情報屋②
私の用件が終わり、ふとフランが私の顔をじっと見つめて不思議そうにしているのに気づく。ぱっとまた目を合わせると、探るように彼が言った。
「……あなたは、随分──」
ああ、言いたいことはすぐに分かった。
「……激弱ですよ、お察しの通り」
マヴロス家に不釣り合いな私のオーラとやらを感じ取ったのだろう。彼の疑問を先に答えてしまうと、ふにゃりと笑った。その顔は酷く優しくて、この人に拾われるのもよかったかもしれない──とまで思ってしまった。
「はは、言われ慣れてるようですね」
「……自覚もしてます」
口を尖らせればまた彼はクスリと笑う。この世界で出会った人を初見で“怖くない”と感じたのは初めてだったかもしれない。
「私も戦闘には向いていませんので、あなたとは気が合いそうですね」
「でも私よりはお強いのでは?」
まるでフォローするかのように付け足した言葉は特に有難くもないけれど、その人の優しさは身に染みる。納得のいっていない私を見てフランは苦笑した。
「……私は血を見るのが苦手で──」
情けない、と言いたげに自嘲した彼。それを聞いて私は目を丸くする。
私もです、と言いかけたところで──。
「──何話してるの」
私の主が登場した。随分と盛り上がっていた私たちを見て怪訝そうな顔をする。
「……フラン様に個人的に依頼をしました。また詳しいことをお話しするため改めてフラン様の事務所に行く予定です」
外出の許可も必要であるからザッと要点だけ伝えるが、イェナは難しい顔をした。
「……オレも行く」
「え、でも……」
「聞かれたくないことなら外で待ってる。道中に何かあったらどうするの」
話の内容が知りたいとか、他の男性のところに行くのが気に入らないだとか、そういった動機ではなく──ただ単純に私の心配をしてくれている。さっきまでフランにときめいていた心が一気にイェナへと向かった。
そんな彼の姿を見て、フランは口を開けて驚いていた。
「……驚きました。いつもイェナは事務所に来るのが面倒だと言い張るのに……ナツさんのためなら“面倒なこと”も、そうではなくなってしまうのですね」
ただのメイドではなさそうだ、と言ったフランに、イェナはいつもの調子で婚約者であることを告げた。するとイェナの言動も納得がいったらしい。




