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第26話 幼馴染の制服をくんかくんかしたら、本気でキモがられて、案の定変態扱いされてしまう

 放課後の誰もいなくなった教室にて、俺と識(しき)さんは一華(いちか)が着替えから戻ってくるのを待っていた。


「ねえ、ほんとにするの? 女装」


 机の上に直に腰を下ろした識さんが、外の風景を見つめながら言った。


「ああ、するよ」


「キモ」


「しょうがねーだろ。今回ばかりは、下手したら命にかかわるかもだし」


「まあ、そうだけどさ……」


 不機嫌そうな顔で頭をかく。


「つか私、あんまりあんたに小笠原(おがさわら)さんの格好してほしくないんだけど」


「え? 何で?」


「それは……だって……」


「だって?」


「……分かってるっしょ?」


 照れくさそうに視線を逸らした識さんが、声の調子を落とし言った。


 そんなこと、今言われましても……。


 口を閉ざす俺。


 教室内には、遠くから聞こえてくる吹奏楽部のチューニングの音と、識さんの衣擦れの音だけが響いている。


 間が持たねえええぇぇぇー!


 そんな心の叫びを聞き届けてくれたのが、折よく戻ってきた一華であった。


「お、おまたせ」


 とたとたとこちらにやってくると、一華は今脱いだばかりの制服と黒の長いウィッグを俺に差し出す。

 一華自身は体操着に着替えている。


 つか学校にウィッグを持ってきている時点で、初めからおとり作戦前提だったってことですよね?


 受け取ると俺は、綺麗に折りたたまれた一華の制服に目を落とし、素直に思ったことを口にした。


「なんか、まだ生温かいな……。お、一華の匂いがするぞ」


 くんかくんか。


「キモい!!」


 すると一華は顔を真っ赤にし、俺に対し掌打を繰り出してきた。


「キモい! ヘンタイ! キモい!」


「京矢(きょうや)さー……」


 識さんが、まるでごみを見るような目で言った。


「今のはさすがにないわー」


 いやっ! 男子高校生のデフォルトですよ!

 本人の前でやるかわ知らんけど、機会があったら絶対に皆やりますよ!


「まあとにかく」


 こほんこほんと咳を入れ仕切り直すと、俺は二人に言った。


「俺は着替えてくるから、一華と識さんは先に帰ってくれ」


「え、うちらはうちらで京矢の後を追おうと思ってたんだけど。なんかあるとまずいし」


「いや、でも、俺が見える範囲を追うのは、ちょっと危ない気がするし。裏門からこっそり帰るか、せめてどこかで待機にしてくれないか?」


「うーん……じゃあ」


 少し考えてから、識さんが答える。


「うちらはどこかで時間潰してるから、なんかあったらすぐに連絡で」


 頷くと俺は、そのまま教室を出て、着替えるためにもある場所へと歩を進めた。

 ――そう、女子トイレへと。

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