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闇夜が訪ねてくる(1作目・完結)  作者: マックス一郎
対決編
28/35

因縁

大ボリバル共和国の悲劇以来、ヘルムートと元大統領が再び対峙する。

日本国、東京都港区 汐留駅近辺

ワトソン重工の日本支社ビル内・入り口大ホール

2025年3月某日 午前11時23分頃


ヘルムートは中年男性の執拗な攻撃を最低限な動きで軽くかわしていた。

12年前の大ボリバル共和国の首都、リベルタドル市で初めて転生した大統領と対峙して以来、訓練と鍛錬で自分の戦闘技術を極限まで高めていた。


あの時、闇の評議会の決定で行われたアンデッド感染爆発アウトブレイクを阻止の核攻撃で滅ぼされたと思った敵が実は、世界最大の多国籍企業、ワトソン重工の手助けでその場を脱出し、最近までアマゾンのジャングルにあるジャブロー研究所にずっと隠れていたことが判明した。


ヘルムートはこの死臭のする新しい系統レガシーマスターに対して嫌悪感を抱いていた。


「何故捕まらん、何故だ!」


と中年男性はテレパスで叫んでいた。


あれこれ約8分、中年男性の攻撃をかわし、反撃に転じていなかった。


「貴様!!闇の評議会戦闘員め!!逃げるな!!」


と怒りを表しながら中年男性がテレパスで更に大きく叫んだ。


ヘルムートは無言でかわすのを止めて、中年男性に対して答えた。


「逃げてない。無能ロバなお前が俺を捕まえられないだけ。」


中年男性はそれを聞いて、更に怒りを増幅させた。


「殺してやる!!貴様を殺して、食ってやる!!」


テレパスで叫んだ。


ヘルムートは相手を逆上させることで油断を誘い、体当たりしてくる宙に浮いた怪物モンスターにロングソードで切りかかった。


中年男性の触手テンタクルファング7本のうち、3本は切られ、地面に落ちていた。


元大統領は痛みを感じ、大きな悲鳴を上げた。


「12年前、お前の国でやるはずだったことを今終わらせる。覚悟しろ、生ごみのマスター。」


ヘルムートは軽蔑の籠った口調で大統領に言った。


「貴様、舐めるな!!我は強い系統レガシーマスターだぞ!!転生し、上位の存在となった者!!」


と中年男性。


「転生しても品格を得なかったな。」


とヘルムートは皮肉った。


「我は世界の王者になる者!!!貴様を殺す!!」


「下品な世界の王者はごめんだね。」


と更にヘルムートは挑発した。


先ほど切られた触手テンタクルファングは既に再生していた。


ヘルムートが思ったのは、この中年男性の再生能力は数倍改良されていると見ても間違いない。


ワトソン重工のジャブロー研究所でどんな実験が行われているのか見に行く必要がある。


どんな内容であれ、世界のため、破壊しなければならないとも思った。


大統領と呼ばれていた中年男性は焦っていた。治療も改良手術も受けたはずなのに、この闇の評議会の一戦闘員を捕まえることができない。そう考えているうちに奥の手を使うことを思いついた。


「我が系統レガシー)の者どもよ、我の元に集まれ、我のために戦え、我のために闇の評議会の戦士を滅ぼせ!!」


テレパスで命令した。


入り口ホールとビル内にいる彼の系統の者たち全員にその命令は届いたが、誰も動かなかった。


誰も彼が今いる場所を見向きもしなかった。


「我の命令だ!!集まれ!!」


と再度叫んだ。


彼の系統レガシーの者たちは信長の系統レガシーと戦い続けていた。


「何故だ!!何故誰も答えてくれん!!」


と怒鳴った。


中年男性はそこにいる全員の思考を覗いた、単純なものしか見えなかった。


「何故だ、マスターである我の命令が聞かん!!」


確かに中年男性はそこにいる全員を転化させていた、田森元首相、小島や田原を含む歴然の猛者たち、ファング小隊プラトーンの隊員とそこら中にいる一般戦闘員たちも。だが、誰も彼の呼びかけに反応しなかった。


男性は後ろへ飛んでヘルムートから距離を取った。その近くで戦っていたファング小隊プラトーンの東南アジア系男性隊員を触手テンタクルファングで捕まえた。


「貴様、我はお前のマスターだ、何故呼びかけに反応しないんだ?」


捕まった男性隊員は軽蔑な眼差しで中年男性を見て、銀コーティングされたサバイバルナイフ、自分を捕まっている触手テンタクルファングを素早く切った。


「貴様!!マスターである我に対して何てことを!!」


と怒りで怒鳴った。


マスター?お前が?薄汚い蛆虫やろう、てめえは俺のマスターじゃねえ!」


と東南アジア系男性隊員は大統領に向かって、反抗的に答えた。


「貴様!!何故だ!!何故言うことを聞かんのだ!!」


「教えてやろう、薄汚いお前は最初から会社の利益のための実験体だったんだ。」


と軽蔑を表しながら、隊員は話した。


「貴様!!」


怒りで表情を歪みながら、中年男性はテレパスで怒鳴った。


「お前はただのピエロ、お前はただ利用されて、捨てられる運命の者だ!」


隊員は笑いながら大統領を罵った。


大統領は朝に見た夢を思い出した、あの影の男に言われたこと。不可触民パリヤと名乗ったあの恐怖の存在は間違ってなかった。


「貴様!!」


と隊員に対して怒鳴り、3本の触手テンタクルファングでまた捕まえた。


マスターに楯突いた罰だ!!」


ともう1本の触手テンタクルファング隊員の首に刺した。東南アジア系隊員は痛みの表情を浮かび、そのまま血を全て吸われた後、肉体が粉々となり、体に埋め込まれていたインプラント共々地面に散らばった。


