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闇夜が訪ねてくる(1作目・完結)  作者: マックス一郎
対決編
25/35

理事官対副官

公安部の中山新一とファング小隊プラトーンの副官、田原一豊が一騎打ちとなる。

日本国、東京都港区 汐留駅近辺

ワトソン重工の日本支社ビル内・入り口大ホール

2025年3月某日 午前11時15分頃


中山新一と田原一豊は刃を交えた。

普通の人間ウォームの目に追えない速さで動いており、

日本刀とサバイバルナイフのぶつかる鋭く、鈍い音しか聞こえなかった。


半端ハーフヴァンプのお前は俺には勝てないよ。」


田原は皮肉な口調で挑発した。


「永遠2番目に甘んじている男の台詞セリフと思えないけどね。」


新一が挑発を返した。


新一は猛スピードで、攻撃を繰り返す田原の2つのサバイバルナイフを難なくかわしていた。


田原は焦っていた、攻撃を簡単にかわされている上、カウンター攻撃をしてこないライバルに対してイライラした気持ちを感じていた。


彼は自分では1個中隊とは言わず、ワトソン重工の研究所で受けた改造では1個大隊の攻撃力を有していると思っていた。


「お前を殺して、お前の死体で遊んでやるよ、半端ハーフヴァンプめ。」


田原は舌を出して、舐めるような仕草をし、新一を更に挑発した。


「勝ってから言えよ。副官殿。」


特に副の部分を強調しながら、新一が答えた。


戦いながら、田原は数日前のブリーフィング会議の資料を思い出した。この公安部の理事官は日本の(マスター)、織田信長の遠い子孫を母に持ち、父親は英国に永く君臨しているマスター、ルスヴン卿であった。


1910年初夏の暑い日に生まれ、当時は特例中の特例で英国籍と日本籍、両方認められている存在だった。それから1930年、二十歳の時に初めて公安部に入り、ずっと危険な任務と20世紀で当たり前だった闇の評議会のマスター同士の戦いで大きな成果を残していた。


上官の小島に彼を注意するように言われていた、小島曰く、中山新一は今まで全力を出したことない、未知数の敵であると。田原は転化と改造で自分の力が大幅に上々したのは知っていたし、未知数の敵であっても、自分が負ける可能性はないと確信していた。尚且つ、こんな男とではなく、美しい長寿者エルダーの黒岩弥生を自分のものにしたかった。


戦場バトルスコーピオンの田原とレッド生存者サバイバーの小島は傭兵界隈では超が付くほどの有名人で、戦場で敵同士として2人と出会った者、誰一人も生きて帰ったことはない。


「決めるので覚悟しろ、半端ハーフヴァンプめ。」


新一は顔色一つ変えず、田原の攻撃を黙々とかわしていた。


田原は研究所の技術部から聞いた、体に入っている機械化サイボーグインプラント活動開始起動コマンドを口にした。


スコーピオン攻撃アタック始動オン


田原の両脇から折り畳み式チタン合金の腕、その手代わりに鋭い高周波振動ナイフが付いていて、背中から同じくチタン合金の尻尾、その先端に最新式の戦闘用レーザー光線銃が備わっていた。彼の両足のふくらはぎから高速移動用小型タービンもズボンを破り、むき出しとなった。


「遊びは終わりだ。今から葬ってやるよ。」


田原は真剣な声で新一に向けて警告した。


尻尾にあるレーザー光線のスコープは右目に埋め込まれていた。田原は新一の顔に狙いを定めて、笑いながら撃った。レーザー光線は素早く発射されたが、標的である新一はいなかった。


田原は再度狙いを定めて撃ったが、やっぱり光線が届く前に新一は消えていた。


「滑稽な外見になった、二番目さん。」


新一は後ろから田原に話しかけた。


「舐めるなよ、お前のようなふざけた存在は俺が消し去ってやる。」


田原は怒鳴った。


「ふざけた存在?鏡見てみろ、副官さん。」


田原は足の高速移動用のタービンで動きを一気に加速し、新一の前に現れて、サバイバルナイフと高周波振動ナイフで攻撃を仕掛けた。


標的の新一はまた彼の前から消えた。


「どこを狙っている?俺はここだ。」


後ろから新一は田原を煽った。


田原は後ろへ振り向き、レーザーで再度新一を狙ったが、毎度のごとく、高速で発射された光線は彼のいないところを虚しく通り、近くで信長の精鋭部隊と戦っていたワトソン重工の転化人インヒューマン一般戦闘員3名の背中に当たり、滅ぼした。


「味方を背中から撃つのは感心できないな。」


新一が田原をからかった。


田原は焦った、上官の小島に中山となるべく戦わないように命令されていたが、弥生への執着のあまり、衝動的に動き、彼とぶつかった。


確かに彼は途轍もなく強くなった。転化人インヒューマンになり、身体的能力を数10倍強化された、ワトソン重工技術部の最新機械化サイボーグにも自ら志願し、強さの限界へ挑戦した。


