第13話 セレナ10歳 小さな錬金術師、初めての学校
ようやく魔導具作りにひとつの答えが出せたセレナ。そのおかげで殻が破れたようです。
あの世紀の成功(言い過ぎ?)からあっという間に月日は流れた。
私ももうすぐ10歳になる。
あの成功が功を奏したのか、私の魔導具製作の腕前もどんどん上達し、どうしてもできなかった光量調節機能付きのランタンも作れるようになった。
もちろんまだ焼き付けに課題は残すところもあり、ランタンを10個作るうち、3個は不良品を出してしまう。
それでも、ちゃんと「使える」ものが作れるようになったのは、大きな進歩だ。
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リオもすっかり大きくなった。
最初に会った時は私の膝くらいの高さしかなかったのに、今ではパパの膝くらい…前世で見た柴犬くらいの大きさ?になった。
銀色の毛並みはツヤツヤで、風魔法の力もだいぶコントロールできるようになったみたい。
庭で駆け回る時の本気のスピードは、もう目で追うのが大変なくらいだ。
だけど相変わらず私にはべったりの甘えん坊なところは変わらない。
(ホント、かわいいなぁ。)
あ、あとたまに、ごくたまにだけど、私の話が分かってるようなことがある。
「おなかすいたなー」って私が呟いた時、パパのお気に入りのお酒のおつまみの干し肉をくわえて持ってきてくれたことがあった。
(うん、すごく嬉しいけど、くわえたの食べるのはちょっと…ね。)
他にも何度か似たようなことがあったんだけど、もし私の話が分かるなら、もう一歩進んで話せるようになってたら、もっと楽しかったのにな。
せっかくの転生ファンタジー、そんな不思議があってもいいと思わない?
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そんなある日、ママが私をリビングに呼んだ。
「セレナ、あなたももうすぐ10歳ね。そろそろ『初等学校』に通い始める準備をしましょうか」
しょとうがっこう? なにそれ?
「初等学校っていうのはね、街にある学校で、セレナと同じくらいの歳の子たちが集まって、色々なことを学ぶ場所よ。」
そう言ってママは学校の案内を見せてくれた。
「文字の読み書きとか、簡単な計算とか、あとは国の歴史とか、みんなで一緒に何かをしたりね」
私は渡されたそれにパパッと目を通す。
あぁ、小学校みたいなものか。
前世でももちろん行ってたけど。
「でもママ、わたし、文字とか計算なら、もうかん単なのは出来るよ?」
そう、魔導具作りにも必要なので、私はこの数年、ママに教えてもらって、この世界の文字や数字もだいぶ読めるようになっていた。
何せ理解力は22歳の私だ。
コツさえ掴めば文字なんてすぐ覚えられる。
そして文字・数字さえわかれば、元理数系の私に計算なんて楽勝!
むしろやり過ぎないよう注意してるくらいだ。
そんな時間を割くくらいなら、魔導具作りに励んでたい。
「ふふ、もちろんセレナは物覚えが良いから、お勉強の面では心配してないわ。でもね、学校は勉強だけじゃないのよ。」
そういうとママは学校案内の後ろのページにある学校行事のページを見せる。
そこには入学すぐの春の交流パーティー、夏の臨海合宿、秋の料理コンテスト、冬の温泉旅行など、季節ごとのイベントが揃い踏みだ。
その間にもマラソン大会や学芸会など、細かいイベントもあって、それだけ見たらとても楽しそうだ。
「セレナと同じ歳のお友達もたくさんできるだろうし、きっと楽しいこともいっぱいあるわ。ね、行ってみない?」
友達…か。
リオは最高の相棒だけど、人間のお友達は、まだそんなにいない。
近所の子達と遊んではいたけど、年上や年下ばかりで、同じ年の子は別のグループだった。
前世では、いつも同年代の友達に囲まれてワイワイ騒いでたから、ちょっと寂しい気持ちも確かにある。
それに、この世界の学校がどういうものか見てみたい気もする。
前世の記憶がある私が、他の子たちとあまりに違う行動をとるのも、ちょっとおかしいかもしれないし…。
「…うん、分かった! わたし、学校行く!」
私がそう言うと、ママは嬉しそうに微笑んで、
「えらいわ、セレナ」
と頭を撫でてくれた。
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そして、季節は巡り、私の10歳の誕生日が過ぎて、初等学校の入学式の日がやってきた。
ママに新しい服を着せてもらって、少しだけ緊張しながら、街の中心にある少し大きな建物―初等学校の講堂へと向かう。
講堂の中には、私と同じくらいの歳の子たちがたくさん集まっていた。
とはいえ50人くらいかな。
みんな、ちょっとソワソワした顔をしている。
10歳って、前世でいうと小学4年生くらい?
そのせいか、思ったよりもうるさくなくて、みんなちゃんと椅子に座って静かに待っている。
(そういえば、この世界には幼稚園みたいなものってないのかな?)
( 小さい頃から預ける場所がないから、みんながある程度言うことを聞けるようになる10歳頃から、学校が始まるのかもしれないな…)
なんて、私は一人で勝手に推測していた。
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指定された席に座ると、隣には、栗色の髪を二つに結んだ、元気そうな女の子が座っていた。
目が合うと、ニコッと人懐っこそうな笑顔を向けてくれる。
式が始まるまでの少しの間、どうしようかな、と私が考えていると、隣の子がこそこそっと話しかけてきた。
「ねぇ、わたしアミーカっていうの。よろしくね?」
わ、向こうから話しかけてくれた!
「わたしはセレナ! こっちこそよろしく!」
私も小さな声で、でも元気いっぱいに返事をした。
式自体は校長先生の、ちょっと長くて眠たいお祝いの言葉だけで、思ったよりもすぐに終わった。
これから、どんな学校生活が始まるんだろう?
私は隣のアミーカの顔をちらっと見て、初等学校での生活に少しだけワクワクしていた。
いよいよ初等学校時代スタートです。
とはいえ学校内では魔導具作れないので舞台としては半々くらいにしたいなぁと。




