第12話 錬金術師の道を照らす、小さなはじめての灯り
パパの昔話で切り替えられたセレナ。あれから少しは腕も上がってきたみたいですよ?
地道な焼き付け練習を始めてもう一年以上が経った。
私ももうすぐ8歳だ。
ママの言う通り、簡単な直線や円をひたすら繰り返したおかげで、平らな木の板にならある程度のパターンの線をそれなりにキレイに引けるようになってきた。
一度キレイに片付けてゼロにした失敗作の山も、前よりは積み上がるペースは遅くなってる…気がする。
でも、やっぱりちょっと物足りない。
いつまでも基礎練習ばかりじゃなくて、そろそろ何かちゃんとした「魔導具」と呼べるものを作ってみたい。
そう思った時、私の頭に浮かんだのは、やっぱりあの灯り―私が魔導具に興味を持つきっかけになった、ママが作っていたランタンだった。
「よし、ランタンを作ろう!」
どうせ作るなら、目標は高く!
ただ光るだけじゃなくて、ママが作ってたみたいに、明るさも調節できるカッコいいやつ。
無謀かもしれないけど、やってみなきゃ分からないもんね!
とはいえ、ママの設計図はまだ私には読めない。
だから、見よう見まねで覚えた魔導回路の基本と、前世の記憶を参考に、自分なりに「光量調節機能」も組み込んだ魔導回路を紙に描いてみた。
(うん、たぶんこれでいけるはず!)
問題は、やっぱり焼き付けだ。ランタンの部品には、どうしても少し曲がった部分が出てくるし、そこに曲線を乗せるとなると今の私には至難の業だ。
「ふぅぅぅ……しゅう中、しゅう中…」
私は息を止めて、慎重に魔力を流し込む。ゆっくり、ゆっくり…。
何回か失敗して、指先がジンジンしてきた頃、なんとか全ての部品に回路を焼き付けることができた。
( 完璧じゃないけど、これならギリギリ動く…はず!)
ドキドキしながら部品を組み立てて、小さな魔石をセットする。さあ、運命の瞬間だ。
スイッチになる部分に、そっと指で触れる。
(お願い、光って!)
―――パッ
「わっ!」
眩しいくらいの、温かいオレンジ色の光が、ランタンの中からぱっと灯った。
「やった、光った、光ったー!」
私が、一人で、初めて、魔導具を完成させた!!
嬉しくて飛び上がりそうになるのをぐっとこらえて、私はもう一つの目標、光量調節ダイヤルを回してみる。
もっと明るくなったり、少し暗くなったりするはず!
クルクルクル………あれ、変わらない。
何度ダイヤルを回してみても、ランタンの光は、最初に点いた時と同じ明るさのままだ。
「あぁ、やっぱりダメだったかぁ……」
がっくりと肩を落とす。
ママみたいなカッコいいランタンには、全然届かなかった。
やっぱり、まだまだ練習が足りないんだ。
だけど!だけど、ちゃんと光ってる!
私が描いた回路図で、私が焼き付けた部品で、ちゃんと魔石のエネルギーを光に変えてる。
これは、すごいことじゃない?
「…まあ、いっか。光ったもんね!」
不満な気持ちはどこかへ飛んでいって、じわじわと達成感が胸の中に広がっていく。
私は完成したランタンを高々と掲げた。
「やったー、できたー!」
足元で見ていたリオも、私の喜びが伝わったのか、
「キャン、キャン!」
と嬉しそうに吠えて、私の周りをくるくる回ってくれた。
—
「パパー! ママー! 見てー!」
私はランタンを持ったまま、リビングへと駆け出した。
「おおっ、どうしたセレナ! ……ん? そのランタンは…!」
「まあ、セレナ! もしかして、自分で作ったの!?」
二人とも、目を丸くして私の手元のランタンを見ている。
「うん! 光るんだよ!」
私が得意げにスイッチを入れると、ランタンは先程同様、ちょっと眩しいくらいのオレンジの光を放つ。
パパは
「うおおお! セレナ、天才! しかも光量調節まで!」
と、なぜかできていない機能まで褒めながら、感極まって私を抱き上げた。
またジョリジョリと頬ずりしてきてヒゲが痛いけど、今は許す!
ママは、ランタンをじっくり見て、
「すごいわ、セレナ。こんなに早くちゃんと光るものを作るなんて。…あら? 調節は…まあ、これから練習すれば大丈夫よ!」
と、すぐに調節機能がダメなことには気づいたみたいだけど、それでも心からの笑顔で褒めてくれた。
ママのレベルには全然届かなかった、不完全なランタン。
でも、これが、私が初めて自分の力だけで完成させた魔導具。
才能ないとか、やめようとか思ったこともあったけど、諦めないで練習してきて本当によかった。
長く辛い練習が報われた。
そう思っていると自然と涙が溢れてきた。
あ、そうだ。ひたってる場合じゃない。
これは横に付き添ってくれてたリオのおかげでもあるんだから褒めてあげないと!
パパに降ろしてもらうと、私はリオの隣へ行き、
「リオもありがとう。いつもいっしょにいてくれたから、出来たんだよ」
と頭をナデナデすると、リオは
「クゥーン」
と甘えた声を出す。
—
もう二度と才能ないとか、やめようとか言ったりしない。
ちゃんと努力を積み重ねれば形に出来ることが分かったんだ。
まだまだ難しいことはたくさんあるけど、
「わたし、もっともっとたくさんの魔導具を作れるようになりたい!」
私の言葉にパパもママも一瞬ビックリした顔をしたが、すぐに笑ってくれた。
「そうだな、セレナなら何だって作れる錬金術師になれるさ!」
「そうよ。7歳でこんなの作れるなんて聞いたことないわ。セレナならきっと…」
二人の笑顔に私も一緒になって笑んでくれた。
さあ、腕を磨いて今回ダメだった調節機能も付けたいし、もしかしたら声に反応させて明度を調節させるやつとかも出来るかもしれない。
目指すは前世の現代文明、いいや、もっと先へ!夢は大きくチャレンジしなきゃ!
この小さな灯り、なんてことない小さな灯りだけど、私の錬金術師としての道は今まさにここから始まったんだ!!
長い苦労がようやく一つ実を結んでくれました。ここしばらくのセレナの「むぅぅぅ……」は書いてる方も辛くて、ようやくホッとしています。
次回からはちょっとした新展開が始まります。




