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第7話 ギャル美少女識日和に、ついに俺の女装がばれてしまう

 セミロングの茶髪に目鼻立ちの整った顔。

 耳にはハート型のピアスが付いており、どこかギャルっぽい印象を受ける。

 身体測定を受けてからまだ間もないのかブレザーは羽織っておらず、胸元の開いた白のシャツに短いスカートといった乱れた格好をしている。


 彼女の名前は識日和しきひより

 違うクラスだがその存在感の強さ、見た目の美しさからよく覚えている、スクールカースト一軍に属する美少女である。


 俺は唖然としたまま識さんの顔を見た。

 しかし彼女は俺の顔など見ていなかった。


 どこを見ているのだろう?


 俺は視線をたどりぐぐぐと自分の下腹部へと顔を向けた。


 めくれ上がったスカートに男物のボクサーパンツ。

 不可抗力だがもっこりしていたため、言い訳なんてできない。


 ――な!?


 即座にスカートを戻すが、完全に後の祭りだ。


 つかスカートでベッドに入るとこうなるなんて知らなかったし!


 ばれたか?

 ばれたのか!?


 俺は恐る恐る、もう一度識さんの顔を見た。


 目が合った。

 目が合うと同時に識さんはまるでごみを見るような表情を浮かべた。


「え? 男? つかのぞき?」


 首を横に振り答える。


「は? じゃあなに?」


 識さんはカーテンを閉めると、ベッドに艶かしい脚を乗せ、ぐっと身を乗り出してきた。


 顔が近い。

 かなり近い。

 あとその大きなお胸が腕の辺りに当たっているような気がしないでもないんですが……。


 どぎまぎしまくる俺の気持ちなどいざ知らずといった体で、識さんが何かに気付いたような声を上げた。


「あれ? あんたって三組の人だよね? 確か……夏木」


 ばれたー…………。


 頭が真っ白になる。

 全身から体温が抜け落ちる。

 絶望感から、口の中が一気に乾く。


 自分では見えないためはっきりとは言えないが、多分顔も蒼白に染まってしまっているのだろう。

 ていうか今後のことを考えると、普通に吐き気がしてくるんですが……。


 とにかく説得しなければ。


 俺はスマホを取り出すと、弁明のための文章を打った。


『識さん! 信じてくれ! 俺は無実だ!』


「何この犯人が言いそうなセリフ」


 うう……確かに。


 即座に次の文を打つ。


『本当にのぞくつもりはなかったんだ! ただ色々不運が重なって、りりこ先生に無理やり保健室に連れてこられたっていうか……。しかものぞくつもりで侵入したなら、そもそもこんな所に隠れたりしないだろ?』


「いや、そんなの信じられるわけないっしょ?」


 信じられるわけないって言われても、全部本当のことだから……。


「それになんで女装だし。色々無理があるっしょ」


 それは……。


 考えあぐねる俺に業を煮やしたのか、識さんがカーテンへと手を伸ばした。

 まるで時間切れとでも言うかのごとく。


 ――ちょっ、ちょっと待ってえええぇぇぇええぇぇー!!


 すかさず識さんの手を取る。

 そして同様にすかさず次の文章を打ち込む。


 もうなりふり構ってはいられない!

 全てをさらけ出すんだ!

 信じてもらうためには、こちらにとって不利な情報を、余すことなくぶちまけるしかない!


『事情は全て話す! 誰かに報告するかどうかは、その後決めてくれないか!?』


「…………」


 腕を組んだ識さんが、冷めた眼差しで俺を見る。


 無言を『了』と受け取った俺は、昨日の一華とのやり取りから現在に至るまでのあらかた全てを、一つひとつ説明していった。

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