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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第二章 つむじ風が吹いた教室で

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第22話 リオと一緒に素材探し/パパの薬剤指導

今日はアミーカへのプレゼント、コックさんセット作成のためのお買い物からスタートです。

あと、最近リオを忘れがちなので、ちょっとだけ出番作りました。

 次の休みの日、私はママと一緒にヴェルダの街へプレゼントの材料を買いに出かけた。


 リオはお留守番…と言いたいところだけど、「クゥーン」と(さび)しそうな声を出して見つめてきた。

 私がその目に負けて、結局一緒に行くことに。


 —


 ヴェルダの街には、大きな市場があって、色々なものが売られている。


 野菜や果物、お肉にお魚はもちろん、布地屋さんや、道具屋さん、それから錬金術師向けの素材を扱うお店まで、見て歩くだけでも楽しい。


「まずはコックコートね。火に強い方がいいから…」


 ママは慣れた様子で市場の隣りにある、大きな服屋さんに入っていく。

 私もその後をついていく。


 お店の中には、色々な服が並んでいて、すごい迫力だ。

 その奥から1人の女性が出てきた。


「マリエッタさん、いらっしゃい! 今日は何をお探し?」


 お店の恰幅(かっぷく)の良いおばちゃんが、笑顔で迎えてくれた。


「こんにちは。子供用のコックコートに付与したくて。火に強くて、丈夫な白いコックコートはあります?」


「ああ、それならこっちの『サラマンダーコットン』製がいいよ!ちょっとお高いけど、火には滅法(めっぽう)強いし、肌触りも悪くないから、子供用にもぴったりさ。」


 サラマンダーとは火の精霊と呼ばれている魔物の名前だ。砂漠や火山など、暑い環境下にいるとされている。


 しかし、その姿を見たことがある人はほとんどいないらしく、作り話レベルの存在だ。


 ちなみにサラマンダーコットンという名前だが、ただ単に火に強いということで「サラマンダー」の名前を(かん)することになったとか。


 おばちゃんがテキパキと白いコックコートを出してきてくれる。触ってみると、確かにしっかりしてるけど、ゴワゴワしてなくて着やすそうだ。

 これに耐火(たいか)の付与をすれば、完璧だね!


 次は前掛けエプロン。これは可愛い(がら)がいいなー!


「セレナ、どれがいいかしら?」


 ママと一緒に、色々な柄の布を見ていく。花柄、動物柄、チェック柄…

 うーん、迷うなぁ。アミーカは元気いっぱいだから、明るい色がいいかな?


 するとリオが下の棚をクンクンして、「ワンッ!」と吠える。

 そこには黄色いギンガムチェックの布が。


「あ、これ可愛い!」


 この明るい色はアミーカの明るい笑顔によく似合いそうだ。


「ありがとう、リオ。うん、これにしよう!」


 最後に帽子の材料。私の設計では、麦わら帽子みたいな素材がベースだ。


 服屋で帽子も取り扱ってるので、麦わら帽子を見せてもらったが、これのてっぺんにモバイルバッテリーを乗せると、ちょっと沈み込みが大きいかも?


 (もうちょっと固い素材で作りたいんだけど、いいのないかなぁ?)


「麦わら帽子みたいな…編み込んである素材で、形が麦わら帽子よりしっかりしてるものってありますか?」


 私が聞くと、おばちゃんは「ああ、それなら…」と、棚から少し硬めの、でも通気性の良さそうな、薄茶色のシートみたいな素材を出してきてくれた。


 おおっ、服屋さんなのに素材まであるんだ!


 触ってみると、麦わらより硬い。

 粗めの編み込み素材だから、通気性も良さそう。

 帽子の形にも問題なく加工できそうだ。


 私はこの素材と、帽子の(フチ)がそのまま当たって痛くないよう、(フチ)をカバーする厚めの布、最後に帽子全体を(おお)う白い布と、前掛けエプロンに合わせた小さい黄色いリボンを買った。


「よし、これで全部だね!」


「ええ。じゃあ、帰りましょうか」


 必要なものを全部買って、私たちはホクホク顔で家路(いえじ)についた。


 家に帰ると、パパが待ち構えていた。

 …いや、待ってました! と言わんばかりの満面の笑みで。


「おかえりセレナ! さあ、いよいよパパの出番だな! さっそく薬剤(やくざい)の作り方を教えてやろう!」


 うわ、すごい気合だ…。

 さて、頑張ろっかな。


 パパの工房に連れていかれると、そこには色々な薬草や、見たこともない器具がたくさん並んでいた。

 ママの工房とはまた違う、独特の匂いがする。


 いつもなら一緒についてきてくれるリオがついてきてくれない。

 どうやら犬と同じく嗅覚が鋭敏なため、ここの匂いが苦手なようだ。


「クゥン…」


 申し訳なさそうに鳴くリオに


「大丈夫、匂い苦手なんだよね?リオの気持ちは分かってるからちょっと待ってて。頑張ってくる!」


 と告げるとリオは


「ワンッ!」


 といつも通り元気よく返事をしてくれた。


 (リオ、あなたやっぱり私の言葉分かってない?)


