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第23話 彼女からの電話により、終わりを、そして同時に終わりの始まりを、不本意にも告げられることになる

 このようにして、

 俺と識さんの偽りの関係は、

 数日のうちに幕を閉じた――――かに見えたが、どうやらまだ閉じていなかったようだ。


 それは一本の電話から始まった。


 時はその日の夜、相手は識さんから――


『もしもし、京矢?』


「あ、識さん。どうしたの? こんな夜に」


『今日はごめんね。帰り一緒に帰れなくて』


「ああ、別にいいけど」


『実は放課後、バスケ部の皆と話したんだ。たけしも交えて。で、これからも変わらず仲よくやっていこうってことで話がまとまった』


「そうだったんだ。よかったじゃん。これでようやく全部丸く収まったわけだ」


『うん……まーね』


 どこか様子がおかしい。

 まだ何か気になることでもあるのだろうか。


 俺はスマホを逆の手に持ち替えると、気遣うように聞いた。


「え? どうしたの? まだなんかあった?」


『ちょっと京矢に聞きたいことあるんだけど、いい?』


「もちろん」


『京矢が小笠原おがさわらさんのそばにいるのって、小笠原さんが京矢のせいでいじめられたってのもあるけど、要はコミュ症で友達ができなくて、放っておけないからだよね?』


「ああ、まあ、そんな感じだけど」


 どうしてここで一華の話題が出てくるんだ?

 話が全然見えない。


 俺はスマホを握り締め、耳を澄ます。


『だったら私も、小笠原さんに友達ができるよう協力すればいいわけだ』


「それはそうだし、俺としても嬉しい限りだけど……どうして識さんが?」


『そりゃーだって』


 何かを考えるように一拍置いてから、識さんは言った。


『小笠原さんに友達ができれば』


 できれば?


『京矢が一緒にいる必要なくなるじゃん?』


 お、おう。


『京矢が小笠原さんと一緒にいる必要がなくなれば』


 なくなれば?


『うちらが付き合っても問題ないじゃん!』


 問題ないー……っておいっ!


「ちょっ、識さん、一体何を……」


『あの約束、まだ有効だから』


「約束? 有効? え? え!?」


『期間限定とは言ったけど、いつからいつまでとは、私言ってないよね?』


 俺に向かってちらちらスマホを振る、識さんの姿が目に浮かんだ。

 保健室で撮った写真ばらされたくないっしょ? とでも言いたげな、からかうような識さんの姿が。


『小笠原さんに友達ができるまでは待ってあげるから。じゃあそういうことだから』


 電話が切れた。

 ぷーぷーという冷たい電子音が、受話口の向こうから聞こえた。


 もしかしたら俺は……とんでもない勘違いをしていたのかもしれない。


 俺は識さんのあの告白を、山田先輩を諦めさせるための作戦の延長だと思った。

 アドリブを効かせた、状況に柔軟に対応した、演技であると思った。


 もしもそれが全て間違いだったなら……。


 言葉通りの意味だったなら……。


 識さんは…………。


 何はともあれ、一華を自立させるための頼もしい仲間? が、新たに加わった。

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