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水の確保


農作業道具が多々ある中、ハクは何個か案を考え

たが、その内の一つを選んだ、一番簡単な方法だ。


川までの距離20メートル、川幅は2メートル地面か

ら川までの高さ約1メートルダムを作る事にした。


先ずは川へ行き数本の杭を刺す、板は防水加工し

て川の流れ自体を妨げない様加工した。水の高さ

が地面から溢れる水流の力を利用して押し出す形。


公民館から川までの傾斜を計算に入れて住民を一

斉に20メートル縦に並ばせ水が傾斜で止まり溢れ

る位置から公民館側の方が低くなる様に溝を掘る。


作業は人数が多い分はかどる、川側に近い人は少

し掘るのみ公民館側も掘る深さはその傾斜によっ

て変わるが、まぁ全員でやればものの3時間あれば

事足りた。


後はコンクリートで舗装した用水路が乾くのを待

つだけだ、水車の設計は一応、渡し、本格的な物

も車軸にリヤカーの物を使用、根本部分の連結部

分はパイプを用意、一回り車軸よりも違うサイズ

でパイプに通せば簡単に出来る、後は油を中に入

れれば完成。


体力が無い場合も板を川幅からして4枚程横にずら

して後は先に浅めに水の入る物を取り付けたら一

周回って水が通路を通る。


通路の板も三角形にすると板も少なく済む、うむ

説明が難しい……まぁ考えれば方法は幾らでもあっ

た、細かい水路を複数作り公民館までの太い水路

に流し込めば圧力も増す、それは川が大河になる

自然の原理だ。


水車から水を流し込むのも出来る、そもそも水車

自体が完成できれば回転の力を利用する事も容易、

人の文明はその生活や環境に合わせ、サバイバル

要素として勉強に取り入れる方が原理を理解して

対応力が増すのではないか?などと考える


特にこう言う時は役に立つ、無人島に流された時

等、廃材を利用し、いかに生活のバランスを整え

るかが生きる事に繋がる、中世あたりの知識は特

に役に立つ、勉強してても科学や物理の基礎を楽

しく学べる上に災害にも役立つだろうと思うのだ

が……大学のサークルでそんな事ばかりを僕はやっ

ていた。


公民館に2人、溶接も出来る人がいた。

素晴らしい!溶接は物作り最強と言っても過言で

はない、と言うことでまぁ後は菅原さんに任せよ

うこれなら重さも然程重く無い、取り付けは出来

るだろう。


コレなら発電すら可能だが、所謂、水力発電、こ

れも菅原さんが原理を知っている様なので任せる

事になった、さすが田舎の人は強い学業メインの

体力だけの都会で生きてきた者はその生活スタイ

ルに合わせた力を持つだが自然を相手にする時は

田舎に住む人が一番知識もあり貴重な体験も多い

田舎者と罵る人もいたろうが今はその逆だ。


取り敢えずは今している物を完成させれば気持ち

に余裕も出るだろう。そして有り余るコンクリー

トで適当に溝を完成させれば後は水は勝手に流れ

てくる。


行き貯まった水は溢れ、それは高低差が逆になる

事を利用し排水路を作る、同じ様に溝を掘っても

良いが今回は雨樋を利用しまた川まで戻る、排水

路を作らないと溜まった水は流れ来た用水路戻ろ

うとする、故に流れは止まるからだ、川も押し出

す力だけで流れているわけではない、高低差の地

球の重力が作用する東から西へと流れる川なら東

から流れる用水路を引っ張り捨てる排水路は西側

の川へと流すのだ。じゃないとアレコレ大な事に

なる、アレやこれは、もうアレやこれだ。


ハク「まぁ余った水は畑に流すなりして下さい、

土砂が溝を塞がない様にコンクリートが固まる前

にレンガくっつけといたけど」


ハク「本当は車輪とか使っても有るけど、公民館

の1人に構想は書いて渡しときました必要な時、簡

単なので作ってみて下さい」

鈴「楽しかったねぇ、じっじー!」


僕は既に鈴からジジー呼ばわりされている、純真

無垢なその笑顔に僕はジジイになる事にした、い

や複雑な気持ちはあるけど。


ハク「……」

ハク「楽しかった?そりゃ良かったわい」

(疲れたケド……まぁでもやはり人手がいると作

業が早い、元々農業されていた事もあり、僕のつ

たない設計でもすぐに理解してくれた、元来、こ

う言う人達の方が都会にいる僕たちより遥かにサ

バイバル能力は高いな……)


