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無題  作者: ああああ
10/15

無鉄砲

PV20000越えました。本当に読んでくださった皆さんには感謝してもしたりないです。

物語はまだまだ続きますが、どうぞこれからもよろしくお願いします。

金曜日。最近は妹が起こしに来ないので1人で起床する。時計を見ると6時半。どうやら毎日妹に起こされていたから、この時間が体に染み付いているようだ。おかげで今日は遅刻せずにすみそうだ。ホント、妹には頭が上がらないな。

下に降りると、ベーコンの焼ける香ばしい香りがしてきた。キッチンを見ると、案の定妹が朝食を作っていた。

「麗梨くん……おはよう……。」

「うん、おはよう。」

それっきり何も喋らず料理に集中する妹。それはいつものことなんだけど、やっぱり何か違う気がする。いつもより暗いというか、深いというか…。

ふとテーブルを見ると、もう料理が並んでいた。

「食べましょうか……麗梨くん……。」

「え?あ、うん、そうだね。食べようか…いただきます。」

いつもより様子はおかしい妹だけど、料理の腕はいつもどおりだった。とても美味しい。

朝食を食べおわると(因みに食事の間妹は一言も喋らなかった。)、僕は自分の部屋へ着替えに行き、いつも通りに玄関へ向かう。ああ、今日は生徒会に入ることを霧断さんに伝えなきゃな、といった感じで今日の予定を振り返っているうちに、妹が来た。

「静香、用意できた?」

「はい……出来ました……。」

「それじゃ、行こうか。」「はい……。」

やっぱりなんか暗いなぁ。兄として何かできないかな?………なんてね。あるわけないだろ、できることなんて。この僕にさ。


静香side


麗梨くん…麗梨くん…麗梨くん…麗梨くん…。

彼は言った。実の妹と結婚だなんて絶対無いって。そうだよね…。それが世間一般の考え方だよね…。だから彼は悪くない。今私の心はズタズタだけど、彼のせいでもないよね…。

じゃぁ何でこんなに辛いんだろう。心が泣きそうなほど痛いのに、何で浮かんでくるのは何も悪くない彼なんだろう。

私は彼のことがこんなにも愛しいのに、何で彼は振り向いてくれないんだろう。……何で私は彼の妹なんだろう。私がいくら忌もうとも、何でどうしようもなく私は彼が好きなんだろう。彼のあの他人事の様な一言で、私は思い知った。私なんて、彼の視界に入ってないんだって。何の迷いもなく告げた彼は、何の罪悪感もないのだろう。当たり前だよ、彼が罪悪感を感じる要素なんて一つもないんだもの。

だけど、何で私はこんなに悲しいの?誰も悪くないのに。何も悪くないのに。

やりきれないよ…。麗梨くん…何であなたは私を愛してくれないの?

答えなんか決まってるよね…。


麗梨side


昼休み。僕は早速霧断さんに生徒会に入ることを伝えるために生徒会室に向かっていた。その道すがら。

「告君麗梨!!」

僕をフルネームで呼ぶこの声は……。

「…久しぶりですね、天津さん。」

例によって例のごとく天津さんだった。…また面倒な人に見つかったかな…。

「何よ、その明らかに面倒そうな顔は!?」

どうやら本心が顔にでちゃったみたいだな…。

「そんな事ないよ。…ところで僕に何か用事かな?」そう言うと、天津さんははっとして言った。

「そうよ、今週の土曜日の映画の話なんだけど、まだ集合場所も時間も決めてないじゃない。どうしてくれんのよ!」

クレーマーでももう少しまともなクレームつけるんじゃないかな…?

