とある国の昔の話1
そこは、夢の中だった。
砂漠の見えるような街で、高い建物など1つもない。今は、紀元後20年である。夢を見る私とは別に、夢の中に住まう私がいた。私は15歳で、茶色い短パンに白いシャツ、髪は1つにまとめた少女である。
私は、夢の中の私についてよく知っていた。朝硬いパンを食べたこと。かっこいいものに憧れていること。最近、権力というものについて大変疑い深く思っていること。その世界の私が暮らす街では、とある宗教が力をつけていた。街のほとんどの人はその宗教に属し、毎週教会に通う。無論私の家は別だった。私はこう考えていた。あの宗教は、創設者である男が権力と金を手に入れるために開いたものだと。その証拠に、その宗教には階級制度があって、金を払えば払うほど、そして教会に通えば通うほど、その階級は高くなっていった。加えて、去年から新しいルールが、この宗教につけ加えられた。それは、恐ろしく残酷なものである。
階級が最上まで上がったものは、その瞬間その身を火で炙り現世から離れよ。
これを聞いた時は絶句した。そんなことがあっていいものか。しかし、すでに宗教に入っていた人々の中に、宗教を離れようとするものはいなかった。
今宵は特別な夜である。私は、例の宗教の教会の中にいた。木造で作られた教会は、簡単に燃えてしまう。その中には、30個ぐらいの、いずれも木造のベンチが並んでいた。1つのベンチに1家族ずつ座らされていて、彼らに表情はない。大人も、子供も、老人も。奥の方に、2つの人影があった。1人は女性で、やってくる新たな家族の案内をしている。遠くにいるもう1人は男性で、この馬鹿げた宗教を創設した当事者だ。ベンチに座っている人々に向かって声高らかに叫んでいる。
「これからあなたたちは自由で幸せな世界へと解き放たれるのです。何も恐れることはありません。」
ベンチに座っている者達の中に、恐れを見せるものはいなかった。これから彼らの身に何が起こるのか、知るのは私のみではない。
夢の中の私は、耐えられなくなった。目の前の彼らを放って置けるはずもなかった。すぐさま奥の女の元へ行き、呼吸を整えてこう尋ねる。
「なぜこの人たちは、死なねばならぬのですか。」
すると女は、瞬き一つせずこう答えた。
「それら彼らにとっての幸せだからです。」
あの創設者が言っていることと全く同じ答えだった。はい納得、と引き下がれる道理はない。
「しかし、あの創設者の方の階級は最上級以上でしょう?」
「あのかたは特別なのです!」
いきなり怒鳴られて大変驚いた。呆れた私は、そのまま教会の出口に向かい、扉の取手に手をかけた。
____扉に張られていたガラスに、ちらりと赤い光がうつる。
私は、教会の外を歩いていた。恐ろしく無表情である。教会の中の火の海には目もくれない。やがて火は教会全体を覆ってしまった。
これは本当に私なのだろうか。人を恨んでいる表情にも見える。この時、冷血な彼女(私の姿をした者)は、以下の3つのことを考えていた。
1つ__女が言った、この宗教の創設者は特別なのだという発言。その意味はなんなのだろう。
2つ__ベンチに座っていた人々は、なぜ死を覚悟しても教会に通ったのだろう。あんな子供まで。
3つ__燃える人々と教会を目にした私の心は、なぜ、こんなにも冷静だったのだろう。
これらの疑問、あなたはこの物語の中で解決させられるか。1つ、設定を加えてみてくれ。それにより、疑問が解決されたなら、きっとこの物語は、より完全なものとなる。