犯罪と恨み
重いなまた内容が。
ゴッ、と鈍い音を立ててバットが当たる。キィィィと耳鳴りがしている。痛いという感情はもうない。ただ悲しい。その対象は相手じゃなく他人でもなく自分自身への悲しみ。この現状を打破できる力もない、勇気もない自分の所為。何もかも自分が悪い。目の前が霞む。同時に吐き気が襲ってきた。まだ彼らは僕への攻撃を続ける。その顔にはもはや狂気すら感じる笑みを浮かべて。前が真っ暗になった。ああ、こんなことになったのはいつからだろう。あれは確か入学式だったか。僕はなるべく目立たないように努めていた。自己紹介だって、周りに隠れてそそくさと進めたさ。みんなが緊張と期待を混ぜ合わせたようなムードの中だ。たった一人やってなくてもバレないだろう、という己の愚かな考えがこんな状況を生み出す原因だったのかもしれない。その日は特に何もなかった。次の日に登校すると、僕の方がなかった。まあいいかと思ってその日は靴を履かないで過ごした。周りからは変な奴だと思われた。「大丈夫?」と声をかけるだけの偽善者もいた。全て無視し続けた。その次の日から本格的に始まった。最初は階段から落とされるぐらいの可愛いものだったのに、エスカレートしていった。今では野球部から借りてきたであろう古い金属バットで僕を殴る。ハッと唐突に目が覚めた。保健室だった。そこには先生もいなく、ただ僕の荷物が机の上に置かれてあった。時計を見ると5時ちょっと前ぐらいだ。外は少し暗くなり始めている。学校を出てからは何も考えずに家に帰った。家では特に会話もせずに部屋に引きこもる。部屋でもやることがないのでただ寝ている。次の日は昨日殴られたのが祟ったのか頭が痛く、意識も朦朧としていた。流石に気づいた教師が保健室へ連れていった。保健室の先生は女の先生で優しかった。保健室では会話は少なかったものの、僕に話しかけてくれた。あるとき、意を決したように先生が言った。あなた、いじめられてるでしょ。その言葉に僕は動揺もせずに言った。「はい。ですが先生は手出ししないでください。あと一ヶ月で卒業ですし。」「そ、そう、分かったわ。」それから母が迎えにきてくれた。帰り道でも喋らなかった。それから卒業式を迎えた。でも、安心はできなかった。いじめっ子と高校が同じだった。高校からはやられる僕じゃない。入学式から仕掛けに行った。彼らを呼び出した。体育館裏という、下手なスポットに呼び出したことであちらも警戒していた。僕はフレンドリーに話しかけた。「もう高校生だしさ、いじめないでくれない?」彼らはなんだそんなことかと安堵した様子だった。「いやだよ。辞めるわけねーだろ。」それを聞いた僕はフッと微笑んだ。「は?なんだお前、狂ったか?」と奴らがいう。気にせずに近寄っていく。やつらは少したじろいでいる「なんだよ!やんのか!?」それでも無言で近づく。目の前にきた瞬間、僕は瞬時にポケットに手を入れ、小型ナイフを取り出した。そして、いじめの主犯格を目がけて思い切り突き刺した。血が飛び散る。他に直接伝わる感触が生々しくて、それでも何回も突き刺した。他の奴らはとっくに逃げ出していた。密かに持ってきたバットで滅多打ちにした。ゴスッゴスッと鈍い音を立てて殴る。快感だ!気持ちいい!人を殴るのってなんで楽しくて面白いんだ!!笑みがこぼれる。顔面は血まみれだ。ふぅと一息ついた僕はナイフとバットを置いて校内へ戻ろうとしたが、やってきた奴らの仲間と先生に羽交い締めにされた。そのまま警察へ連れていかれた。道中では何回もあの感触を思い出していた。気持ちが高ぶっていた。ああ!こいつらも殺してやりたい!そう思っていたが、警察署へ着いた。そこで取り調べを受けた。聞かれたことは主に動機についてだった。僕はあったことをそのまま伝えた。半信半疑だったが、別にいい。そこからは少年院に入れられて、長い年月を過ごした。僕はもう二十歳。少年院を明日出る。あと二人の顔もよく覚えてる。主犯格とその他。奴らへの恨みは消えない。次は警察のお世話にならないように完全犯罪にしてやる。待ってろよ。
次は明るいの書く。