表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

とある国の昔の話1

作者: タダル

 そこは、夢の中だった。

砂漠の見えるような街で、高い建物など1つもない。今は、紀元後20年である。夢を見る私とは別に、夢の中に住まう私がいた。私は15歳で、茶色い短パンに白いシャツ、髪は1つにまとめた少女である。

 私は、夢の中の私についてよく知っていた。朝硬いパンを食べたこと。かっこいいものに憧れていること。最近、権力というものについて大変疑い深く思っていること。その世界の私が暮らす街では、とある宗教が力をつけていた。街のほとんどの人はその宗教に属し、毎週教会に通う。無論私の家は別だった。私はこう考えていた。あの宗教は、創設者である男が権力と金を手に入れるために開いたものだと。その証拠に、その宗教には階級制度があって、金を払えば払うほど、そして教会に通えば通うほど、その階級は高くなっていった。加えて、去年から新しいルールが、この宗教につけ加えられた。それは、恐ろしく残酷なものである。

階級が最上まで上がったものは、その瞬間その身を火で炙り現世から離れよ。

これを聞いた時は絶句した。そんなことがあっていいものか。しかし、すでに宗教に入っていた人々の中に、宗教を離れようとするものはいなかった。

 今宵は特別な夜である。私は、例の宗教の教会の中にいた。木造で作られた教会は、簡単に燃えてしまう。その中には、30個ぐらいの、いずれも木造のベンチが並んでいた。1つのベンチに1家族ずつ座らされていて、彼らに表情はない。大人も、子供も、老人も。奥の方に、2つの人影があった。1人は女性で、やってくる新たな家族の案内をしている。遠くにいるもう1人は男性で、この馬鹿げた宗教を創設した当事者だ。ベンチに座っている人々に向かって声高らかに叫んでいる。

「これからあなたたちは自由で幸せな世界へと解き放たれるのです。何も恐れることはありません。」

ベンチに座っている者達の中に、恐れを見せるものはいなかった。これから彼らの身に何が起こるのか、知るのは私のみではない。

 夢の中の私は、耐えられなくなった。目の前の彼らを放って置けるはずもなかった。すぐさま奥の女の元へ行き、呼吸を整えてこう尋ねる。

「なぜこの人たちは、死なねばならぬのですか。」

すると女は、瞬き一つせずこう答えた。

「それら彼らにとっての幸せだからです。」

あの創設者が言っていることと全く同じ答えだった。はい納得、と引き下がれる道理はない。

「しかし、あの創設者の方の階級は最上級以上でしょう?」

「あのかたは特別なのです!」

いきなり怒鳴られて大変驚いた。呆れた私は、そのまま教会の出口に向かい、扉の取手に手をかけた。

 

____扉に張られていたガラスに、ちらりと赤い光がうつる。


 私は、教会の外を歩いていた。恐ろしく無表情である。教会の中の火の海には目もくれない。やがて火は教会全体を覆ってしまった。

 これは本当に私なのだろうか。人を恨んでいる表情にも見える。この時、冷血な彼女(私の姿をした者)は、以下の3つのことを考えていた。

1つ__女が言った、この宗教の創設者は特別なのだという発言。その意味はなんなのだろう。

2つ__ベンチに座っていた人々は、なぜ死を覚悟しても教会に通ったのだろう。あんな子供まで。

3つ__燃える人々と教会を目にした私の心は、なぜ、こんなにも冷静だったのだろう。


これらの疑問、あなたはこの物語の中で解決させられるか。1つ、設定を加えてみてくれ。それにより、疑問が解決されたなら、きっとこの物語は、より完全なものとなる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