全てのやり取りを見ていたヘルムート、素早く大統領の後ろに立ち、斜め上からロングソードを振り下ろした。


間一髪で大統領はそれを避け、怒りの目でヘルムートを睨んだ。


「今すぐ引導を渡してやる、自称世界の王者。」


ヘルムートは真剣な口調で大統領に言った。


「闇の評議会の戦闘員にやられてたまるか!」


と大統領は叫んだ。


叫び終わったところでヘルムートの義手の拳が彼の鼻にクリーンヒットした。


反動で頭が後ろへ反り、今度は後ろから後頭部に膝蹴りが当たった。


また頭は前へ反り、顎にヘルムートの右アッパーがさく裂した。


体ごと後ろへ飛ばされた中年男性は今度は上から胸辺りに宙返り蹴りが当たった。


Vの字に体が折られた大統領は地面に落ちた。


素早くヘルムートは両手で触手テンタクルファングを全本を根から抜いた。


大統領の裂けた口から血が溢れだし、ヘルムートから顔にパンチの連打をくらった。


中年男性は手で顔を庇おうとしたが、ヘルムートの攻撃は激化した。


右腕が文字通りもぎ取られた上、左腕は数か所の骨が折られた。


大統領は信じられなかった、自分がこんなにもあっけなくやられることが。


「田森よ、小島よ、我を助けろ。」


テレパスを飛ばした。


それと同時、男は田森の思考を覗いた。そこで感じたのは恐怖だった、迫ってきている


信長の系統レガシーの女性戦士への恐怖。その思考で自分が出しているテレパスへの返答が聞けるのは無理だとわかった。


小島の思考も覗いた、そこで予想外なものを感じた。それは純粋で明確な自分への「軽蔑」だった。


本来小島はテレパス能力スキルがなく、口でしか返事できないはずなのに、はっきりとしたテレパスで大統領の呼びかけに返答した。


「死ね、ゴミの王。」


と頭の中に響いた。


「私の頭を覗くな、外道め。」


も更に届いた。


大統領は打ち砕かれたと感じた。夢で言われたことは全部本当だった。


中年男性の上で馬乗りとなったヘルムートは休むことなく殴っていた。男の顔は変形していた。


このまま男は全て暗くなっていくと感じた。


そこで一つの声が頭の中に響いた。


「世界の王者とやら、これはお前の真の実力か?、余との約束を忘れたか?」


夢で見た存在からのメッセージだった。中年男性は覚醒した。


ヘルムートは胸ぐらを掴まれて、体ごと遠くへ投げられ、壁にぶつかった。


大統領と呼ばれていた中年男性は仁王立ちしていた。急速再生で怪我、腫れなどが治り、


新しい触手テンタクルファングがまた口から生えた。今度は8本だった。


「よくもやってくれた評議会の虫め。」


と怒りの籠ったテレパスでヘルムートを威嚇した。


ヘルムートはゆっくりと立ち上がり、中年男性を見た。


「少しマシになったな、ごみのマスター。」


と挑発した。


「我はごみのマスターに非ず、我はビクトル・ウゴ・リバス・チャベス卿だ!」


中年男性は名乗った。


「では、ビクトル・ウゴ・ごみ卿、喧嘩再開と行こうぜ。」


とヘルムートはまた挑発した。


2人はぶつかり合った。


人間ウォームの目では絶対に追えない速さで殴り合い、拳と拳がぶつかり、触手テンタクルファングの雪崩のような攻撃がヘルムートを襲ったが、彼は系統独自の能力スキルを発動した【瞬間移動ワープ】で距離を取った。


