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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第二章 つむじ風が吹いた教室で

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第27話 少女たちの成長。喧嘩と仲直りと未来の教育

アミーカの自白で「つむじ風コンビ」もバレ、イタズラの全容について説明したセレナ。

それに対するマチルダ先生の反応とは?

「なるほどね…。色々とよく分かりました。二人とも、本当にありがとう。」


 マチルダ先生は椅子から立ち、そう言って深くお辞儀(じぎ)をしてくれた。


「せっ、先生、そんなおじぎなんてしなくていいですって!わたし達は楽しそうと思ってやっただけなんですから。」


 マチルダ先生はゆっくりと首を横に振った。


「「いいえ。これは私が尊敬する師匠の教えでもあるの。教師とは教えるだけのものではない、子どもから教わるものでもあるってね。」」


 そう言うとマチルダ先生は窓の方へ近づき、空を眺めた。


「要するに何か教わったら相手が誰であれ尊敬し、感謝をしなさいということね。」


(んー?それっぽいの私も前世で聞いたことあるな。

 マチルダ先生も優しいだけじゃなくて、そういう理念みたいなのを持ってるんだなぁ。

 ちょっと尊敬(そんけい)。)


 なーんて思ってたら、先生は椅子に座り直し、いたずらっ子のような笑みを浮かべて聞いてきた。


「それで、ちょうどいい機会だから聞いておくけど、あなたたち、イタズラはやめる気はないのかしら?」


(はー、この機会に聞いておきたいわけね。

 これ、続けます!って言ったら先生たちに告げ口されるパターンかな?)


 私がそう思い、なんと答えるか迷っていると、


「んー、そろそろ止めると思いますよ」


 言ったのは、アミーカの方だった。


「「えっ!?」」


 奇しくも私とマチルダ先生の大きな声が被った。


 だって、あのアミーカだよ?

 私を悪の道に引き込み、その上自分が先頭きってイタズラの道を走り続け、ついには先生たちから『ヴェルダ初等学校のつむじ風コンビ』なんて異名(いみょう)をつけさせた、あのアミーカがだよ!?



 自分からイタズラをやめると言うなんて、そらこそ天地がひっくり返ってもありえないと思ってた。


 アミーカは両手を(ひざ)の上に置き、モジモジしたような感じで


「…ちょっと、やりたいことが見つかったような気がするんです。でも、まだ本当にそれが自分のやりたいことなのか、ハッキリとは分からなくて…。」


 と話す。

 が、次の瞬間顔を上げ、


「これがハッキリ『そうだ』って分かったら、たぶんイタズラしてる(ひま)もなくなると思うので、止めると思います」


 少し()れたように、でも真っ直ぐな目でマチルダ先生にそう言った。


「はー!? 何それアミーカ! わたし、そんな大切なこと聞いてないんだけど!」


 私は強い口調で()め寄る。


 「あんた、そんな大切なこと親友の私にすら黙って、しかもイタズラやめるとか勝手に決めて、何なの!!」


 黙ってたことに怒ってるんじゃない、親友、いや、大親友と信じてた相手が私に何も相談をしてくれなかったのが悔しいんだ。


 「セレナさん、ちょっと落ち着きなさい。」


 「先生は黙ってて!!」


 (あ...しまった。つい勢いでひどいことを言っちゃった...!)


 「最初に声かけてくれて、イタズラ誘って、それからだって学校でも家でも楽しく遊んで、親友だったと思ってたのは私だけだったってことね!」


 そこまで話すと涙があふれてきた。

 だって、本当に悔しいし、悲しいんだ。


 アミーカのためにと、精一杯コックさんセットを作ったあの頑張りだって、丸ごと否定されたようで。


 私が机に突っ伏して泣き濡れていると、アミーカもいつの間にか泣いていたようで、


「だ、だって昨日ちょっと思っただけだもん! だから本当にこれからなの!決まったらセレナに最初に言うつもりだったもん!!」


 と泣きながら言ってきた。


「何なのよ、そのやりたいことって?」


 私は少しだけ顔をアミーカに向けて聞いてみるが、


「ちゃんと決まったら教えるから、もうちょっとだけ待ってて? なんか、今口に出したら、消えて逃げちゃいそうな気がして…私もちょっと(こわ)いんだよ。」


 と、とても弱々しく答えてきた。


 これは本気で悩んでる、とっても真剣なことなんだな。


 (親友の私が一番に気づいてあげるべきだった)


そう感じ取れた以上、大親友にすることなんて決まってる。


 私は袖でグイッと涙を拭くと、顔を上げ、アミーカの両肩に手を置く。


 「ひどいこと言ってごめん!アミーカのそんな悩みも知らずに。私待つ!だから絶対一番最初に教えてよね?」


 と謝罪し、そうお願いした。

 アミーカも涙を流しながらではあるが、


 「当たり前じゃない!!」


 とニコッと笑ってくれた。


 「ふぅ、一時はどうなることかと思ったわ。2人とも、本当に親友同士なのね。」


 マチルダ先生は、そう言って微笑み、私たちにハンカチを貸してくれる。


「先生、さっきはごめんなさい。」


私がマチルダ先生に謝ると、先生は笑顔で頷いてくれた。


 そしてアミーカに向き直って、


「アミーカさん、それが何なのかは分からないけれど、もし私や他の先生で力になれそうなことがあれば、先生たちは全力であなたを応援するから。いつでも相談に来てくださいね」


