変わらず、見えないコップがあるイメージ。
私は見た目に左右されないよう目を閉じる。
マグカップから伸びた透明なホースが、右手のコップにつながると、青色の魔力がゆっくりと流れ落ちていく。
じわじわと、左手のマグカップから温かいものが右手に流れ込む感覚。
腕がプルプル震えるけど、止めちゃダメだ!
私はお腹に力を入れてなんとか我慢する。
しばらくすると流れが止まる。
恐る恐る目を開けると、右手のひらには淡い青色の、ピンポン玉くらいのキレイなボールが、ふわりと浮かんでいた。
胸の奥がぽわっと温かくなる。
できた、私の力で魔石の魔力を動かせたんだ!
まだ錬金術師として、最初の最初、第一歩目だけど、自分の力で何かを成し遂げられる。
その実感が、体中にじんわりと広がった。
すると、「ガタッ!」と音がするので振り向くと、ママが驚きの表情で固まっていた......
セレナが魔導具関連に挑み、初の成功です。
しかしその後に続くママの動揺はいったい何でしょうか?
次回お楽しみに!
楽しんでもらえたら、★入れてもらえると嬉しいです♪




