闘魂
クリスはナイフとボウガンを構え熊と対峙する。
クリス「時間が無い」
そう呟いた瞬間飛び出すクリスに対し熊も突撃する
挙動を見せた瞬間右手に持ったボウガンの矢が
熊の左前足に刺さる、痛みに下を一瞬見た。
その瞬間右前足にさらにボウガンの矢が刺さった。
勢いを殺された熊がクリスを見た瞬間
一切止まる事なく駆けたクリスは熊から見て既に
真横を通り過ぎる状態だった。
そしてボウガンを構えながら土台にした左手の
サバイバルナイフは熊の首にめり込み厚い脂肪を
裂き急所の動脈を的確に切り裂いていた。
クリス「時間が無ぇ……って言ったろ」
振り向く事なく呟いたクリスの足はすぐ様バイクへ
と駆けていた。
後方から熊の倒れる音がする……
しかし彼は一切興味が無い、バイクを起こし
すぐ様エンジンをかける
『キュルキュル……』
クリス「頼む!掛かってくれ!」
神に祈る様に……
『キュ……』
現実は甘くなかった、心から叫ぶクリスの願いは
破棄された様に静かに鉄の塊と化すバイク
感情に任せバイクを叩く
「クソ!何でだ!」
願う様に見た空は既に夕方に差し掛かろうとして
いた。
「……時間まで敵か」
目を閉じて願うのを止めた。
(また大事なもの失うのか……もう全てが敵だらけ
じゃねぇか……)
そして深く深呼吸をし心を深く沈めた。
「……もう諦めるしか無いのか、現実がそんな甘い
モノでは無いのは解ってる、あぁ今でもそれは
変わらねぇもんな……」
「……」
(……まだだハク、誠はきっと生きてる
そして周りはそう敵だら……け?)
「……」
(ハハッ敵だらけ?味方?いるじゃねぇか!
誠!ハク!奴等が俺の事どう思ってるかしらねぇが
俺は……俺にとっては味方だ、何があっても味方
なんだ、クソ現実がなんだ!それがどうした!)
(なら俺のすべき事は……一つだ)
(これからどんな敵が出て来ようが運命か?
時間か?暗闇か?人か?熊か?ゾンビか?
そんなものどうだっていい!今俺がやるべき事は)
静かな時に身を任せクリスの目は静かにまるで氷の
様に冷たく冷静な目に変わって行く。
(守る為に冷静になれ……冷静の中に奴らの様な
赤を宿せ!)
思った瞬間クリスは駆け出した、バイクの
置く場所まで駆ける、遠いが総合時間は
その方が早いと判断したからだ。
通常ならもう駄目だろう、今更行った所で……等と
悪魔のささやきの様な葛藤は息が切れる苦しさと
共にやってくる、そしてそれは知らず知らずの内に
時間や体力を消費し現実となって行く。
が彼の『その時』は既に終わったのだ。
もう彼は目的を見失わない
だが再び運命が邪魔をする……
時間が其れを応援するかの様に……
熊が再び現れたのだった。
バイクがない今、漂う人間の匂いを嗅ぎ分け
熊が現れていたのだった。
風下に陣をとるというのはこういう時を避ける為
であったがその作戦も最早、出来ることなく
進めなければならなかったからだった。
そして立ちはだかったのは赤い目をしたボスの1匹
ゾンビ化した大型の熊であった。
クリス「……時間が無いと言った」
巨体に威嚇を放った瞬間クリスの猛攻は躊躇う事等
一切なく素早く行われる。
投げナイフを立て続けに投げる、用いる全ての
ナイフを出し惜しみする気配等一切無い
猛る気持ちを具現化する様に投げまくる。
ナイフは後ろ足両方、足首より下に刺さった、
痛みを感じないゾンビ熊は何をされたかもわからず
威嚇を繰り返す、
だが無表情で有りったけの投げナイフを投げ切った
クリスはナイフを片手、ボウガンを片手に再び
突進を放つ、まるで何かを誘っている様だった。
其れを見た熊も四つ足状態となり、互いが相撲の
ぶつかり合いの様に接近し合う
だがその時、クリスが放ったナイフが熊の足から
引き摺る様に垂れ下がったかと思えば数本が巨体で
走る振動に耐えきれず垂れ下がり落ちて行く、
その瞬間ゾンビ熊は足を自らの血とナイフで
滑らせ転倒するのだった。
『ズザサー……』
クリス「……」
すかさず直線こちらに向かいながら滑るゾンビ熊の
直線的な動きになる予測をしたクリスのボウガンが
短調に滑り狙い易くなったゾンビ熊の
両眼目掛け一斉に放たせた。
方向性の単純な動きに的確なる射撃はゾンビ熊の
両眼に刺さり視界の遮断された熊は驚き、
本能で両前足の手で目を覆うのであった。
その時すでに熊とクリスの距離は2メートル
動きも止まりガラ空きになった首目掛けボウガンに矢を2本ずつ
弓に駆け放った。
距離の近い場所でのボウガンは的を
あやふやにしながらも太い首に刺さりまくる、
そこ目掛け肘を突き出す様に突進を加速する
ボウガンの矢筈がクリスの腕にもめり込むが
一切表情を変える事なく体全体の体重も乗せ押し
込む、当然先熊の首に刺さる矢尻は一気に熊の
根元近くまで押し込まれた。
ゾンビであろうが呼吸する
その呼吸の気道が矢によって狭まり身を
猫背の様に包ませるのであった。
クリス「……切りやすい位置だな、おい」
冷ややかな目でサバイバルナイフを後部首に
めり込ませ一気に掻っ切った……
ゾンビ熊の動きが止まる……そしてユックリと
山の様な巨体は地面へと沈んでいった……
クリス「この格ゲーお前の負けだ」
ドクドクと血を流し痛みが無いとはいえ、血流が
止まれば動かないゾンビ、それは熊であろうが
同じだった……




