第2話 魔力判定の光が示した、私のはじまり
開きかけた道を黒く覆い尽くす暗雲。
測定機の光はそれを払う光なのか、それとも......?
光に包まれた中、私は心に浮かび上がる不安に襲われ続ける。
(魔力がなかったら、魔導具が作れなかったら、笑顔を作る夢もなくなる......)
私の不安を無視するように、装置は無情に光り続ける。強くなる光を見ると、逆に私の未来の光が細く弱くなるようで。
すごく、怖い。逃げ出したい。
でも......
笑顔を作りたい!
澪、力を貸して!!
私は目をきつく閉じて、ひたすらに心の中で魔力があることだけを願い続けた。
「ピピッ」
光が収束していく。
終わった。
結果が怖くて目が開けられない。
体がブルブルと震えている。
私の緊張が分かったのだろう。ママが私の肩を後ろから優しくたたいてくれた。
「セレナ、終わったわよ」
私はなけなしの勇気を振り絞って少しずつ目を開いていく。
最初に目に入ったのは、装置の上で光る石。
赤、緑、水色と3つの淡い光がともっている。
その周りにはアルファベットのような光る文字が浮き上がっていた。
私は文字が読めないので、それが何を示しているか全く分からない。そして分からないことがさらに不安を掻き立てる。
ママが私の後ろから装置をのぞき込んだ。
いよいよ来る。
私の将来がこれで決まってしまう。
自然と鼓動が早くなってきた。
「これは......ちょっと予想外ね」
えっ!!
せっかく見つけた道がもう完全に目の前から消え去ってしまったような、それまで立っていた足元に急に終わりのない落とし穴が出来たような、そんな絶望が広がる。
予想外。そんなの悪い意味に決まってる。
あと少しで溜まった涙が流れようとしたその時、
「セレナ、あなたけっこう強めの魔力持ってるわよ。これなら魔導具作るのに十分すぎるほどね」
という言葉。
「えっ......魔力、あるの?」
私の心に巣食っていた冷たい何かは、まるで潮が引くように去っていき、また炎が少しずつ大きく、強くなってきた。
溜まっていた涙が、今度は別の意味で私の頬にひとすじ流れおちる。
「良かった......ほんとに良かったぁ」
「あらあら、そんな泣くほど嬉しかったの?そんなに喜んでもらえると、これから先、ママも教え甲斐があるわね」
ママは私の頭を撫でながら、優しく微笑んでくれたが、私はしばらく泣き止むことが出来なかった。
「一応もう少し詳しく説明しとくわよ。セレナは火と風と氷の属性を持ってて、魔力強度はB、魔力量はAね」
私は意味が分からず首をかしげてると、
「魔法には四つの項目があるの。属性、魔力の強さ、量、そして精度。A、B、Cの段階があって、Aに行くほど力も扱いやすさも増すの」
ふーん、魔法が使えるんだ。
嬉しいけど、私のやりたいことは違う。
魔導具を作ることで、ママが作り出したような『笑顔』を、私の手で作り出したいんだ。
「魔法より、魔導具を作りたい!ママみたいなすごい錬金術師になりたいの!」
私が必死にそう伝えると、
「ええ、もちろん。ママの修業は厳しいわよ?ついてこれるかしらね」
と冗談ぽく返してきたので、
「当たり前じゃん!何があってもついていって、いつかママを追い越すんだからね!!」
私は力強くそう宣言した。
ママ以上のものすごい錬金術師になって、いろんな魔導具を作ってみたい。
きっとそれが澪とセレナが一つの体にいる、『私』の役割のような気がしてならなかった。
「あらあら、それじゃママも負けないようにしないとね」
ママの返しに、二人で笑い合う。
と、ママが不思議そうな顔で聞いてくる。
「ねぇ、セレナ。なんで魔導具を作りたいの?」
「なんで?」を全部説明すると澪のことも入ってきちゃうので、私は昔のランタンの話だけをママに話した。
「あら、よくそんな昔のこと覚えてたわね。それがセレナの魔道具を作りたい理由だっていうなら、ママは大賛成よ」
「ほんとっ!ありがとう!!」
私の気持ちに賛成してもらえた。
たったそれだけのことが、私の全てを認めてもらえたような気がして、胸が温かくなった。
「私の師匠は『使う人のことを考えないで作る魔導具はただの置物』ってよく言ってたの」
ママは懐かしそうな顔をして、私の頭を撫でてくれた。
「それってね、人の役に立ちたい、その気持を魔導具に込めなさいってことだと思うのよ」
「人の役に立ちたい...」
笑顔を作るなら役に立て。
役に立てというのが、具体的には何をしたらいいのか、まだしっかりと飲み込めてはいないけど、とても大切なことに思える。
きちんと理解できる日まで忘れずにいよう......
私は心にそう誓った。
すると、ママが私の手を取った。指先がほんのり温かい。
「じゃあ、いよいよ魔導具職人の第一歩、踏み出してみようか?」
体中に鳥肌が走る。
いよいよ魔導具に触れられるんだ!
興奮していた私にママが突然冷水をかけてくる。
「セレナ、魔導具を作れるって喜んでるようだけど、魔法を使って道具を作り出すということは怖いことでもあるのよ。まずはそこから始めましょうか」
そう言うとママは測定装置の石に指を触れる。「バチッ!」と火花が弾け、次の瞬間焼け焦げた臭いとともにパリンッと石に亀裂が入っていた。
思わずヒュッと喉がなる。
「こんな風に魔力は物を壊すことも出来る。そうならないよう、まずはきっちり学びましょう」
いつも通りの調子で続けるママに、思わず背筋が伸びた。
私が負けまいと拳を握ると、ママの口元が一瞬緩んだようにも見えた。
魔導具が作れると喜んだのも束の間、次は魔力や魔導具の怖い面について学びます。
次回、セレナが生まれて初めて魔力を使った実践に挑戦します!
楽しんでもらえたら、★評価やブクマしてもらえると嬉しいです♪