 とエールを送る。


 アミーカは、少し驚いた顔をしたが、やがてはにかむようにコクンと(うなず)いた。


 —


「さて…」


 マチルダ先生は一つ息をつくと、私たちに向き直った。


「約束通り、今回のことではあなたたちを責めません。イタズラも落ち着いてきそう、ということですから、他の先生たちにも二人のことは黙っておきます。」


 パアアァッと私達の顔が明るくなったのは許して欲しい。


「…その代わり、もし次にあまりにも(ひど)いイタズラをしたと感じた時は、私の口がうっかり(すべ)ってしまうかもしれませんから、十分気をつけるように」


 マチルダ先生が少し意地悪(いじわる)く言うと、アミーカが涙の跡が残る顔でニヤリと笑う。


「分かりました! 先生の口が(すべ)った時は、わたしもバルガス先生とのこと、うっかり口を(すべ)らせちゃうかもしれないので、先生も十分気をつけてくださいね?」


「なっ…! ア、アミーカさん!? ど、どこでその話を…!?」


 マチルダ先生が思わず立ち上がりそうになった。


「ふふん」


 アミーカは楽しそうに笑う。


「食堂には秘密なんてないも同然ですもん。二人では気を付けてても一人の時にうっかりと、とか、友人、知人、親戚(しんせき)、色んなところから()れちゃうもんなんですよねぇ。」


 さっきまで「つむじ風コンビ」のことをバラすと、意地悪(いじわる)そうに微笑(ほほえ)んでたマチルダ先生が、今はもう食われる側だ。


 あまりに瞬間の逆転劇、その弱々しさに可哀想(かわいそう)になってきた。


 —


(しかしマチルダ先生とバルガス先生…ねぇ?

 職場結婚とかになるのかな。)


 この組み合わせだとバルガス先生の猛烈(もうれつ)アタックが予想出来ちゃうけど、みんな本当にどうやって彼氏(つか)まえてるんだろ?


(あれ、もしかしてここ最近バルガス先生が張り切ってたのってこれのせい?)


 なんだかんだ言っても、結局前世は彼氏は出来ず、友達の話ばっかり聞いてすっかり耳年増(みみどしま)だった私からすると、相手が相手とは言え、きちんと相手がいるマチルダ先生はちょっと(うらや)ましかった。


 —


 そんな私の悲しい回想もどこ吹く風と、アミーカは絶好調だ。


「うちのママも結構ウワサ話好きだからすーぐ家族には話しちゃうんですよね。」


 と、ここで半回転をして後ろを向く。


「先生たちが例のチョコレートファウンテンで捕まえる計画を話してた時もバッチリ聞いちゃってたみたいで。」


 そしてもう半回転してマチルダ先生へ向き直る。


(…アミーカ、アンタの夢、舞台女優(ぶたいじょゆう)じゃないよね?)


「先生たち帰った後すぐに、『ねぇ、これまさかあんたじゃないわよね?』って(うたが)いかけながら教えてくれましたよ。」


「…そんな…」


「まあ、ママには『そんなわけないじゃん』って言っときましたけどね!」


 アミーカはケラケラ笑った。


 いやー、なんかずっとアミーカの独壇場(どくだんじょう)だなぁ。

 マチルダ先生目(うる)んできてるし、そろそろ止めるべきか?


「あ、でも安心してください。お店で聞いたお客さんの話は、絶対に他の誰かに話しちゃダメ!っていうのが、うちの鉄のルールなので。」


 アミーカはマチルダ先生の両手を取ると優しくそう伝える。


「今回は、マチルダ先生が『当人』だから、特別に話しちゃいましたけど」


 そしてイタズラっぽく笑う。


(…おいおいアミーカ、私がここにいるの、忘れてないか?)


 私は隣でアミーカの肩をツンツンつつく。


「ん? ああ、セレナは私『本人』と同じ扱いだから、ノーカン、ノーカン!」


(なんだ、それ!)


「それじゃ、これからもよろしくお願いしますね、マチルダせんせっ!」


 アミーカは小悪魔(こあくま)のような笑顔を浮かべてそう言うと、私の手を引っ張って個人指導室から出ていった。



(……先生、本当に大丈夫かなぁ?)


 ◆◇◆◇◆


 セレナさんとアミーカさんが去り、一人残された部屋で、私は大きく溜息(ためいき)をついた。


 あまりに突然な秘密の暴露(ばくろ)に、もう一押しで生徒の前で泣き出すところだったが、なんとか耐えることが出来た。


 ふぅーーー


 深く息を吐き、顔を上げる。

 口元には、なぜか自然と笑みが浮かんできた。


 (ふふっ、あの二人も子どもっぽいところあるのね。)


 先ほどの大ゲンカに発展しそうなやり取りを思い出し、私もつい自分の初等学校時代を重ねてしまった。


 一皮むけばただの子ども、そうは言うが将来の初等学校の教育のあり方に一石を投じるセレナさんの提案は非常に魅力的だった。


 国費負担の無料学校。

 そのため生徒もどこか適当に授業を受けてる、そう思っていた。


 しかしそれが私たち教師の怠慢によるものだとしたら?


 セレナさんの提案はまさにそこを突いた形だ。

 あの子の頭の回転よりも、クラスメートの将来がもったいないと思う、その優しさにこそ私は打ちのめされ、頭を下げた。


 教師としての意識で言えば、あの瞬間のセレナさんはこの学校の誰よりも教師だった。


 (私だって負けないからね、セレナさん!)


 私は早速教職員会議の場に、先ほどの時間割変更案を通すための企画書を作るため、職員室へと戻っていく。


 その足取りはここに来た時よりもとても軽く、どこまでも飛べそうな気がしていた。

まさかのアミーカの大逆転!でもこの事態を予測してた訳でもないアミーカは、ちゃんと家の言いつけ守って、セレナにすらここまで言ってないんですよね。偉いと思いません?

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