第24話 「アミーカのため」の最高の贈り物
不思議な力のおかげで付与も成功。
いよいよ今日はプレゼントを渡す日。
さて、喜んでもらえるのでしょうか?
そして、アミーカの誕生日当日。
私たちは、お祝いも兼ねて、夜ご飯をアミーカのお店『月のしずく』で食べることにした。
もちろん、プレゼントもちゃんと持って!
いつもアミーカと遊んでるリオも、今日はおめかしして一緒だ。
ちなみにアミーカのうちは食堂なので、昼間から誕生日祝いにどこかへ行くとか、パーティーするとかはないそうで、少し早めにお店を閉めて家族でお祝いするのが毎年恒例のことだそうだ。
お店に着くと、いつものように常連のお客さんたちで賑わっていた。
「お、シルヴァーノさん一家! いらっしゃい!」
アミーカのお父さんが、キッチンから威勢のいい声で迎えてくれる。
「今日はアミーカの誕生日だからね! 特別サービスするよ!」
「ありがとうございます!」
私たちは席について、美味しい料理を待つ。
しばらくして、アミーカがお料理を運んできてくれた。
「セレナ! 来てくれたんだ!」
「もちろん! アミーカ、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう!」
アミーカは、とびっきりの笑顔だ。
「ほらほら、アミーカちゃん、せっかくだから誕生日を乾杯で祝わせてくれ。バルドさん、いいだろ?」
パパはアミーカのパパのバルドさんに声を掛ける。
「ああ、すまねぇな。お礼にその一杯は俺からのおごりだ。」
(バルドさん、やっさしー!)
「一杯ってこの一本かな?」
と冗談半分とは言え図々しいことを言うパパの後ろから、アミーカの果実水を持ってきたママがはたく。
「バカ言ってんじゃないの、恥ずかしい。さ、アミーカちゃんもセレナもコップ持って?」
ママからコップを受け取ったアミーカはお礼を言うと、私とアミーカはニコニコ顔で向かい合う。
「オホン、それじゃあアミーカちゃん、11歳の誕生日おめでとう!アミーカちゃんのさらなる成長と、変わらぬセレナとの友情を願って、乾杯!!」
パパの乾杯の音頭に私たちは互いに杯を合わせる。
それが聞こえた周りのお客さんからも
「おめでとー!」
「元気に育てよっ!」
「うちの息子の嫁にきてくれー!」
…うん?
最後になんか不穏な一言があった気がするけど、お祝いの言葉が飛び交った。
その言葉に照れるアミーカ。
そして私は側においていた紙袋を持ち上げる。
「あのね、アミーカ。わたしから、誕生日プレゼントがあるんだ!」
私がそう言って紙袋を渡すと、アミーカは
「え、なに??」
と目を丸くした。
「開けてみて!」
アミーカがおそるおそる袋の中を覗き込み、コックコートと前掛け、そして帽子を取り出す。
「これって…コックさんの服…?」
「うん! アミーカ、お店の手伝いしてるでしょ? 今は運ぶのが中心で、お料理はあんまり作ってないって言ってたけど。」
私は学校の授業を思い出す。
「いつかはパパみたいな料理人になりたいって授業で発表してたじゃない?それじゃあ私は最高に可愛い服でアミーカを応援したくてさ。」
私は気恥ずかしくなって、エヘヘと笑う。
そして照れ隠しに服の説明をし始める。
「バルドさんの気持ちにちなんで『コルコクス』っていうんだ、それ。心の料理人みたいな意味なの」
「それでね、それでね、コック服には火に強い付与がしてあって」
次にスカートを指さし、
「前掛けはお尻まで隠れて、スカートみたいに着れて、水もはじくよ! それから、帽子はね…」
私が帽子のてっぺんのスイッチを押すと、ふわりと涼しい風がアミーカの顔にかかった。
「わっ、風が出た!?」
「キッチンは暑いって言ってたから、涼しくなるようにしてみたんだ。強さも変えられるよ。すごいでしょ!」
アミーカは、プレゼント一式と私の顔を、交互に見比べた。
そしてプレゼントをじっと見つめていると、だんだんと涙目になり、プレゼントをギューっと抱きかかえ、
「……う、…う、うわぁぁぁーーーーーん!!!」
突然、大声で泣き出してしまった!
(ええっ!? なんで!?)
