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血を操りしモノ  作者: 長月
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ナイチンゲール

国外で戦うのなら国外での戦力強化も必要だという結論に達した想達は、奏影に礼を言い、石田家を後にする。その足で空港へと向かい、晴明達と話し合って決めたイギリスへと飛び立つ。

(主殿!飛行機と言うのは凄いですね!雲の上を通っていました!)

(あはは。未だ興奮冷めやらぬって状態だな、義経)


想は口に出さずとも会話が出来る事を晴明から聞き、それから心の中での会話にしているが、晴明にいつから出来る事に気付いていたかを聞くと「さて、いつからでしょう?」と口元を緩ませながらはぐらかされたが、想は内心、これは初めから知っていたな。と諦めた。


(義経殿。気持ちは分かりますがそろそろ落ち着きなされ、飛行機の中からずっとそれでは想殿が疲れてしまいますぞ)

(それは確かに!すみません主殿。配慮が足りませんでした)

(生きていた頃には思いもよらない物だったかも知れないし、テンションが上がるのも無理はないよ)

(テンション?)

聞きなれない言葉に思わず聞き返す義経に、晴明はすかさず注釈を入れる。

(想殿は興奮するのも無理は無いと仰っているのです)

(おお!さすが晴明殿!現代の言葉が分かるとは博識ですね)

(いえいえ、まだまだ分からないことだらけです。特に外国語や私の死後に出来た言葉なぞは、分かりませぬ)

(確かに、先程のテンション?とやらも全く意味が分かりませんでしたし)

(あぁ、横文字は分からないよな。なるべく使わないようにはしてるんだけど、咄嗟に出ちゃうんだよ)

(横文字?)

晴明と義経はそう声を合わせ聞き返す。

(あぁ、そうか。この言葉も分からない事になるな。横文字って言うのは)


数時間後、会話を楽しみつつ辿り着いたそこは聖マーガレット教会だった。想は周囲を探知し向かった先はとある墓の前だった。想は片膝を付きながら手を合わせ、祈りを捧げるように目を瞑る。

(ナイチンゲールさん。私は日本から来た早川想と言います。今日はあなたの力を借りたくてここまで来ました。どうか話だけでも聞いてください)

その時、指輪が仄かに光を放ち出す。

(まさか死後に呼び掛けられる事があるとは驚きました。想、日本から来てくれたあなたに敬意を表し、話を聞きましょう)

(すみません。まだ英語には慣れていなくて、ゆっくりと話してくれると助かります。私の話は・・・)

想は、用意していた英文を取り出し、拙いながらも読み上げる。

(話は分かりました。ですが、私は戦う力を持っていませんよ?)

そうナイチンゲールはゆっくりと話す。想はこの時の為に買った翻訳機を使い、時間を掛けつつ言葉を重ねる。

(あなたには私や、関係のない人達を戦いに巻き込んでしまった時に傷を癒してもらいたいんだ)

(・・・なるほど。ですが、私は看護婦。重傷者は治せませんよ?)

(大丈夫。問題ないです)

(俄かには信じがたい夢物語の様な話ですが、あなたの様な人がこれ以上増えない為とあらば、微力ながら手助けを致しましょう。ですが、必ず生きて全てを終わらせること。良いですね?)

(全てが終わればあなたをこの地に連れ帰る事を約束します)

その瞬間、光が辺りを包む。想が目を開け、立ち上がると目の前に白衣を着た女性が微笑みながら立っていた。

「想。これからよろしくね」

「あ、ありがとうございますナイチンゲール。こちらこそよろしく」

想は不思議そうな顔を浮かべ、問う。

「ナイチンゲールさん。変な質問だけど、今は日本語話しているの?」

「いえ、さっきと変わらず英語よ。想こそ、突然英語を流暢に話しだしてどういう原理なの?」

「英語?晴明、義経。俺は今、英語を話しているのか?」

「いえ、主殿。普段と変わらない日本語に聞こえます。・・・私は源義経。ナイチンゲール殿、これからよろしくお願いします。私の言葉は分かりますか?」

義経は片膝立ちの状態で想の前に現れ、立ち上がりそうナイチンゲールに話す。

「ええ、上手な英語ね。こちらこそよろしくね義経」

続いて晴明はナイチンゲールの前に現れ、頭を下げる。

「私は安倍晴明。よろしくお願いしますナイチンゲール殿」

「よろしく晴明」

三人の挨拶が終わると、晴明は少し考え答えが出たように、想を見る。

「想殿。英語の件ですが、ナイチンゲール殿と契約した事で言語が、互いの言語に変換されていると思われます。しかもそれは使い魔同士にも影響があるので、我らもナイチンゲール殿と意思疎通が出来るようです。まさか使い魔契約にこのような素晴らしい効果があったとは思いもよりませんでした」

「なるほど。確かにそう考えると、想の英語力が私達となんら遜色ないのも頷けますね」

「つまり、数万出して買ったこの翻訳機はもう用済み?」

想は手に持つ翻訳機を指差しながら、落胆気味に話す。

「そんな事ないわよ。私との会話では必要なくなったかも知れないけど、買い物とかでは必要よ。多分」

「そうです主殿。そのおかげでナイチンゲール殿と契約が出来たではありませんか」

「それにこれから先、英語以外の言語の相手がいた際には必要になります」

「そうか。そうだよな。前向きに考えなきゃな。ありがとう皆。それと、そろそろ指輪に入ってくれ。人に見られると面倒くさい事になるかもしれない」

三人は落ち込む想のフォローがうまく言った事に安堵し、消える。


(そう言えばナイチンゲールさん。途中から敬語が無くなっていました。すみません)

(別に気にしないわ。想は私の主なんでしょ?それなら敬語を使っている方がおかしく感じるわ。それに、戦場では敬語じゃない人も沢山いたしね。だから、二人と同じように接してくれる方が嬉しい)

(そうか。分かった、ありがとうナイチンゲール)

そう話しながら教会を後にする。

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