「うーん、そうだなぁ。映画は何時からなの?」

そう聞くと、天津さんは生徒手帳を取り出し、開いて見た。

「えっと、12時からね。」「劇場はカネマでしょ?だったら、この学校の正門まえに10時半でどうかな?」「そうね、それくらいが妥当かしら。」

そう言って、天津さんは満足そうに頷いた。

「そう。じゃぁ僕はもう行くね。」

「待って!」

僕が行こうとすると、突然天津さんは大声で僕を呼び止めた。

「何?まだ何か用があるのかな?」

僕がそう聞くと、天津さんは急に目を逸らして、顔を赤くしながら言った。

「私はもう少し話してあげてもいいというか…とにかくもう少し私と話なさいよ!」

わけの分からない要求だった。会話なんて、やれと言われてやるものじゃないよね…。

まぁわけが分からないても、結局僕はその要求を飲むのだけれど。僕には何も無いからね。

確かに霧断さんに伝えなきゃいけないこともあるけど、それは別に放課後でもいいのに対して、天津さんは放課後は部活がある。だから後回しには出来ないからね。

「別にいいよ?天津さんはまだ僕に聞きたい事があるのかな?」

僕がそう言うと、天津さんは楽しそうに笑った。…笑ってくれた。

「それなら、えーと…どこか二人だけで話せるところがいいんだけど…。あんたどこかいい場所知らない?」

何故二人だけじゃなきゃいけないんだろ…あ、そっか。僕は2年だからこの階では目立つのか。

「それなら、ありますよ。ついてきてください、案内します。」

そう言って僕は屋上に向かう。

「ちょっと、待ちなさいよ!」

天津さんもあわててついてくる。


ピッキング成功。僕はいつもの調子で屋上の扉を開ける。後ろを見ると、天津さんがかたまっていた。

「どうしたの、天津さん?入らないの?」

「いや…。あんたって意外と悪よね。」

「???よく分かんないけど、とりあえず。ここなら誰も来ないよ、鍵を掛ければね。」

そう言って僕は鍵を掛けようとした時。

「あら。可愛い女の子二人を屋上に監禁なんて、変わった趣味をしているのね。」

背後から声がした。というか、よく聞き慣れた声だった。

「月見さん…いたんですか?」

「あら、失礼ね。私がここにいてはいけないのかしら?」

そう言って、月見さんは不敵そうに笑った。…本当に不適そうに笑った。

「ねぇ、その方はどちら様かしら?」

月見さんは僕の隣を見ながら聞いてきた。

「ああ、この人は天津藍満さん。1年生で、僕の…友達かな。」

あまり月見さんの前で友達なんて単語使いたくないんだけどね。…吐き気がするから。

「で、天津さん、この人は月見夜宵さん。この人も僕の…えっと、なんて言うんだろ…。」

僕は表現に迷っていた。僕自身だなんて言えないし、でも絶対友達ではないよなぁ。そんな風に考えていると、月見さんが

「私は彼の彼女よ。麗梨くんと付き合ってるの。」

とかぬかしやがった。

「ええ!?」

今まで一言も喋らなかった天津さんも、かなり驚いていた。…と言うよりは、ショックを受けていたと言うほうが正確かな?何にショックを受けたのかは知らないけど。

「あのね、月見さん…。下らない嘘を吐くのは止めてくれないかな?」

僕がそう言うと、月見さんは楽しそうに笑った。

「そうね、あからさまな嘘よ。誰も引っ掛からないような簡単なね。…もっとも、天津さんはそういうわけでもなさそうだけど。」

言われると同時に顔を真っ赤にする天津さん。…外の風に当たりすぎて寒くなったのかな?

「ふふっ、もう少しその子で遊びたいけれど、私もあまり野暮なことはしたくないわ。後はお二人でごゆっくり。」

そう言って月見さんは屋上を出て行った。

「ふう、やっと静かになったね。それで、天津さん。話って?」

僕がそう聞くと、天津さんは苛立ったように

「…もう、いいわよ。」

と小声で言った。

「え、でもさっきは話したいって……」

「もういいって言ってんでしょ!」

そう言って屋上を出て行く天津さん。…何だったんだろ?


放課後。僕は今度こそ生徒会室にたどり着いた。今はその扉の前だ。やはり少し緊張する。

「失礼します。」

僕は中に入った。

「君か…生徒会の件、答えが出たのか?」

早速霧断さんが聞いてきた。

「はい、まぁ取り敢えずは。…生徒会、入りますよ。僕に出来る限りの事はしたいと思っています。」

「そうか、わかった。…一応聞いておくが、この中に彼が生徒会に入ることに異論のある者はいるか?」

霧断さんが聞いたけど誰も手を挙げなかった。

「では先生には私から伝えておこう。とはいっても、君の正式な活動は来週からだ。それまでは別に仕事は無いので、ここに来る必要はない。」

「分かりました…それじゃあ一旦僕は帰りますね。」「ああ。来週からよろしく頼む。」

「はい、こちらこそ。」

そう言って僕は生徒会室を後にした。


自宅。

「麗梨くん…おかえりなさい…。」

家に帰ると、比較的妹はいつも通りになってきた気がした。少しだけど安心した。

「うん、ただいま静香。」「お風呂…沸いてるし…出てきたらすぐ…ご飯も出来ると思うから…。」

「わかった。本当、いつもありがとうね。」

僕は最大限感謝の意を込めてお礼を言う。

早速お風呂に入ることにした。


「ふ〜〜〜…。」

気持ちいい。極楽極楽とはよく言ったものだなぁ。本当に天国にいるみたいだ。………そういえば今日、いよいよ生徒会に入ってしまった。うっかりミスと言うよりは、確信を持ったミスなんだけどね。

これで僕の生活は少しは変わるのだろうか。うん、確かに変わるだろう。今よりも大分息苦しくなるに決まっている。僕が生徒会所属ってだけで、十分な程息苦しいのに。僕はマゾなのだろうか。いや、違う。きっと何物でもなければ何者でもないのだろう。僕はそういう存在だ。後先考えず、ただ生きているだけ。ただ生きていくだけ。マリオネットもいいところだ。

僕はいつになったらこの苦しみから解放されるだろう。僕はいつまで生きていればいいのだろう。

分からないけれど、それでも僕には関係ないと思った。僕がいつまで生きていようが、僕がいつから死んでいようが、僕が化物であることには変わりない。そしてその事実が、僕には十分な程の絶望と欠乏を思い知らせるのだから。そこには吐き気のするような絶対的現実が存在するのだから。ここでは吐き気のするような絶対的幻想が明滅しいるのだから。


さて、今更なんですが、主人公が他人の好意を理解できないってのはなかなか厄介ですね…。こんなのが主人公だなんて、そもそも恋愛小説として成り立つんでしょうか。

さて、この生徒会編、実はあと3話程続きます。

基本的には駄文しか書けませんが、こんな作者の作品でも、次も読んでいただけると幸いです。

それでは。

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