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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第二章 つむじ風が吹いた教室で

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第26話 授業を変えるひらめき ― セレナの挑戦で見えた新しい教室

前回のイタズラの発端となった貼り紙。

マチルダ先生はそれを見てある事に気付いたようですが...?

 後日。私とアミーカは放課後マチルダ先生に個人指導室に呼び出された。

 3年生が進路相談などに使う、防音設計の部屋だ。


「二人とも、来てくれてありがとう」


 先生は私たちが席に着くや(いな)や、例の偽造(ぎぞう)された約束の紙をテーブルの上に置いた。


「これ私の字に似せてあるんだけど、よく見るとあなたの字なのよね、セレナさん?」


「知りません」


 私は紙を一瞥(いちべつ)もせず、即答した。


(わざとらしかったかな?)


 いや、でもまさかこの世界で筆跡鑑定(ひっせきかんてい)的な理由で即バレするとか思わなかったから、私もつい動揺(どうよう)しちゃったんだよね。


「ふふ、そう?まあ、いいわ。今回に限っては、あなたたちを責めるつもりはないのよ、『つむじ風コンビ』さん?」


 マチルダがそう言うと私はアミーカと、うん?と顔を見合わせた。


 それもそのはず。

『つむじ風コンビ』は教師間の呼び名で、生徒たちには知られていないらしい。


 私たちも当然知るはずがない。

 マチルダがその由来を軽く説明すると、途端(とたん)にアミーカの目がキラキラと輝きだした。


「ねえねえセレナ、わたしたち『つむじ風コンビ』だって! カッコよくない!?」


 アミーカが興奮して私の肩を()する。

私はもう呆れ顔だ。


「アミーカ、「わたしたち」って先生の前で自白しちゃってるけど、いいの?」


 私がそう言うと、アミーカはハッとした顔になり、(あわ)てて自分の口を手で押さえた。


(へー、人って本当にこういう時、口を手で押さえるものなんだ。まるでマンガみたい。)


 はっきり言ってアミーカはたまにこういう迂闊なところがある。

 楽しさに負けて、ついいらないことを言ってしまう、やってしまう。


 いつもなら私のフォローでなんとかしてきたんだけど…

 さすがにこれは無理だわ。


「さっきも言った通り、今日に限ってはあなた達を責める気は全くないの。実際たった一日だったけど、素晴らしい体験をさせてくれたわけだし。」


 そう言うと先生は紙をカバンにしまって続けた。


「ただ、何でこういうことをしたのか、理由を知りたくて。それでわざわざこの部屋に呼んだのよ。」


 マチルダが真剣な表情で問いかける。

 まあ今回は実はちゃんとした理由があるし、いつものアミーカ発信のイタズラでなく、正真正銘(しょうしんしょうめい)、私発信のもの。


(先生の真剣な顔から逃げることはしたくないな…)


 私は口を開いた。



「あのね先生。先生の歴史の話、わたしはとても大切だと思ったの」


 私は真っ直ぐに先生の目を見て続けた。


「文字とか計算は、大人になってからも使うし学べるけど、歴史はこの先、高等学校くらいでしかちゃんと学べないでしょ?」


 そう言って私はカバンから歴史の教科書を取り出す。


「ここでしっかり聞かないと、知らない人は知らないままになっちゃうかもって思って。」


 今度はアミーカが口を挟む。


「ほら、前に『マナ・パイプライン』の話があったじゃないですか」


 それを受けて私も続ける。


「あれだって昔の軍事用が、王城の錬金術師の『小さな気付き』で今ではなくてはならないものになったんですよね?」


 そう語ると先生は(おどろ)いて(うなず)く。


 私達がそんなにきちんと授業を聞いていたとは思いもしなかったのだろうか?

 いやいや、ナメないでいただきたい。


 私はイタズラが仮に見つかった時に、


「これだから勉強の出来ない子どもは…」


 と言われないよう、初年度からテストの点数は取れるようきちんと対策をしてきた。


 アミーカも途中から巻き込んで二人で頑張って勉強はしてたのだ。


 後で確認して欲しい。

 1年の後半からは2人とも学年のトップ10には入ってるはずだ。


 ちなみに『マナ・パイプライン』は地中に()まった電線とでも考えてほしい。

 この線を通して王都から魔力が届けられ、街の街灯や、各家庭にまで繋がってるのだ。


 そして私は続けた。


「歴史って、ただ昔話を聞くだけじゃない。昔の人の失敗とか成功を知ってたら、いざっていう時にそれが自分の役に立つかもしれない。」


「それに、昔の人の話って、それ自体がすごく面白いんだもん!」


(おっと、ついつい私の本音が出ちゃった。)


「そう考えたら、一度みんなにもちゃんと授業を受けてほしくてこういうことしてみたんです」


 アミーカが隣でうんうん(うなず)いてるけど、どういうつもりで(うなず)いてるのか気になるなぁ。

 まぁいいや、気を取り直して。


「今回分かったのは、みんな授業に消極的なのは、やる気がないからじゃなくて、きちんと授業聞けてないから興味を持てないんだろうなってことです。」


 私は続けて説明する。


「で、聞けてない理由ですけど、一つに集中力が持たないんじゃないかと思いました。今回は1日遊び放題って無茶苦茶な報酬(ほうしゅう)(あお)って1日集中力持たせてみましたけど、反動すごかったじゃないですか?」


「セレナ、あんなの真に受ける人少ないって思ってたから、全員マジメにやり出して(あわ)ててたんですよ?」


 アミーカがクスクス笑う。


 笑うな!確かに読みが甘かったのは認める。

 子どもたちの「遊ぶ」ということに対する執着心(しゅうちゃくしん)を軽く見すぎていた。


「まぁね。だからこの間は(あわ)ててフォロー入れたんです」


「あれは計画通りではなかったってことなのね。」


 先生が意外そうに私を見るが、私だってイタズラ計画初めてだったし、少し失敗しても仕方ないと思わない?