—
「アミーカ!? どうしたの!? どこか気に入らなかった!?」
私が慌てて声をかけると、アミーカは泣きじゃくりながら、私にぎゅーっと抱きついてきた。
「ち、ちがうの…!うれしくて…。こんな、こんなすごいの…!セレナが、私のために…!」
しゃくり上げながら、アミーカは一生懸命言葉を紡ぐ。
(そっか、嬉し泣きだったんだ。よかった…。)
「バカだなぁ、アミーカ、私達親友じゃ…」
あ、あれ?いけない、アミーカの泣くとこ見てたら私まで感極まってきた。
(これは俗に言う「もらい泣き」っ?)
。
。
。
(あー、ダメッ、もう無理!!)
「し、親友じゃ、な、いの、うわぁぁーん!」
私はアミーカのあの寂しいつぶやき、パパとママに協力してもらいながらも一生懸命頑張ったことを思い出し、そしてアミーカの涙を見て、全てが報われた感覚だった。
「よかった、よかったよー、アミーカに喜んでもらえなかったらどうしようか不安だったのー」
「喜ばないわけないじゃない!セレナのバカっ!大好き!!」
実際はお互いヒックヒック泣きながらだからこんなに流暢には言えてないんだけど、まあそこは勘弁して欲しい。
—
「あらあら、セレナもまだまだ子どもねー」
「う、ううっ、良かったなぁ、セレナ、アミーカちゃん。」
(ママはもう少し情を持ってもいいと思う…)
と、思ってよく見たら、しっかりとハンカチで涙を拭ってた。
パパは、泣きながらもエールをぐいっと煽っている。まぁこっちはいつも通りだね。
アミーカのお母さんフローラも私達に近寄って二人まとめて抱きしめてくれた。
「ありがとうね、セレナちゃん。アミーカがこんなに嬉しがるの久々だよ。いつも寂しい思いさせてるから申し訳なくてさぁ…」
と、フローラさんまで泣き始めた。
もうこの一角は誰も彼もが泣いていた。
—
周りのお客さんたちも、なんだ、なんだ?とこちらを見ていたけど、事情を察すると、
「おー、良かったなぁ、アミーカ!」
「誕生日おめでとう!」
「セレナちゃん、優しいじゃないか!」
と、口々に温かい言葉をかけてくれた。
おかげでアミーカはなかなか泣き止まず、中にはそれを見てもらい泣きしてるおばちゃんまで出てきた。
遠くでは「二人の未来にかんぱーいっ!」と乾杯するお客さんも。
いやいや、アンタ達は飲む口実が欲しいだけでしょ!
とは言え、なんだかお店全体がお祝いムードに包まれて、みんながすごく温かい気持ちになれた夜だった。
—
ようやく少し泣き止んだアミーカは、早速プレゼントを着てみることに。
白いコックコートに、黄色いチェックの前掛けエプロン、そしててっぺんから風が出る特製の帽子。
(うん、やっぱり元気なアミーカにすごく似合ってる! とっても可愛らしい、小さなコックさんだ!)
お店のみんなからも
「おおっ、バルドよりも料理人に見えるぜ。今日から『月のしずく』の店主はアミーカちゃんだな」
「かわいいー!!」
「すっかり一人前だな、頑張れよっ!」
と次々と感想と激励の言葉が上がる。
「ありがとう、セレナ! これ、宝物にする! 絶対、この服に負けないような、すごい料理人になってみせるから!」
アミーカは、まだ少し涙声だったけど、キラキラした瞳で、力強くそう宣言した。
その日を境に、私たちシルヴァーノ家と、アミーカのルナリス家は、前よりももっともっと仲良くなった気がする。
パパとバルドさんはお互いを呼び捨てし、すっかり飲み友達になったみたい。
「お酒の量が増えて困るわー。」
と言ってるママの顔は全く困ってなかったけど。
ママとフローラさんは、お互いのお店のこととか、私たちのこととか、色々情報交換してるみたいだ。
そしてアミーカは、あの日宣言した通り、前よりももっと真剣に、料理の勉強やお店の手伝いに励むようになった。
私の作ったプレゼントが、アミーカの夢への道を、少しだけ後押しできたのかもしれない。
そう思うと、苦手な付与も頑張って本当に良かったな、って心から思えた。
大親友の笑顔は、やっぱり最高だ!
次回は学校内のイタズラ話。
いつもアミーカ主導の計画でしたが、初めてセレナが企画します。
変な事仕掛けてるので、ぜひお楽しみ下さい。