それでも前にいる茶髪の男は自分より強かった。食物連鎖の頂点の存在が持っている能力を生まれながら持ち、今まで本気で戦ったことはない男、中山新一に対して、田原は恐怖した。


「貴様、半端ハーフヴァンプめ、絶対に息の根を止めてやる!!」


恐怖、怒り、焦りを混じりながら、田原は叫んだ。


新一はそれを見て、悟った。機械化サイボーグ吸血鬼の怪物モンスターとなった田原は恐怖と怒りで今まで以上に危険な存在となった、そんな危険な存在に対して本気、文字通りの本気を出さなければならなくなった。


新一は日本刀を構えて、自分の間合いに全速力でぶつかりに来る田原を切ることに専念した。


田原は間合いに入った。新一は超高速で相手を3回切った。


彼の生身の腕、2本、機械の腕、2本、攻撃用尻尾が地面に落ちた。


田原は理性を失い、口が大きく裂け、2本の触手テンタクルファングを出した。


新一はまた日本刀を構えた。


副官の触手テンタクルファングが近くで戦っていた味方のはずの一般戦闘員2人を捉え、


血を吸い始めた。転化人インヒューマンの彼らはみるみるうちに乾いたミイラとなり、地面に落ちて、粉々になった。


そして彼の暴走は更に加速した。無差別に近くの一般戦闘員を襲い始めた。更に4人の戦闘員が粉々となり、切られたはずの生身の2本の腕、高速再生された。


新しく再生された腕を見て、田原は喜んだ。


新一が見ている前で田原の部下であるファング小隊プラトーンの隊員3人は彼の暴走を止めようとした。


一人は背の高いインド人男性、もう一人は中東系の女性隊員と最後は中国人女性隊員だった。


「田原副官、落ち着いてください。」


男性隊員が声をかけた。


それを言い終えたと同時に田原の触手テンタクルファングが彼の首を刺し、餌食にした。


中国人女性隊員は後ろから攻撃を仕掛けようとしたが、もう1本の触手テンタクルファングが彼女の胸に刺されて、血を吸い始めた。5秒以内で2人は乾いたミイラとなり、地面に落ちると同時に粉々となった人体とインプラントだけが残った。


中東系女性隊員は真正面から攻撃を仕掛けた、ジャンプし、腕を交差し、両手のサバイバルナイフで田原の首を上から切り落とそうとした。タービン付きの足で高速顔面蹴りを食らい、頭はバットの衝撃を受けたスイカのごとく、割れて、宙に散った。


地面に落ちてくる女性隊員の遺体を田原の触手テンタクルファングが彼女の頭のあったところから刺し、体に残った血を吸い、吸い終わった後に遺体を地面に落とした。残ったのは乾いた粉々の遺体インプラントだけだった。


新一は呆然と一連の出来事を見ていた。


怪我を負った獣は危険、正にその通りだった。恐怖のあまり、正気を失い、味方まで餌食にした田原は危険な存在、本能のままで食い尽くし、暴れる怪物モンスター


「本気にさせてくれたことに礼を言う、田原一豊副官。」


新一はつぶやいた後、日本刀を構えた。


田原はそんな新一を見て、襲いかかってきた。


「食ってやる!!食ってやる!!食ってやる!!」


と叫んだ。


怪物モンスターと化した田原は新一の間合いに入った。


一瞬のうち、新一は田原を数回切った。


バラバラとなった、腕、胴体、触手テンタクルファング、足、頭が地面に落ちた。


新一は地面に落ちた田原の頭のところへ行き、額辺りを素早く日本刀で刺した。


田原が最後に見た光景は哀れみの表情で上から自分を見てる新一の顔だった。


「自由になった、母さん。」


生まれた東北での幼少期を倍速再生で思い出しながら、田原は心の中でつぶやき、息途絶えた。


田原の体が燃え、灰とインプラントの残骸が残った。


戦いを近くで立って、見ていた2人組が居た。


「中山新一、桁違いの強さだ。」


とマモールデ。


「はい。彼と一戦を交えても、生き残れる自信ないね。」


ミナが答えた。


「本国にいるあの吸血鬼ハンターのまねをしているデイ・ウォーカーは彼に勝てるだろうか?」


「どうだろう、マモールデ。どの道にしても我が(マスター)に報告せねばならない。」


とミナ。


「ヘルムート以外に(マスター)級滅ぼしに成り得る存在がいるとね。」


マモールデは付け加えた。



小島は先ほど3人の隊員の気配が消えるのを感じ取った。また仲間が犠牲となった。


それを思っている時に大きな存在が消えたことを強く感じた。

親友であり、副官であり、時折体の関係を持つ存在であり、幼馴染でもあった、田原一豊が滅ぼされたと知った。


必要な犠牲であると頭でわかっていたが、深い悲しみに落ちることは避けられなかった。


「弔い合戦、必ずする。」


一滴の涙を拭いながら、小島がつぶやいた。











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