「それで、続けてやるならごほうびありきのやり方は大変なので…例えば授業時間短くしてみませんか?」


「それは無理よ、初等学校は国の機関だから、きちんと教えなきゃいけない範囲が決まってるの」


 とんでもない!と言いたげな表情でマチルダ先生は首を振る。


(どうして大人はこう杓子定規(しゃくしじょうぎ)なやり方しか出来ないかなぁ。)


「国から決まってることってどこまでですか?」


「教える範囲と学校の運営時間、それと1日の授業時間かしらね。まあ他にも教材の指定とか色々あるけど。」


「じゃあ、例えばこんなのどうですか?」


私はカバンからノートを取り出し、ペン先を軽く弾いた。

 そしてページの中央に横長の四角をすっと描く。


「今って授業開始が13時から、終了が17時ですよね? 授業50分、休憩10分で4コマ構成」


 私はそう言いながら、四角を四等分して中に「授業」「休み」と書き込んだ。

 マチルダ先生は腕を組み、アミーカは目を丸くして覗き込む。


「でもこれを――こう!」


 私は勢いよく次のページにもう一つ四角を描き、線を倍の数に増やす。

 ペン先が走るたび、カツカツと軽い音が響いた。


「授業を25分にして、代わりに休憩5分。教科は連続させない。集中力を切らさないリズムで進めるんです」


「わっ、なんか見やすい!」

 アミーカが感心の声を上げる。


「なるほどね……」

 マチルダ先生が眉を上げ、図をじっと見つめた。


「どうしてこんなことを考えついたの?」


先生の問いに、私は(となり)のアミーカを指差した。


「これはアミーカを見てて思ったんです。わたしは家で魔導具作りをしてるから長い時間集中するの慣れてるんです。」


そう、魔導回路を特訓してたら、1時間なんてあっという間に過ぎてしまう。


しかも私の場合は、大学の講義なんて60分過ぎるのが当たり前だった。

50分授業なんて短いくらいだ。


「でもアミーカは大体30分くらいするとソワソワしだすんです。で、聞いてみたら、家の食堂の手伝いだと、一つの作業は長くても30分くらいで終わることが多いんですって。」


アミーカがバツが悪そうに話し出す。


「正直授業だと長くて(つら)くて後半()きちゃって、1年の時はそれで授業サボったりしたこともあったんです。」


そう言ってほっぺをかりかり()く。


「でもセレナがそれに気付いてくれて、一緒に勉強する時は30分で休憩挟む形にしてくれたんです。」


「そうしたらアミーカ、劇的に成績上がったんですよ!たぶん30分の集中力なら私以上かもしれません。成績、後で見てみて下さい。」


そう話すとアミーカは横でウンウンと(うなず)く。


(おい、調子いいぞ、アミーカ。

私のおかげなんだからね?)


フゥッ。先生は一度溜息(ためいき)をついた。


「それは知ってるわ。『つむじ風』コンビの犯人があなたたちじゃないかって思われ始めた頃に、急に成績が伸びだしたから、いったん候補から外れかけたくらいだもの。」


うっ、結構早くから特定されかけてたんだ…

先生たちもやるなぁ。



「なるほど、確かに理屈は通ってるわ。でも、実際に導入するには管理課への申請が必要ね。授業時間の変更はすぐには通らないの」


 その現実的な一言に、私は少しだけ肩を落とした。

 でも次の瞬間、先生が柔らかく笑う。


「……ただ、試験的に特別授業の一環でやるくらいなら、方法はあるかもしれないわ。」


 その言葉に胸の奥がじんわり熱くなる。

 私は顔を上げて先生を見た。


「本当ですか?」


「ええ。子どもたちが授業をどう感じているか、あなたたちの方がよく知っているもの。」


「私だってね、単に授業をこなすよりも、きちんと皆が学びたいと思える授業がやりたいの。それが教師になった目的だもの。」


 マチルダ先生はそう言って、ノートを閉じた。

 その手つきが少しだけ優しかった。


 アミーカが私の袖を引っ張り、こっそり笑う。


「やったね、『つむじ風コンビ』の作戦成功かも」


「いやいや、まだ何も決まってないじゃん。」


 そう言いながらも、口元が緩むのを止められなかった。


 窓の外では、夕日が校庭の屋根を金色に染めていた。

 胸の奥で、ほんの小さな確信が芽生える。


 ――マチルダ先生となら、初等学校をもっといい学校にしていけるのかもしれない。

セレナの授業中の余裕の態度、実は内心心臓バックバクでした。「夢の一日」の終わり、急きょアミーカと作戦会議をして考えた対策が「とりあえず褒め倒してウヤムヤにしよう!」作戦でした。


あと今回カッコよさに惹かれて自白したアミーカ。セレナごと巻き込むこのお話は、今後も何回か繰り返されます。

まるでケンちゃんのことをからかったお返しのように...

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