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血を操りしモノ  作者: 長月
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天地源


「想。辛くなったらいつでも連絡してね。絶対無理しちゃダメだよ?」

「あー。そのなんだ。また元気になったら遊ぼうぜ」

「一樹!」

「あはは。いいよ巴。この方が一樹らしい。ありがとう二人とも。また日本に帰って来たら遊ぼうな。

言った通り、甘えを捨てるために携帯は置いて行くから連絡はそっちからは取れない」

卒業式が終わり想は、進学を取り止め父の生まれ故郷に語学留学も兼ねて住むと言った所、心配で家の前まで来てくれた巴と一樹に別れの挨拶をし、少しの雑談の後、家の中に入る。母と祖父の遺品整理をしていた想はシンプルだが不思議と惹かれる指輪を見つけ指に嵌める。掃除を済ませ、荷物をまとめると想は静かに家を出て鍵を閉める。カチャンと施錠の音が鳴り、想の脳裏に様々な思い出が呼び覚まされる。

(・・・母さん。じいちゃん。行ってきます・・・)

ふぅと短く息を吐き振り返ると、巴が立っていた。

「もう行くの?」

「うん。今から親戚の家に挨拶に行ってそれから向こうに出発かな。何か忘れ物か?」

「あのね、想。私・・・ううん。何でもない。ずっと待っているからね。帰って来たら必ず連絡してよ。その時は大事な話があるから・・・」

「大事な話?それなら今聞くよ?」

「今じゃダメ。寂しさで圧し潰されちゃいそうだから・・・だから、その時までのお楽しみ!話はこれだけ、じゃあね想。頑張って来てね!」

「分かった。その時を楽しみにしているよ。ありがとう。巴も頑張って。またな」

耳を赤く染めながら、走り去る巴の後ろ姿に、死ねない理由がまた一つ出来たな。と自分に言い聞かせるように呟く。

数時間後、想は母の実家である天地あまち家に来ていた。

(久々に来たけど、相変わらず大きい家だな。調べたら、東の天地流って呼ばれていて退魔士の中では相当な実力の流派みたいだから当然か)

呼び鈴を鳴らし、出てきた使用人に連れられた部屋に入るとそこには厳めしい顔つきの祖父の天地源が座っていた。

「おお、想。久しぶりだ、大きくなったな。所で、今日はどうした?何やらお願いがあると数日前に電話で言っていたが」

想はこれから自分がしようと思っている事を説明し、修行を付けて欲しいと頭を下げる。

「・・・話は分かった。だが、力とはそんな直ぐに手に入るものでは無い。仮に手に入れたとしてもそれは何年、いや何十年も先になるかもしれないぞ?」

「それでも構わない。きっと俺は狙われ続ける。それなら、何年掛かっても父さんや俺のような奴を生み出さないようにしたい。お願いします!修行を付けてください。どれだけきつくても必ずやり遂げます!」

源は短く息を吐く。

「想。頭を上げなさい。孫に土下座なんてされたら断れないだろ」

その言葉に想は顔を上げる。

「それじゃあ」

「但し、生半可な覚悟では死ぬぞ。それでもやるのか?ここで、我らに守られながら生きていく事も可能だぞ?」

「守られながら生きて、後悔と共に死ぬぐらいなら自分がやれることを精一杯して死にたい。例え、その結果が仇も取れずに死んだとしても、後悔と共に死んでいったとしても、何もせずにただ死ぬよりはましだ」

源は真っすぐに想の目を見返し、ゆっくりと瞬きを一度する。

「そこまでの覚悟ならもう何も言うまい。立て想、先ずはお前の力量を見させてくれ」

立ち上がり、そう言い部屋を出る源の後ろを想は無言で付いて行く。

「ここでしよう」

中庭に付き、門弟達を下がらせる源。数メートル離れた場所に立つ想に向かい合い、源は一言「来い」と告げる。

その言葉に想の瞳の色が反転する。その光景に源を含む周りで見守る門弟達の表情に驚きの色が加わる。想は血操で作った赤い球を源に射出する。源はそれを護符で透明な壁を作る事で防ぐ。想はすかさず剣を作り出し、切りかかる。

「何っ!?」

剣は透明な壁をいとも容易く切り裂き、驚いた源は咄嗟に横に飛び退く。

「臨兵闘者皆陣列在前」

と源は印を結び唱えるが、想は素早く九字を切り対抗する。二人の力がぶつかった瞬間、爆発音が起き二人を包む土煙が晴れると両者の間の地面が横一文字に抉れていた。

「と、当主の力と互角?孫とか言っていたけど、まだ高校生ぐらいだろ?末恐ろしいな」

一人の門弟の言葉に周りの門弟達も息を呑む。

(楓からは基礎を教えたとは聞いていたが、吸血鬼の力が混ざるとこれほどまでの力になるのか。だが、未だ制御は完全には出来ていないようだ)

再び切りかかって来る想。源も再び九字を唱える。次の瞬間、ギンと鈍い音が響き剣は見えない何かに止められる。

「うおぉぉぉぉ!」

想は声を上げ、源諸共両断するが源の姿は揺らめき消えていく。想は後ろに気配を感じ振り向きざまに剣を横薙ぐが、それは空を切り源の体は揺らめく。

「惜しいな」

想の背中に札を貼る源。

「オン」

その言葉に想の意識は断たれ、倒れ込む。

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