無条件
さて、三連休をフルに使って遅れるかもしれない分の埋め合わせです。
しかし本当にアホな作者です。サブキャラの鷹島くんの外見について一切触れていないという。救い様が無いですね…。
そんなアホな作者の文章なんて駄文にしかなりませんが、そんな駄文でも楽しんで頂けたら幸いです。
土曜日朝5時半。いつもより1時間早い起床。
今日は妹より早く起きれたかなと思って横を見てみれば、
「朝…です…よ…?」
すでにいた。
「待ってくれ静香。お前いつからそこに?」
「今…来た…とこ…。」
朝食を作ったりするからまぁこれぐらいの時間に起きていることは予想できる。しかしこの時間から起きてずっと僕を起こしているのだろうか。聞いてみるか。「なぁ、もしかしていつもこの時間から僕を起こしに来てるの?」
コクりと頷く妹。
「待て、それならいつ朝食を作ってるの?」
「4時半に…起きて…5時…から…。」
罪悪感……。なんか僕って本当にだめな兄だよな…。「静香…何もそんなにしてくれなくてもいいんだよ?お前はただでさえ頑張りすぎてんのに更に睡眠時間を削ってみろ。ホントに倒れるよ?」
「私は…大丈夫…麗梨君こそ…無理…しないで…。」その時…。妹は意識せずに言ったのであろうが、僕にはあまりにも残酷な言葉だった。無理をしないと人として生活できない化物同然の僕にとっては。
「……少し早いからもう少し横になってから行くよ。静香もゆっくり休んでな。」
なんとか感情を押し殺して妹に伝える。妹はコクりと頷いて下に降りていった。頭に手をおいて少し気持ちを落ち着かせる。落ち着かせるためにまた無理をする。その繰り返しだから、いつかはぼろがでるだろう。だからせめてその時までこの甘くて楽しくてやさしい幻想の中にいさせてほしいと僕は願った。
下に降りると焼きたてのパンの香ばしい香がした。ハムエッグとサラダ、紅茶がパンののせられた皿の横にあった。妹はさっきまでしていた洗い物を済ませると席についた。
「まったく、素直に休めばいいのに。…なんて、何にもしてない僕に言われたくはないだろうけどさ…。」僕は呆れてそう言うと、
「平気…楽しい…麗梨君の…お世話…するの…。」
と、小さな笑みを浮かべる妹。ホントに僕にはもったいない出来た妹だよ…。これは明日のお出かけはとびきり楽しいものにしないといけないな。
朝食を食べおわり、いつものように学校の準備を済ませいつものように妹と共に登校。いつものように妹との他愛無い雑談に花を咲かせていると、またドドドドド〜〜〜〜〜!という音が聞こえてきて僕のすぐ横で止まった。
「ごきげんよう麗梨君♪」さて、いつものように現れた石崎さん。少しテンションが高めだ。
「おはようございます石崎さん。楽しそうですね、何かいいことでも?」
僕が言った途端に石崎さんから邪悪なオーラを感じ取る。
「麗梨君?まさかあの約束を忘れたのですか?」学生カバンを振り上げる石崎さん。
「い、いやいやいや忘れるわけ無いでしょう大切な石崎さんとの大切な約束なんですから!もう午前の授業の終了と同時に中庭へ直行ですよ!」
危ないちょっと忘れてた……。もし思い出せてなかったら今日が僕の命日だったかもしれない。
「麗梨君…今日…お昼…中庭で…食べ…るの…?」
妹が急に聞いてくる。
「うん、そのつもりだけど。」
「サンドウィッチ…とかの…ほうが…よかった…かな…?」
不安そうに聞いてくる妹。ホントにこの子は気を遣いすぎというか、自分のする事に自信が無さすぎるというか…。
「そんなに気にしなくていいんだよ静香?僕は可愛い妹がお弁当を作ってくれるというだけで嬉しいんだからさ。」
人のことを滅多に可愛いとか美人とか思わない僕にもわかる。妹は間違いなく最高に可愛いと。
「……………。」
黙りこくってしまった…。あれ?僕またやらかしました?
