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第4話 りりこ先生は、どうしても私(俺)を、保健室へと連れていきたいみたいだ

 女子生徒をかき分け、ゆっくり昇降口へと歩を進める俺。

 周囲の「あれ?」なんて視線は関係ない。

 とにかく保健室にいってはいけないのだ。

 だって、だってそれって、女子身体測定への侵入、及びのぞきになってしまうのだから。

 停学どころの騒ぎじゃない。

 退学だ!

 社会的死亡だ!


 しかし逆流するというのはさすがに目立つな……。


 少しでもことを荒立てない方がいいだろうと考えた俺は、忍び足で壁際へと移動、壁と人との間にできるわずかなスペースを昇降口へと向かい移動することにした。


 だが、これがいけなかった。

 いつも通りズボンと同じ感覚で歩いてしまったものだから、壁の出っ張りにスカートを引っかけてしまったのだ。


 めくれ上がったスカートに、思わず俺は「ひゃっ」というキモ情けない声を上げてしまう。


 一瞬、周囲の視線が俺に集まった……ような気がした。


 とっさにスカートを両手で押さえたが、幸いにも見えるまではめくれ上がらなかったようだ。

 ただ見られていたら非常にまずかったというのは言うまでもない。

 さすがの俺も、女装だからといって女物のパンツを身に着けるまではできなかったから。


 けほけほ咳をしごまかすと、俺は引っかかったスカートへと手を伸ばした。


「チッ」


 チッ? 舌打ち?


 顔を上げると、見るからにヤンキーな女子と目が合った。

 同じクラスのなんとかさんだ。

 あまり接点がないため名前は覚えていない。


 彼女は眉間にしわを寄せ、先ほどからかがんだ俺を真上から見下ろしている。


 えーと……何だろう?


 小首を傾げ、俺は聞く。


「どけよ。つか邪魔」


 あーそういうことね。


 俺は手早くスカートをほどくと、さらに壁際へと寄り道を開けた。


「どんくさ」


 過ぎ去り際に、彼女は捨て台詞を吐いた。


「つかキモ」と。


 むむむむむ……。

 あの子ちょっと教室での態度と違いすぎやしませんか。

 確か今日だってクラスの男子ときゃぴきゃぴした声で話してたよね。

 これってあれか?

 女子は男子の前では性格を使い分けるっていう、暗黒面か?

 俺はパンドラの箱を垣間見てしまったのか!?


 ……まあいい。


 頭を振り失望の念を振り払うと、俺は帰宅するため再び歩き出した。


「小笠原さん、一体どこにいくんですか?」


 肩を握られる強い感触と、背後から響く女性の声。――先ほどまで試験監督を務めていた俺のクラスの担任教師、りりこ先生だ。


「保健室はそっちじゃないですよ」


 全く、次から次へと……。

 もうほんと勘弁してください!


「どうしたんですか? さあ早くいきましょう」


 とはいうもののなんとかせねば……。

 そうだ、体調が悪いということにしよう。


 俺はとりあえずけほけほ咳をし様子をうかがってみることに。

 しかし思うように伝わらない。

 りりこ先生は首を傾げ、俺が何か言うのを待っている。


 仕方がない。


 俺はスマホを取り出すと、文章を打ちりりこ先生に見せた。


『風邪で喉が潰れて話せません。体調も悪いし、今日のところは帰宅してもいいですか?』


「体調が悪いんですか?」


 強く頷く。

 ついでに咳もする。


「まあ大変!」


 んん?


「じゃあなおのこと保健室にいかないと」


 んんん!?


 汗が吹き出す。

 焦りから顔色が悪くなる。


「顔色悪いし凄い汗よ。途中で倒れるといけないし、先生本当に心配だから、私が責任を持って保健室まで連れていきますねっ」


 がしっと俺の腕をつかむと、りりこ先生は保健室へと向かい歩き出した。


 に、逃げれねえええぇぇぇええぇぇー!

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