 —


 工房に入るとまずは薬剤(やくざい)の基本授業からだ。


「いいかセレナ。付与に使う薬剤(やくざい)ってのはな、ただ薬草を混ぜればいいってもんじゃない。素材の種類、魔力の属性、求める効果…それによって、配合も、魔力を込める手順も、ぜーんぶ違うんだ」


 パパは、まるで大学の先生みたいに、真剣な顔で説明を始めた。

 いつもみたいにふざけた様子はまったくない。これがプロの錬金術師、ルキウス・シルヴァーノとしてのパパの顔なんだ。


「今回は、布に『耐火(たいか)』と『撥水(はっすい)』の効果をつけたいんだったな? よし、まずは基本の『定着液(ていちゃくえき)』から作ってみよう。これがないと、せっかく込めた魔力がすぐに抜けちまうからな」


 パパは棚から数種類の乾燥した薬草を取り出すと、乳鉢(にゅうばち)に入れて、すり(つぶ)し始めた。


「薬草の種類によって、すり(つぶ)す細かさも違う。魔力を込めるタイミングも…ほら、見てろよ?」


 パパはすり潰した粉に、ほんの少しだけ魔力を流し込む。すると、粉の色がわずかに変わった。


「この変化を見逃さないのが大事なんだ。ここからは時間との勝負だぞ!」


 パパは手早く別の液体を加え、素早くかき混ぜていく。まるで料理人みたいだ。


 見てるだけなら簡単そうだけど、実際にやってみると全然違う。

 薬草を均一な細かさにすり(つぶ)すのも難しいし、魔力を込めるタイミングも、


「このくらいかな?」と思ってやってみても、パパみたいに色が綺麗に変わらない。


「あーっ! またこげちゃった!」


「魔力の込め方が強すぎる。もっと優しく、()でるように行わないと駄目だ。」


 思った以上に、薬剤(やくざい)作りは繊細(せんさい)な作業だった。


 魔導回路は回路の太さで魔力量が決められるし、曲線によって抵抗を与えて一時的な抑制が出来たりと、回路さえきちんと書ければ望む結果は出せる。


 だけどこれは完全に私次第。


 本人の「魔力精度」が高い上、混ぜる力やスピードは完全に手で覚えなきゃダメ。


 (こ、これは相当ハードル高いぞ…)


 それでも、パパは根気強く教えてくれた。

 失敗しても怒鳴ったりせず、


「どこが悪かったか分かるか?」


「もう一回やってみろ」


 と、ちゃんと私が自分で考えて気づけるように導いてくれる。


 …あれ? パパ、もしかして教えるの上手い?

 初等学校の先生の誰よりも分かりやすく教えてくれるし、考えさせてくれるからきちんと理解も深まっていく。


 森で薬草のこと教えてくれた時も思ったけど、意外と先生に向いてるのかもしれない。


 何時間か格闘した末、私はようやく「耐火(たいか)」と「撥水(はっすい)」の基礎となる薬剤(やくざい)を、なんとか形にすることができた。


 見た目はパパが作ったものより、ちょっと色が(にご)ってるけど…。


「ふぅ…できたぁ…」


「よし、上出来だセレナ! 初めてにしては、たいしたもんだぞ!」


 パパが私の頭をわしゃわしゃ()でてくれる。その手つきは、いつもの過保護なパパだったけど、今はなんだかすごく頼もしく感じた。


「さあ、薬剤(やくざい)ができたら、いよいよ付与だな。今度はママと交代…だが、そろそろお昼ご飯の時間だからいったん一休みしよう。」


 (おおっ!もうそんな時間か。

 集中してると時間経つの早いな。)


 前世でもけっこう細かい作業を長時間やるのは全然苦じゃなく、気付いたら1日経ってたなんてこともあったなぁ。


 —


 パパが作ってくれた、シラスとコマツナのパスタは絶妙な塩味がきいていてとても美味しかった。

 思わずおかわりしちゃったもんね。


 あ、そういえば何故かこの世界、食材の名前とか前世と共通するものが多い。


 これは昔、地域によってバラバラな呼び名だった食材の名前を1人の旅の料理人が見た目の絵や名前、代表的な料理例をまとめたらしい。


 それを「セントーレ王国食材辞典」として本にして、これを国内に広めたことで統一された名前で呼ばれるようになったそうだ。


 —


 もしかしなくても、私みたいな日本からの転生者だったんだろうな。

 シラスとかコマツナとか言っちゃってるし。


 一回会って話してみたかったけど、もうだいぶ昔に亡くなっちゃってるらしい。

 残念…



 ご飯を食べた私は意気揚々(いきようよう)と付与に向かおうとしたが、どうやら『セレナ』の体が『(みお)』としてのやる気についていけなかったみたい。


 あー、ごめん!そうだよね。成長してきたとは言えまだ11歳の子に数時間連続作業とか無茶させ過ぎた…


 私はご飯を食べて重くなってきたまぶたに逆らうことすら出来ず、あっという間に眠りに落ちた。


 かれこれ2時間くらいは寝ただろうか。

 私は気がつけば食卓から自分の部屋のベッドに移され、布団をかけて寝かせてもらってたようだ。


 あのままじゃなくて良かったー。

 私は飛び起きると走ってママの元へ向かった。


「ママー!付与教えてっ!!」

 ママは笑いながら

「もう大丈夫なの?」と声をかけてきたので、勢いよく

「うんっ!」と返事をしておいた。



 さあ、次はいよいよ付与だ!!

『セントーレ王国食材辞典』の著者はアリーチェ・プラート。日本の食品開発会社勤務の女性でした。この子の話もいずれ機会があれば書きたいなぁとは思います。

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