喘ぎながら息継ぎを
唐突に虚しくなるときがある。何のためにこんなことしてるんだろうって。
偽ることに、何の意味があるんだろうって。
彼女や先生の吐いた嘘を本物にするため?
だとしたら、その嘘にはどれほどの価値があるのだろう。
そもそもこんなことを考えること自体、無意味なのだろうか。
けれど、見つけたいのだ。
彼らの言葉に、揺るぎない価値を。
作り物の会話に、確かな意味を。
虚構に溢れた世界を、諦めて生きる理由を。
そういうものがあるのだと、信じていたい。
そこには私を納得させる"何か"があるのだと、思っていたい。
そんなあやふやな存在に縋っていないと、自分の価値観が崩れてしまう。
今まで当たり前に信じてきたものが、消え去ってしまう。
息苦しさからの解放は、けれど、いつまで経っても叶わない。
きっとそれが、どうしようもなく現実なのだ。
そして、それはきっと、何も特別なことではない。
みんなが受容して適応していることに、私が溶け込めないだけなのだ。
上手に進化していく個体と、滅んでいく個体。
何もなかったかのように笑い合う2人の隣で、私だけが喘ぎながら息継ぎをしている。
「だから、死にたいっていうのとは、少し違う。なんだろ、消えたい…? あぁ、そう、"消えたい"んだ」
消えたい。
他に、言葉が見つからない。
絶望、期待、諦め、痛み、切望ーー。
全てが綯い交ぜになった、ぐちゃぐちゃに歪んで原型を留めないこの感情を、言葉にできないのが、苦しい。
言葉にできないから、無理矢理吐き出した言葉に縋る。
私は"消えたい"のだと。
「融通の効かない子どもみたいでしょう?」
イタい。
いずれ出会う不条理を、そういうものかと受容して大人になっていくことができない。
そう、思われているのだろうか。
かわいそうな存在を私の中に見ているのだろうか。
変わっていくことを恐れて声高に大人の世界を非難する子どもを。
世界の約束に絶望して希死念慮じみた願望を抱く、思春期特有のイタさを。
でも。
ほんとうは、そんな簡単な感情じゃない。
自分の意思ではどうにもできない何かが、ある。
唐突に痺れる脳が、痛いくらいに脈打つ心臓が、無意識に呼吸を忘れる肺がーー顔を背けても、目を瞑っても、その事実を突きつけてくる。
誰か、私の身体を切り開いてこの感情を探して。
そして、名前をつけて。
体を蝕んでいく毒が私の中に確かにあることを、証明して。