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君は世にも奇妙な婚約者  作者: 向日ぽど
オルフェンの塔<前編>
78/172

予選

 イェナと雑談している間に、予選は始まった。

 イウリスのチームはVIPルームから一番見えやすい位置で戦っている。モニターもあると言ってもらえたが、肉眼で見ておきたいのがファン心理。目を見開いてガラスにへばりつきながら応援する。


 イェナとアロは優雅にソファに腰掛けてワイングラスを傾けているが、私は今それどころではない。

「きゃあー!!セリス様!!カッコ良すぎる!!」

「……ねえ」


「あ!!あいつセリス様の綺麗な顔にあんな傷……っ」

「ちょっと」


「治癒しにいかねばっ」

「行かせないけど」

 そう、なんて言ったって、今!私の永遠の王子、セリスの絶賛応援中だ。


 頬に傷を負ったセリスの治療を申し出ようと駆け出したけれど、イェナに首根っこを掴まれてお縄となった。

「……やっぱりセリスってナツが言ってたやつだったんだ」

 イェナが立ち上がって私の隣に来ると、同じように彼らを見下ろす。

「そうです!私のイチ推し!!好きすぎる……!」

「……」

 イェナの方を見ずにただただうっとりしていると、彼がぐいぐいと私の方へ体重をかけてくる。

「尊い……本当に好きだ……」

 それにも気付かず、セリスに夢中になっている私。


「なんであんなにかっこいいの……どうしてあんなにスマートなの……」

「……なっちゃん?」

「はい?」

 アロがソファから立ち上がって私の肩をポンとたたく。ペンダントの力で電気が走って「んふ♡」と何故か興奮していたサイコパスは無視。

「その辺りでやめておいた方がいいんじゃない?」

「え?」

「イェナがブチ切れてそのイチ推しの男のコを殺しちゃう前に?」

「え"」

 そこで初めてイェナの方を向くと、眉間にシワを寄せて殺気まじりの眼光でじっとセリスを見下ろしている。まさか、と思ったけれど真実味のあるアロの言葉に冷や汗がだらだら流れた。


「だめですからね!?セリスに傷ひとつつけたら、ほんっとうに嫌いになりますから!!」

 バンバンと勢いよくガラスを叩く。イェナが私の手を取って「危ないよ」と不機嫌ながら制止した。

「それにご心配なく!セリスは私の推しであって、理想の王子様ですけど!それはただの憧れです!私がお仕えしているのも、大好きなのもイェナ様だけですから!」

「……そう」

 私がものすごい剣幕で詰め寄れば、イェナはとてもとても不満そうにしていたけれどとりあえずセリスを殺しに行きそうな怒気は薄らいでいた。


 するとまたサイコパスがニヤニヤと笑っている。

「じゃあもしセリスに口説かれたらどうするんだい?」

「ぴぇっ」

 ……正直に言おう、考えたことがないわけではない。この世界に来て、もしも主人公パーティーとお近づきになれたのなら。セリスとお付き合いできる未来もあったのではないかと。


 イェナの恋人になった今では以前ほどの情熱はないけれど。

「そんな恐れ多い……!」

「想像するくらいバチは当たらないよ」

「いやでも……」


 もしもセリスに口説かれたなら?

 そんな夢のようなことがあったなら──。


「どうする?」

「ワンナイトラブは可能ですか」

「は?」

「くくく…っ。面白いねぇ、なっちゃん」

 今日イチで不機嫌そうなイェナ。ごめんね。そんな魅力的な誘い、考えただけで胸が躍るに決まっている。

 ……と言っても、実際にそんなことがあってもきっと私はイェナを選ぶ気がするけれど。本人には言ってあげない。嫉妬する姿もキュンとするから。


「へぇ、ナツは他の男に抱かれにいくんだ」

 トーンの落ちた拗ねた声。怒ってる怒ってる……。

「じゃあボクはどうだい?」

「アロ様は顔は申し分ないのでその性格を改めてください」

 アロの言葉を軽く流すが、冗談が通じないイェナがまた難しい顔でこちらを覗き込む。付き合いは長いくせに、アロの扱い方は学ばないらしい。

「なに、顔が良ければ誰でもいいのナツは」

「アロ様のは冗談ですよっ」

「セリスのは?」

「……」

「あいつ殺す」

「絶対ダメですって!!」

 メラメラと何故か打倒セリスに燃えているイェナ。私はそんなあなたに萌えていますが。セリスが殺されることだけは許さないぞ。


「でもなっちゃん、イェナが最初じゃなくていいのかい?」

「最初……?別に私、ハジメテじゃないので」

「あら……」

「誰。殺す」

「落ち着いてくださいっ!!」

「今のはなっちゃんが悪いでしょ」

「なんでですか!?」


 どうかセリスが無事で大会が終わりますようにと願いながら、原作の禍々しい雰囲気など一切ないこの空間にいられる喜びを噛みしめた。




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