第22話 陰キャの幼馴染に「京矢はずっと、私の面倒見るんだもん!」と言われてしまう、とある放課後
「おい京矢、聞いたぞ」
下校時、下駄箱にて純が俺に話しかけてきた。
すぐそばに一華もいたのだが、やはりというかなんと言うか、瞬時にコミュ症対人バリアを展開、服の袖をつかむと俺の背後に隠れた。
「昼ん時、識さんとなんか色々あったらしいな。上級生が教室に乗り込んできて、修羅場になったとか」
「ああ、まあ、ちょっとな」
「そんでもって、最終的には識さんの大胆な公開告白でなんとか事態が収まったとか」
「いや、あれは……」
純の話す内容は大体においてあっている。
だが中身が違う。
識さんの言動の意味、行動の意味は、皆が思っているような甘いものではない。
俺は打ち明けたい気持ちをぐっとこらえ、苦笑いで応じた。
「あー俺も見たかったなー。昼休みに職員室呼び出すとかって、マジでりりこ先生空気読めないわー」
「…………もん」
俺の背後で、一華が何かを言った。
「……ち、ちが、違う……もん」
「え? ん? 何が?」
純が一華の顔をのぞき込み聞く。
「京矢と識さん……つ、付き合ってないもん。恋人同士じゃないもん」
「え? そうなん?」
「そう。……京矢はずっと、ずっとずっと、私の面倒見るんだもん。また言うこと聞いてもらうんだもん」
また言うこと聞いてもらうって、まさか女装じゃないだろうな……。
それだけは勘弁してくれよ! マジで!
「で、京矢の気持ちはどうなんだ?」
微苦笑を浮かべた純が、俺へと顔を向け言った。
「どうって?」
「なんつーかその、識さんと付き合うのか?」
袖を握る、一華の手に力がこもる。
「いや、付き合わないよ」
答えると同時に、一華の手から力が抜けた。
すーっと、緊張がほぐれるように。
「識さんには、俺なんかよりもっといい男がいると思うし」
――つか識さんのあの告白は偽りだし。
「マジで!? もったいねー。つか京矢自己評価低すぎ。お前そんなに悪くないぞ。まあ、背はちょっと低いけど」
「それが一番のネックだっつーの!」