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血を操りしモノ  作者: 長月
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天地家最後の試練


外に出ると日は中天を過ぎた位置にあり、源はテントを設営していた。

「源じいちゃん。何をしているの?」

源はその言葉に振り向き、想の姿を見ると驚きの表情を浮かべるが、すぐに優しく微笑みかける。

「想。生きて帰って来られたんだな。なに、一度負けても気にするな。じいちゃんが何日でも付き合ってやるからな」

「えっ?負け?いや、源じいちゃんそうじゃなくて」

「なんだ?家の事か?大丈夫だ。数日帰らないと言ってあるからな。儂一人いないぐらい何ともないさ。まぁ、テントももうじき組み立て終わるから、そこら辺で休んでいなさい」

「違うんだよ源じいちゃん。もう終わったんだ。クリアしたんだよ」

その言葉に源のペグを打つ手が止まる。

「想。嘘はいけないぞ」

「嘘じゃないよ。影を倒した後に、安倍晴明を名乗る声が聞こえてきて少し話したんだけど、自分の場所を当主に聞けって言ってから声が聞こえなくなったんだ」

「晴明様が!?」

驚く源に想は頷く。

「・・・想、体調はどうだ?戦いの後だからさすがに疲れているか?」

源は立ち上がる。

「もう回復したから大丈夫。帰る準備なら手伝うよ」

「いや、その前に想の力を見せてくれ。一撃だけでいい」

源はそう言い、距離を取る。想は「分かった」と右手を源に向け赤い球を射出する。素早く袖から数枚の札を取り出し、投げつける源。赤い球に張り付いた札は徐々に燃え広がり消える。

「ならば」

源は胸元から一枚の札を取り出し、口元に近づけ吹き込むように高速で言葉を紡ぎ握り潰す。すると札は瞬時に剣となり、眼前に迫る赤い球を両断する。

「・・・なにっ!」

両断された球は瞬時に液状化し源を飲み込む。飲み込まれた源は札を取り出すが文字が滲み使えない事を悟り、九字の印を結ぶも周囲に少し隙間が出来ただけですぐさま元に戻る。

源は今の瞬間に咄嗟に空気を取り込もうと無意識に息を大きく吸い込んだ際に、赤い液体ごと飲み込んでしまう。その苦しみから逃れようと、外に向かい藻掻くが球体は源の動きに合わせて移動するため、外に出られない事を悟った源は紛れに剣を振り回すが効果は無く、少しして口から大量の水泡を吐き出す。想はその瞬間に赤い球を解く。

「ごほっごほっ。参った、完敗だ」


「急激に強くなったな。さすがに水の中では何も出来なかったぞ。まさか九字ですらあの程度の威力とは思わなかった。よっぽど鏡源洞の相手は強かったのだな」

荷物を片付けた帰り道、源は明るくそう言った。

「あれは中での戦いで編み出したんだ。敵は吸血鬼の力を持った俺。武器を直ぐに変化させていたからその応用で、あいつにも同じ攻撃したんだよ。まぁ、直ぐに吹き飛ばされたけど」

と笑いながら返す想。

(あれを吹き飛ばした?想の力の源は底知れない力を持っている事になるぞ。大体、儂の破邪の剣は相手が液体だろうが霊体だろうが切れるのに、液体に変化した瞬間に切れなかった。つまり力の濃度が濃いという事。いや、ひょっとすると退魔士の力も影響しているのかもしれないな)

「ちゃん・・・じいちゃん、源じいちゃん!」

「あ、ああなんだ想。そんな大声出して」

「なんだじゃないよ。突然ぼーっとしだして、呼んでも返事ないから心配したんじゃないか」

「そうだったのか。すまんすまん。ちょっと考え事していた」

「しっかりしてよもう」

想は安堵の溜息を吐く。

「そう言えば、安倍晴明の件なんだけど」

「考えたのだが、恐らく晴明様の事を知っているのは京都の石田家だろう。戻ったら住所を教えるよ。けど、もう発つつもりか?」

「うん。折角士元さんや皆に仲良くしてもらったのに申し訳ないけどね」

「そうか。よし!なら今日はたくさん美味しいものを食べていけ。そして、やる事が終わったらまた来なさい。その時はゆっくりと好きなだけ泊まると良い」

その言葉に想の目頭は熱くなり、俯きながら一言返す。

「うん」

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