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グラマラスボディに敗北

「……なんでナツがここに?」

 それは単純な疑問文だったけれど、普段よりも低い声が私を詰問しているようだ。

「……アロ様に頼まれまして」

 必死に隣で胸躍らせる男に責任を擦り付けようとするが、庇ってくれる気はないらしい。

「頼まれたら何でもするの、君は」

「それは……その……」

 もごもごと歯切れの悪い私に怪訝そうな顔をするイェナ。今日は感情が露骨に出ていらっしゃる。


「……イェナ様の正装姿が見たかったんです」

「馬鹿なの?」

 正直に明かした不純な動機もバッサリと切り捨てられてしまった。


 私を責め立てる視線は緩まなくて泣きそうになっていると、アロがやっとのことで助け舟を出してくれる。

「パートナーが必要だってキミが言ったんじゃないか」

「ふざけてるの?」

 イェナの攻撃対象が私からアロへと移ったことにホッとしていると、このサイコパスは私の腰に手を添えて余計なことを言い始めた。


「ほらナツ、イチャイチャしなきゃ。カップルの設定なんだから」

「は?」

 イェナの機嫌が底辺まで落ちていくのが手に取るようにわかる。きっとそれはアロも同じはず。楽しんでいるのだ、この男は。

 イェナもいつものように殺気で威嚇しようとするが、場所が場所であるため迂闊に目立つようなことはできないのだろう。イェナはアロを睨みつけ、アロは愉快そうに笑う。その間で白目を剥きかけていると──。

「イェナ!」と高い声が私の主を呼んで、ヒールの音が小刻みにこちらに近付いてくる。


「……ホラ、キミのパートナーのお出ましだよ」

 アロが今度は私を興味深げに見遣る。イェナの隣に立ったのは真っ赤なドレスを着こなすセクシーな金髪美女だった。あまりの美しさに見惚れていると、その女性がにっこりと笑った。

「こんばんは。あなたがアロのパートナー?」

「そうだよ。可愛いだろ?」

 私が返事をするまでもなく、アロが答える。「そうね」と私を見たミルの目が小馬鹿にしていたのは見逃さなかった。所詮日本人体型の私がグラマラスボディに適う訳もない。悔しいという感情も湧き上がらないほど完敗だ。


「私はミル。イェナのパートナーよ」

「……はぁ」

 私の気の抜けた返事に気分を害したのか目を細めたあと、彼女はイェナに満面の笑みを向けて「行きましょ」と促す。見るからに、イェナに対する態度が違う。アロが面白そうにしている理由が分かった。あのサイコパスがお望みなのは三角関係に発展した修羅場なのだろう。私がミルに嫉妬すると思っているのだろうか。今のところは勝てる要素がないため嫉妬する気も起こらない。


「……アロ、分かってるよね?」

 ミルに急かされ、イェナが不機嫌さを隠しもしないまま会場内へと足を向ける。そして一度振り返ってアロを見据えると、釘をさす様に言い放った。

「……何がだい?」

「君が連れてきたんだから最後まで責任持ってよね」

「もちろん」

 主の目線が一点に向けられている。その視線の先を辿ると……未だ離されていなかった私の腰に添えられたアロの手。


 舌打ちでもしそうな顔のまま、再びミルに呼ばれ──光を放つパーティー会場へと歩いて行った


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