「レ・イ・リ・く〜ん?」ここにも一人ご機嫌麗しくない方が……。
「あなたは〜自分の妹を口説くなんて〜私に葬られたいのかしら〜?」
「いやなんかもうホントごめんなさいすいません悪かったです言い訳しないので命だけは〜〜〜!」
もう謝る謝る。謝罪の言葉でしりとりが出来るくらい謝り尽くしていると、もう学校についていた。
「静香〜また後でね〜!」「うん…麗梨君…またね…。」
妹と分かれ、今日の時間割を見る。午前の授業は全て難しそうでもなかったので寝て過ごすことにした。
そしてお昼休み。さて、石崎さんと一緒に中庭へ行くかと席を立ったところ鷹島がやってきた。
「ようよう麗梨さっきの世界史で世界の食物が足りないみたいな事言ってたけどそれってホントなのか?そしてマイケルとプリンスだったら俺は確実にシンディローパーなんだがどうよ一緒にメシ食わねぇ?」
相変わらず何の脈絡もない男である。そしてやはりこいつに話相手は必要ない。「あ〜、ごめんね今日は先客がいるんだ。」
そう言うと鷹島はかなり落ち込んだ様子で
「何だよ最近付き合い悪すぎだろ…。誰と食うんだよ?」
「石崎さんとだけど…。」そう言った途端鷹島は何かに勘付いたように目を見開いて、すぐに目を瞑り、僕の肩に手を置いてきた。
「麗梨よ…。鈍感でアホなお前は媛姫の想いに気付いてないと思うから、一つだけアドバイスしてやる。あいつの事は下の名前で呼び捨てにしろ。それだけであいつは今日最高の笑顔を見せるだろう。じゃあ遅れないようにいけよ!」
そう言って鷹島は走って去っていった。相変わらず変な奴だ。そう思って教室を後にした。
さて場所は変わって中庭。石崎さんとお互いの弁当をつつきあう。僕の弁当(妹が作ったんだけど)は和食中心。石崎さんの弁当は五目チャーハンや青椒肉絲等の中華料理だった。実は石崎さんはかなりの料理上手で和食も洋食もイタ飯もとにかく何でもいける万能型だ。また、石崎さんとの会話はとても楽しい。僕もそれなりに楽しい会話になるように心がけてるけど、石崎さんには勝てる気がしない。まぁそうして10分くらい過ごしていた。
「そういえば、麗梨君は誰か好きな人っていますか?」
急なふりだな…話上手な石崎さんらしくない。
「どうしたの?石崎さん急に。」
そう返すと少し悲しそうな顔をした後、
「小学生からの幼馴染みな人の麗梨君と、そんな話しはしたことが無いなと思いまして。」
そういえばそうかもしれない。鷹島とは何度かあるけど石崎さんとはそういう話をした覚えが無いな。
「うーん、好きな人ねぇ。いないかなぁ。ただ、大切にしたい人ならたくさんいるよ。静香、鷹島、石崎さん…」
「待って!!!」
急に叫びだす石崎さん。あれ?今なんかまずいこと言ったかな?
