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【旧作】じゃじゃ馬セレナの不器用真っ直ぐ錬金術〜未来の誰かのための魔導具作り〜  作者: 八坂 葵
第一章 錬金術師セレナのはじまり

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第11話 パパの過去とママとの出会い 甘くて苦い話

かんしゃくを起こしかけたセレナにひと休みを提案したパパ。そのおやつに選んだチーズはものすごく美味しくて...

「はっはっは、美味いだろう!あまりに高いから年に一度くらいしか手に入らない貴重品だぞ!」


 私の喜びように、パパはますます上機嫌だ。

 もちろんリオにも少し冷ましたのを一切れ上げる。


 リオは食べるなり「アォーン!」と狼みたいに叫び(いや、狼の鳴き声知らないからイメージだけと)、パクパクと食べていた。


 パパはお皿に残っていた最後の一切れまでぺろりと平らげた私を見て、満足そうに頷いている。


 そして、いつの間にか手元に置いてあった木製(もくせい)のジョッキをくいっと煽った。


 パパ、昼間からお酒?

 悪い人がここにいますー!

 警察の人、取り締まってくださーい。


「パパ、おしごとは?」


「ん? ああ、今日はもう終わりだ! ママもいないし、たまにはこうやって娘とゆっくり過ごすのも大事だからな!」


 えー、本当に大丈夫なのかな?

 でも、パパがそう言うなら、美味しいチーズに(めん)じて許しちゃう!


 パパも美味しいチーズとお酒で気分が良くなったのか、珍しく昔の話を始めた。


 —


「セレナはパパがずっとこのヴェルダの街にいると思ってるだろう?」


「うん」


「実はな、パパも若い頃は王都にいたんだ。冒険者ギルドっていう、強い冒険者さんたちが集まる大きな組織があってな、そこの専属工房でポーションを作ってたんだ。」


 そう言うとパパは遠い目になって、窓の外を見た。


 へぇー、王都。パパが?なんだか意外だ。


「王都の工房はそりゃあ立派でな。色々な薬草や珍しい素材も手に入ったし、腕の良い錬金術師仲間もたくさんいた。それはそれで、楽しかったんだが…」


 パパは少しだけ、目をふせた。


「…窮屈(きゅうくつ)でもあったんだ。工房の中にはいくつか派閥(はばつ)、まあ友達グループみたいなやつだな、があってな、

『俺たちの作り方が一番だ!』

 とか、

『あいつらの薬は効果が薄い!』

 とか、面倒くさい言い争いが絶えなくてな。」


 そう話しながらジョッキを揺らして、中のお酒をまわす。


「新しいポーションの作り方を思いついても、今度は『そんなやり方は認めん!』って頭の固い年寄りに反対されたりもあってな。」


 (あー…なんか、分かる気がする。)


 私のゼミだって決して一枚岩ではなかったし、先輩の会社とか大学の研究室とか、そういう話ってどこにでも聞いたなぁ。


 どこの世界も人間が集まるところは似たようなものなのかな。


「パパはな、もっと自由に、色々な薬草を試して、誰も作ったことのないような新しい薬やポーションを作ってみたかったんだ。」


 突然パパの目がキラキラと輝き出す。


「誰かに褒めてもらいたいわけじゃなく、人の役に立つ、最高のモノだけを作りたかったんだ。でも、王都の工房じゃ、それが難しかった。」


 そう言って、ジョッキに残っていたお酒を飲み干すと、少しだけ真剣な顔で続けた。


「だから全部捨てて、このヴェルダの街に来たんだ。ここは王都みたいに珍しい素材は少ないけど、その分自分のやりたいように研究できるからな。おかげで貧乏暮らしになった時期もあったが、後悔はしてないさ。」


 全部捨てて…。

 パパにも、そんなカッコいい決断をした時期があったんだ。


 いつもヘラヘラしてるイメージだったけど、自分の「やりたいこと」のためには、結構大胆(だいたん)なことするんだなぁ。


「それでな、ヴェルダに来てしばらくした頃かな。工房で薬草を調合していたら、一人の綺麗(きれい)な女の人が訪ねてきてな」


 (ん? もしかして…。)


「『あなたがルキウスさんですか? あなたの作る薬、とても素晴らしかったです! 私、あなたの薬に惚れ込んでしまいました、是非私と一緒になってください!』…なんて、いきなり熱烈なことを言うんだ」


 パパはちょっと照れたように、頭を掻いている。


「それが、今のママ、マリエッタだったんだよ」


 やっぱり!