「逃げるのか?評議会の犬め!」


とビクトル・ウゴ卿と名乗ったマスターは言った。


「まさか。ごみ相手に逃げるわけない。」


とヘルムートは皮肉った。


ビクトル・ウゴ卿は触手テンタクル牙ファングを口の中に引込めた。そして彼独自の能力を発動した。それは【暴食グラトニー】だった。


大きく裂けた口から巨大な蛸の足と頭が一緒になったようなものが触手テンタクルファングの代わりに出てきた、そしてそれは猛スピードでヘルムートを飲み込んだ。


ヘルムートは飲み込まれた瞬間に能力スキルを使って、移動した。


ビクトル・ウゴ卿の暴食グラトニーがまた襲ってきたが、ヘルムートは飲み込まれる前に細かい瞬間移動ワープで叩ききった。


ビクトル・ウゴ卿は一度怯んだが、また別の独自の能力スキルを発動した。


それは【憤怒ラス】だった。


また口から大きなサーベルタイガーのような鋭い複数の牙が生え、ヘルムートの義手を噛んだ。


ヘルムートはビクトル・ウゴ卿の眉間を思い切り殴った。その隙に義手を引込めて、顎を蹴った。


両者はまた距離を取り、お互いを睨みあった。


「芸当はそれだけか?」


とヘルムートはまた挑発した。


ビクトル・ウゴ卿は憤怒ラスを引込めて、ヘルムートを見て、笑い出した。


「恐怖したな、評議会の虫けらめ。」


「お前にか?寝言は寝てから言えよ、ごみ卿。」


「来いよ、虫けら、我の糧になれ!」


「なるかよ。覚悟しろ、ごみ卿。」


ヘルムートが自分のマスターから引き継いだ系統の独自な能力スキル瞬間移動ワープだけではなかった。もう一つの能力スキルを久々に発動した。【ミスト】と呼ばれている能力スキルだった。そしてヘルムートには両方を同時に使用することが可能だった。


霧と化したヘルムートは瞬間移動ワープし、ビクトル・ウゴ卿の胃の中に現れた。


ビクトル・ウゴ卿は自分の一気に膨らんだ腹部を見て、唖然とし、恐怖に駆られた。


ミスト解除。」


とヘルムートは念じた。


ヘルムートは胃の中で実体化し、ビクトル・ウゴ卿の体の中を爆発したかの如くに突き破り、死臭をする肉片に変えた。


血と死臭する汚物まみれとなったヘルムートは先までビクトル・ウゴ卿がいたところに立っていた。


周りに死臭する肉片、内臓と汚物が散乱していた。


ビクトル・ウゴ卿の上唇から上残っていた頭を見た。その残り物の頭の目から恐怖、これから訪れる死へ恐怖をヘルムートは感じ取った。


両手でそれを掴み、持ち上げた。その頭の目が大粒の涙を流していた。


「ご慈悲を、ご慈悲を。」


と弱いテレパスが届いた。


ヘルムートは軽蔑の目でその頭を見て、力いっぱい込めて、両手で一気にそれを潰した。


ビクトル・ウゴ卿は潰されるまでの瞬間に不可触民パリヤと名乗っている存在からテレパスが届いた。


「やはりお前は負けた。期待した余は馬鹿だった。外道は転生しても、外道のままだ。地獄で永遠に焼かれるが良い。そして先に死ぬことを味わえるお前を呪うぞ、生まれ変われないように。」


ビクトル・ウゴ卿は恐怖と悲しみに打ちのめされた。転生前の人生、転生後の人生でも、ずっと裸の王様だった。絶望と悲しみに溺れているところ、突然一瞬の激痛を感じ、何も見えなくなった。


ヘルムートが12年前に任された任務がたった今、完了した。


彼は手を拭き、弥生と田森が戦っているところへ歩き出した。


「任務完了。」


と一人でつぶやいた。




小島、田森そしてビクトル・ウゴ卿と名乗っていた中年男性の元大統領の眷族たちが頭の中に感じていた不快感は消えた。全員自由になった。


小島は入り口ホールにいるファング小隊プラトーンの生き残りにテレパスを送った。


「後3分でこちらの荷物を回収する。完了次第、全員退却。一般戦闘員は除外。」


「アイアイサー。」


と残った16名全員返答した。


250人の戦闘員の中、30名はファング小隊プラトーンのメンバーだった。


その中今回の戦いで13名が犠牲となり、1人は敵側に寝返った。


部隊の残り26名はワトソン重工の本社を警備していた。


最後の2人は南米のプエルー共和国出身の兄弟で、人が出払った警視庁へ侵入させていた。


「ペドロ君、パブロ君、任務はどうだ?」


テレパスを送った。


「侵入成功、小島隊長。」


と長兄のペドロは応答した。


「小うるさいハエ数匹を素早くそして隠密に処理しました。」


と弟のパブロは報告した。


「お願いした隊員候補を拾ったか?」


と小島は確認した。


「はい、隊長。喰種グール相手によく勝ったと思いました。」


と長兄ペドロは報告した。


「脱出して、合流地点へ向かえ。警視庁にいる長寿者エルダーに侵入を悟らせるな。着いたらすぐに候補生の怪我を手当しろ。」


と小島は命令した。


「アイアイサー。」


と兄弟揃って応答した。


弟のパブロは怪我で意識を失っていた植田緑元分析官を担いでいた。


地下にいる厄介な長寿者エルダーの門番が気付く前に何とか3人は警視庁を脱出した。


シェルター行きのエレベーターを守っていた人間ウォームの警官10名と地下の特別監獄を警備していた新人者ニューボーン6人は侵入に気付く前に無惨に殺されて、滅ぼされていた。


小島はあの兄弟をスカウトして良かったと思った。一般人にしてオーラが禍々しく、おそらくスカウトしなければ連続殺人鬼になっていたのだろうと確信した。


「ほぼ完了だね。良かった。」


と静かにつぶやいた。


悲しい出来事の連続の後、小島に笑顔が戻った。





















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