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闇夜が訪ねてくる(1作目・完結)  作者: マックス一郎
転生編
4/35

遺体

南米一を自負する石油大国の国家元首が逝去した。

リベルタドル市、大ボリバル共和国の首都・2012年12月31日 21時40分頃

ミラコスタ宮殿


先ほど届いた偉大なる指導者の遺体が目の前にあった。

この国の副大統領はそれをまっすぐ見ていた、軽蔑な眼差しで。

大統領の遺体がベットに置かれていた、眠るように。


その周り、官僚や大臣が集まっていた、昨年の中旬に癌が見つかってから遅かれ早かれこの結末を覚悟していた。覚悟というより楽しみにしていた者もいた。

医療大国のキューバ人民共和国での必死の癌治療が功を奏するなく、痛みでもがき苦しみながら息絶えたと聞いてた。


「いい様だ。」


副大統領が考えていた。


目の前にいる遺体が偉大なるこの国家の元首の遺体であり、また圧倒的な投票数で大統領の任期を延長したばっかりだった。圧倒的な投票数といっても、不正を働かしての勝利であった。


今こんなクズの極みみたいな壮大ゴミ野郎に死なれても困る。大統領に反対している勢力が選挙不正を訴え、合衆国を含む強力な国家の注意を引いていた。

副大統領は思った、今となって大嫌いなこいつのカリスマ性に縋るのは癪だ。可能なら燃やして、灰をゴミに出したいとさえ思っていた。


「どうしますか、副大統領閣下?」


首相が聞いてきた。


「どうするもこうするもない。我が偉大なる解放者ボリバルの意思を引き継ぐ南米一の大国の偉大なる大統領閣下には少なくても後半年ぐらい生きてもらわないと困る。」


と冷たく答えた。


「承知しました。」


首相が返事した。


「官邸報道官を今すぐここに呼べ。」


副大統領が命令した。


「お呼びでしょうか、副大統領閣下。」


30代後半の官邸報道官がすぐ前に出てきた。


「全国民に向けて、今夜は私が演説を行う、偉大なる大統領閣下が見ての通り、体を悪くしている。回復するまで、私は代理で実務を行う。原稿を今すぐ作れ、一刻を争う。」


「はい、仰せの通り副大統領閣下。」


若い官邸報道官が答えて、部屋から大急ぎで出て行った。


副大統領は怒っていた。ずっと大統領の下で働いていた、汚い仕事もした、こいつの下の世話まで、若い女性、男性、熟女、子供など用意もした。そして自分の手でそれを全て葬ってきた。

癌が見つかり、こいつはもう長くないと分かった時、自分の屋敷で声が枯れるまで大笑いをした。


副大統領は自分自身は地獄行きだろうなと思っていたが、このクズは自分より遥かに酷い地獄行きであることは先ず間違いない。


自制心もなく、極度のサディスト、良心の欠片もなく、病的なまでの嘘つき、尊大で自己中心的、悪意の塊の意地汚いな軍人崩れだが、偉大なるカリスマ性と天才的な演説力を持って生まれていた。


「くそ野郎、地獄へ落ちろ。」


副大統領は遺体を見ながらつぶやいた。


無能バカを装うのは楽じゃなかった。あんまりにも有能だったら、こいつに粛清されていたと見ても間違いない。裏で有能な官僚や軍人、政治家、こいつに妬まれて葬られてきた。


今ベットに横たわっている遺体は生きていた時は平気で嘘を付き、騙し、たらい回し、裏切り、人々を痛めつけるのは日常茶飯事の生活を送っていた。

国民からしたら自分はこいつの金魚のふんみたいに映っているのは分かっていた。そして馬鹿ロバと揶揄られていることも知っていた。副大統領はそれはそれでいいと思った。


今後6ヶ月、自分の政権の地盤を築き上げることにしなければならない。石油もたっぷりあるし、強豪国の一部が石油狙いで自分を援護することも約束されている。全て大統領がいなくなったおかげで自分の手に治めることとなった。


「報道官の原稿はまだか?。」


隣に立っていた初老の官僚に聞いた。


「直ちに確認します。」と返事した。


すっかり外は暗くなり、年が変わる前に全国民に向けて夜の特別演説になりそうと副大統領は思った、そして再びベットにある遺体に目を向けて、心の中で罵った。

その時だった、偉大なるこの大ボリバル共和国の大統領閣下の遺体が目を開けた。


夜になったため、ミラコスタ地区のリベルタドル市歴史博物館近辺を歩いていたヘルムートの頭にマスターよりのテレパスが届いた。


「我が忠実なしもべ、ヘルムートよ、大統領の転生が始まった。」


頭の中にマスターの声が響いた。


「はあ、我がマスター、今すぐに阻止します。」


と答えた。


「阻止するでない、転生終わる前に滅亡せよ。」


マスターが命令した。


ヘルムートは焦った、相当厄介なことになった。






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