「えーっ!? ママがそんなこといったの? じぶんから?」


「ああ、そうなんだよ! パパもびっくりしたさ。最初は『結婚はいきなり過ぎる』って断ってたんだが、ママの勢いがすごくてな…。」


 パパは苦笑いを浮かべる。


「毎日工房に通ってきては、薬の話やら、自分の魔導具の話やら、ボランティアの話やらを熱心にしてくれてな。パパも、そのぅ、一生懸命なところに惹かれて…まあ、気がついたら結婚してた、ってわけだ!」


「まいったなぁ」という顔をしながらも、パパはすごく嬉しそうに笑っている。


 へぇぇ…ママ、すごい! あのどっちかっていうと落ち着いてて、まず相手のことを考える優しいママが、そんな自己都合の猛アタックを…。なんだか、すごいギャップだ。


 それからもいくつか昔のエピソードを聞かせてもらった。


 ママと一緒になるためにママの工房も必要になり、新しく今の家を買い直したこと、


 ママの親に結婚の(ゆる)しをもらいに行こうとしたら、実は元子爵家息女(ししゃくけそくじょ)で、属性なしの魔力持ち(貴族社会では一般的に「役立たず」の意味らしい。何だとっ!?)のため、家を出て庶民になったから挨拶(あいさつ)不要とママに願われたこと、


 私を森で拾った後、初めての子育てで何をしたらいいか分からなくて周りにとても助けられたこと…


 あ!そういえばちゃんと言ってなかったっけ?

 私、森に捨てられてた捨て子なんだよ。


 転生して、転生前の記憶もないまま何も動けず森に放り出されるとか、ひどいよね!

 友達に聞いてた転生モノと全然話違うんだけど!!


 ちなみにこの街、パパが気に入っただけあって人がとてもいい。


 みんな私のこと拾われっ子だって知っていて、そのことに当たり前に触れてきて、その上で本当の娘として扱ってくれる。


 生まれたては不幸だったけど、育った先はとても幸運だったのは、今の私にとってすごくありがたいことだった。


 —


 はぁー、しっかし「人に歴史あり」とは言うけど、まさかパパがこんなに色々苦労してるとは思わなかったな。


 パパの昔の話すごく面白かった。

 いつも私の前では「パパだぞー!」「セレナ可愛いぞー!」って感じなのに、ちゃんとお仕事のこととか、自分のやりたいこととか、真剣に考えてたんだなぁ。


 そう考えると前に森で見せてくれたナイフとかも、もしかしたらパパの工夫なのかも?

 それにママとの()()めも、想像してたのと全然違った。


 なんだか、今まで知らなかったパパの顔をたくさん見れた気がして、ちょっとだけパパとの距離が縮まったような気がした。


 —


「あらあら、随分(ずいぶん)と楽しそうね。何を話してたの?」


 ちょうどその時ママが孤児院(こじいん)のお手伝いから帰ってきた。

 リビングで盛り上がっている私たちを見て、ママはにっこり笑う。しかし、


「あなた、また昼間から飲んで…」


 ママはすぐさま呆れ顔になる

 その顔にパパは


「い、いや、これはだな…」


 としどろもどろになっている。

 あはは、やっぱりママには敵わないんだ。


「ママ、あのね、パパのむかしのはなしきいてたの! ママがパパにほれこんでけっこんしたんだって!」


 私が興奮気味に報告すると、ママは


「もう、あなたったら余計なことを…」


 と(ほほ)を少し赤らめた。やっぱり本当なんだ!

 うわー、うわー、すっごいドラマティック!

 ぜひ月9で放映して欲しい。私見れないけど…


「でも、パパのはなし、ぜーんぶおもしろかった!」


 私がそう言うと、ママも嬉しそうに頷いてくれた。


「そう。たまには、パパの話を聞いてあげるのもいいかもしれないわね」


 美味しいチーズと、パパの意外な一面。

 今日の気分転換は大成功だ。


 よし、明日からまた、焼き付け練習、頑張ろう!

 私は心の中で、ぎゅっと拳を握った。


このチーズ、王城の料理にも使われるくらいの高級品で、パパにチーズを送ってくれてる友人はお歳暮的な感じで送ってくれてます。この人は後日登場しますのでお楽しみにっ!

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