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首輪


「──それで?」

「え?」

 足を組みなおしてイェナが机の上のティーカップに口を付けた。 


「それがオレに“嫌われるかもしれないこと”?」

 拍子抜けだと言わんばかりのその顔に、呆気にとられる。

「え……気持ち悪くないんですか」

「何が?」

 頬杖をついて、私を見下ろすその瞳は──私が異世界から来たことなんて、これっぽっちも気にしていない、“興味のない”もの。肩の力が抜けた気がした。


「じゃあキミは、漫画の世界のオレたちのこと、気持ち悪いと思ってるの?」

「そんなわけないじゃないですか!」

「……ほらね」

 ──ああ、この人が“普通”じゃなくてよかった。

「一緒だろ、みんな」


 “普通”ならもっと気味悪がって

 “普通”ならもっと同情して

 “普通”ならもっと探りたがって

 “普通”ならそんな──“だから何?”なんて顔、しないのだから。


「……ふふ、イェナ様を好きになってよかった」

 思わず笑えばイェナはきょとんとする。「何笑ってるの」と頬を摘ままれて、また可笑しくて笑った。



 イェナとそんな風にじゃれていると──こほん、と咳払いが聞こえる。フランがこちらを微笑ましそうに見ているから何だか照れ臭くなった。


「──では"異世界転移"について私が知っていることをお教えします。結論から言うと異世界へ導く方法は、あります」

 ごくりと私の喉が鳴った。思わず前のめりになってフランの言葉を一言一句聞き逃さないようにする。

「もちろん誰にでもできることではありません。そういった術を使う者がいると噂で聞いたことがあります。可能性は2つ。誰かが意図的にナツさんを転送させた。もしくは何かの拍子にナツさんが転移の発動条件を満たしてしまった」


 ピンと伸ばされたフランの二本の指。その指とフランの顔を交互に見た。


「前者ならその“誰か”を見つけ出せば帰る方法が分かるでしょう。後者ならまた同じ発動条件を満たせば戻るかもしれません」

 フランの言葉で、この世界へ来る直前の自分の行動を思い返す。

「……うたた寝をしていたくらいで、特に変わったことはしていないはずです」

 フランも横にいるイェナも顎に手を当てて考え込む。


「発動条件に心当たりがないなら──ナツの意識してない行動で発動したかもしれないってことか」

「気候、湿度、温度、日付、時間、季節……様々な要因がピッタリと合わさったその拍子に発動していたのかもしれません。あなたの行動で左右されたのではないとすると、その要因の特定が難しくなりますね」


 肩を落とした私にフランは慌てて「また何かの拍子に戻る可能性もありますけどね」と付け足した。

 三人で「うーん」と頭を悩ませていると──ふと、イェナがこちらをじっと見つめていた。


「……ねえナツ」

「はい?」

「首輪つける?」

「は?」

 何気なく出された物騒な言葉に、目を点にする。フランも驚いていたがすぐにその意図を汲み取ったのかクスクスと笑った。

「そしたら何かの拍子に飛ばされても俺が引っ張って止めるし」

「それはお断りします……」

 やはりイェナ。解決策が常軌を逸している。どこに自分の婚約者に首輪を着ける男がいるのか。

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