「どうしたの石崎さ」
「さん付けはもう止めて頂けませんか?私はもう麗梨君とは名前にさん付けするような遠い仲だとは思っていないのですよ?私はあなたともっと深い仲になりたいから…お願いします、みんなと同じように呼び捨てで呼んでくださいね。」
顔を真っ赤にして下を向きながらお願いされた。親友の真剣な頼みだ、それを聞かない僕ではない。
「そっか…分かったよ。改めてこれからもよろしくね、媛姫!」
その時、媛姫の顔はりんごに負けないくらい赤くなって、目には涙を溜めて、下を向いていた。
「体調でも悪いの、媛姫?」
「は…はひ!ら、らいひょうふへすわ。」
明らかにダメそうだった。「よいしょっと!」
僕は媛姫をお姫様抱っこで持ち上げる。
「な、何を!?」
「いや、取り敢えず保健室へ連れていこうかと思ってね。」そう言って保健室へ向かって歩きだす。
それから媛姫と喋ることは無かった。随分重症らしい。
媛姫を保健室へ送って教室への帰り道。
「待ちなさい!」
急に後ろから声をかけられた。振り向いて見ると昨日の突撃少女がいた。
「えーと、どうしたんですか?」
突然の出会いに戸惑いながら突撃少女に尋ねた。
「何って、昨日の件に決まってるでしょうが!」
え〜と、それに関しては全面的に突撃少女の責任だって結論になった気がするけど…。
「あれは一応解決したと思うんだけど…。」
「んな訳ないでしょ!あの御方がいなければ今頃あなたは昨日の件で罪が暴かれて終身刑よ!」どんな判決をしたら突撃されそうになった人が終身刑になるんだろう。
「で、結局君は何しに来たんですか?」
「私は君なんて名前じゃないわ!天津藍満って名前があるんだから!」
頼んでもいないのに名乗られても……。
「え〜と、ですから結局君は何しに来た「天津藍満!」
セリフに割り込まれた…。「…天津さんは結局何しに来たんですか?」
聞くと天津さんは待ってましたと言わんばかりにフッフッフッと笑った。
「あなたには謝ってもらうわよ!昨日私がしてみせたみたいに土下座でね!」
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン無情にも鳴り響くチャイム「あ、僕もう授業なので行きますね。」
言うと同時に走りだす。
「あ、待って!くそー、告君麗梨〜!あなたは陸上部期待のルーキー(一年)天津藍満の前に必ず跪かせてやるんだから!」
何か聞こえるけど聞こえないふり、聞こえないふり。
さて、午後の授業も終わって、今日は媛姫と一緒に帰る予定だったんだけど、媛姫は倒れて早退したため、することが無い。だから、図書室へ行くことにした。4階にある図書室まで1階の一年教室から行くのは面倒だけど、どーせ暇だしね。
そして図書室へ入ると、
「あら、遅かったのね。」と声をかけられた。声がした方を見ると、案の定、月見夜宵がいた。
「約束もしてないのに勝手に待たれて挙げ句約束破りみたいな扱いは止めてください。」
「確かに約束はしてないわ。でもここに来るとは思ったの。それだけよ。」
そうですか、と言って月見さんが勧めてきた席…月見さんの向かい側に座る。
「ところで、昼休み。なかなか面白い事してたじゃない。」
「見てたんですか…。」
「それはもうばっちりと。」
おそらく屋上から中庭の様子を見てたのだろう。
「しかしあなたは本当に面白いわね。あなたを見ていることは、私の姿の一つの可能性を見ているようなものだから。」
月見さんは本当に楽しそうに微笑んだ。
確かにそうだ。僕と月見さんは本質では同じでも、選んだ道は違う。選んだ意義が同じなだけだ。今の月見さんの姿は僕のもう一つの可能性。
「僕は周りを騙して、自分を騙して今の生活を手に入れてます。けれどあなたは違う。」
月見さんはゆったりと微笑み、
「私は自分に正直に、周りを騙して、自ら望んで孤立したってとこね。」
と言った。
しかしこの解釈ですら言っていて吐き気がする。自分が無い僕らに、自分を騙すも何も無いのだから。
それからは月見さんと他愛無い話で盛り上がった。人について、世界について、ジーパンの需要について、そして自分達について。
「さて、私はもう行くわ。あなたとの会話はやはり最高ね。飽きることを知らないわ。」
満足気に月見さんは伸びをした。
「それでは僕も行きますね。また今度。」
「ええ、また今度。」
僕たちはどうせまた出会う。何もしなくても、何も起こらなくても。
さて、第三話です。これで漸くヒロイン達の大体の性格や立ち位置を書けた気がします。まぁ気のせいかもしれませんが。
ここで少し今後の予定をお知らせします。
まず次の話は静香が中心で、その後藍満、夜宵の順に作っていきたいと思っています。
そして、その後の話でヒロイン達との関わりの中で成長していく主人公の心を書いて第一部の終了という風になるのですが、その中でリクエストをとっていきたいと思います。どのキャラのどんな話でもエロくなければ構わないのでどんどんリクエストしてください。感想や苦情も大絶賛受付中です。よろしくお願いします。