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第13話 スクールカースト一軍の陽キャ共は、どうしてこれほどまでにボディタッチが多いのだろうか

「じゃあ恋人同士っぽい会話をしたところで……」


 一歩二歩と踏み出すと、識さんは体を反転、俺の正面にこちらを向いて立った。

 そしておもむろに腕を伸ばすと、開いた手を俺に向けた。


「ん」


「んって何? まさかお金がほしいのか!?」


「違うし! それじゃあまるで私が体を売ってるみたいじゃん!」


 違うのか。よかった。

 じゃあ一体何だ?

 ……まさか!?


「ひざまずいてキスをしろと!? 忠誠を誓うみたいに!」


「手をつなぐの! つか分かれしそのくらい……」


 ああ手か、手をつなぐのか……って、え!?

 ちょっと待て。俺は今まで女の子と手をつないだことなんてないぞ。

 たまに一華がつないでくるけど、あれは指先で俺の袖をちょこんとつまむ程度だし。

 つかよく考えたら別に本当の恋人じゃないんだし、そこまでする必要はないだろ!


 俺は思ったことをそのまま口にした。


「別に本当の恋人じゃないんだし、手をつなぐまではしなくてもよくないか?」


 すると識さんが、呆れたような顔をして言った。


「京矢ー、あんたまさかびびってる?」


「び、びびび、びびってねーし」


「それにここは一応街中だよ? クラスメイトに遭遇しても全然おかしくないし。そんな時に手をつないでなかったら怪しまれるじゃん? 本当に付き合ってるのかよって」


 そ、そうかなあああぁぁぁああぁぁー??


 心の中で首を傾げる。

 折れそうになるぐらいに。


「ほれほれ早く」


 手をひらひらさせる識さん。


「こういうのは男の子からっしょ?」


「わ、分かったよ」


 俺はそっと、識さんの手を取った。

 すると――


「違うっしょ?」


「え?」


「手をつなぐ時は、こうっ」


 手を振りほどくと、識さんは一本一本指を絡めるように、指の間に彼女の指を挿入するように、つなぎ直した。


 ――こ、これは!

 俗に言う『恋人つなぎ』ではないか!

 本当に存在したんだな……この世に。


 つか何これ? マジでやばい!

 ただ普通に手をつなぐ時よりも、絡み合ってる感がはんぱねえ!

 交わっている!

 俺は今交わっている!

 あと手が汗でべったべた!


「じゃあいこっか。向こうに見えるファミレスでいいよね?」


「お、おう」


「ちょっと、早くしてよ」


「お、おう」


 緊張のあまり、思考が上手く働かない。


 今からどこにいくんだっけ?

 何をするんだっけ?


 ぐるんぐるんと、頭の中がパニック状態に陥る。


 突然呆けた俺が心配になったのか、識さんぐっと顔を近づけてきた。


「京矢、あんた大丈夫?」


 間近に迫る可愛らしい顔。

 そしてそのまま髪をかき上げ――


「熱でもあるんじゃない?」


 おでこを俺のおでこに引っ付けた。


 ――!?


「うーん……熱はないっぽいかな?」


 ちっか! あと肌さらっさら!

 つか手をつないだままこんなことされたら、べたべた通り越してぐっちょぐちょなんすけど! 手汗が!


「え? 何? ……まさかあんた」


 顔を離した識さんが、にやにやしながら言う。


「照れてんの?」


「て、ててて、照れてねーし!」


「ふーん」


 胡乱な眼差し。


「大丈夫なら、早くいこ」


「お、おうよ」


 全く、どうして一軍リア充はこんなにもボディタッチが多いんだか……。しかも極自然に。

 もう少しで本当に意識してしまうところだったじゃねーか。


 歩き出すと俺は、心の中で唱えた。

 何度も何度も唱えた。

 意思を強く持つための言葉を。


 ――この恋愛は振りだ、この恋愛は偽りだ。この恋愛は振りだ、この恋愛は偽りだ。この恋愛は振りだ、この恋愛は偽りだー……だー…………だー………………だー……………………。

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