ハク「さて、もう自由になった事だし、旅を続け

ますか……」背伸びしてアクビをするハクに吾郎

さんが声をかけた。


吾郎「有難う、これで水確保は安全になった何せ、

飲み水だけで無く容易に風呂も入れられる」


ハク「良かった、いいですか風呂は皮膚病を防ぎ、

清潔に保つ事は病気をも防ぎます。医者が居ない

環境で病気は終わりを意味します、面倒がらずに

適度に入浴です、後特に重要なのが歯磨きです虫

歯になったらマジで洒落ならないですから、神経

はやられ血管からバイ菌も入る痛くて飯も食えな

い、そうサバイバルで最も重要なのは『歯磨き』

です。いいですか何度も言います、歯磨きだけは

疎かにしないで下さいね。


サバイバルであろうが都会であろうが生き物とし

て最重要な事は『食う・寝る食べる・病気になら

ない・怪我しない』これに関係することは絶対に

疎かにしないいいですね?」


僕も此処に来てお風呂は入れてもらった。不衛生

は病気のみならず、怪我の時も危ない皮膚病は気

を付けないといけない一つである本来皮膚は体の

バリア機能を締めているから出来るだけ綺麗にし

た方がいいのは当然だ。


しかし言ったものの風呂に入れる事は、なかなか

無い。まして人が居てゾンビに恐れる事なく暖か

い風呂は天国……


裸で真冬ゾンビに襲われたらどうします?そりゃ

もう飛び出たらその寒気に風邪引きますよ、まし

て服取りに行くのも怖い状況だからねぇ……まし

て女子なら他の生存者に見られたら、それはそれ

で違う意味でも危険が伴う、風呂と油断するなか

れ、生活の中で最も無防備なのはトイレと風呂だ。


基本風呂は川、しかし大気汚染や土壌汚染やらで

犯された都会の川は未だ、汚くて入れる場所なん

かほとんど無い。


昔流行った毛じらみは今の人間には多く、それを

除去するのも大変だ。特に髪の長い女の子には多

い毛じらみは細かい櫛で丁寧にシラミと卵を除去

していく、そして、お酢等で洗い流すのが主流だ。


吾郎「……そしてすまないが、旅に出るなら、美

優と鈴を都会にいる親御さんまで届けていただけ

ないだろうか……」


「ハク「えー無理無理、それに基本僕の座右の銘

は【人が嫌いで人が好き】なので、わかりますよ

ね……基本嫌いなんです」


「同じ旅の者で人数が多く、武装する人達を待っ

てた方が彼女達にとっても安全ですよ」


吾郎「今まで旅の者が立ち寄った事はあったが……

立ち寄る理由も田舎じゃからの……猟友会の銃目

当てに始まり、村の物資を横取りしたり、散々な

ものじゃった……我等は2人を隠し、何とか守って

きてはおるが」


「お前さんだけじゃて村の問題を解決してくれた

のは、しかも水路をあんな簡単に作るアンタじゃ

からこそ、私達も信用できるんじゃ」


吾郎「鈴ちゃんも懐いておる様だし、水が安定し

たこの先、あの2人だけで行くのは時間の問題じゃ、

どうか頼めるのは貴方だけなのじゃ……」


ハク「……と言われまして、その」

(確かに鈴は別にしても美優ちゃんはやりかねな

いな……)

ハク「まぁ目的が明確では無いし……」


ハクが心配する様に、成人女性ならまだしも女の

子を連れての旅は、相当危険度が増す事は明白で

ある、余計な配慮も含め、彼女らを守らねばなら

ない。


結果、彼女達が犠牲になる事もあるかも知れない、

その罪悪感も背負う覚悟で無ければならないのだ。


ハク「……」

姉妹どちらが欠けても恨まれるだろう行き場の無

い悲しみは自分に向けられる、義理と人情はこの

世界に置いて身を滅ぼす結果となる事も事実だ。


しかし義理と人情が無くなった者は果たして人間

と言えるだろうか……それは本能で生きる動物と

同じ、所謂、頭脳を持ったたちの悪い獣である、

人間という固有名詞なのではなかろうか……


ハクは考えた、が答えは決まっていたが、その覚

悟があるか、使命に命をかける事が出来るのか。


しかし彼は答えた。

ハク「考えても、どうせほっとけないし、解りま

した」

吾郎「おお!有難う御座います!おい美優ちゃん!

美優ちゃーん……」


「……」

返答は無い。

吾郎「まさか……おい美優ちゃん見かけた者はあ

るか」


金子ばぁちゃん「はて?見とらんけど」

吾郎「おい、見かけなんだか」

必死に村人に聞き回る吾郎さん。


圭吾「さっき見かけたど、リュック持って、大き

なリュック持ってたから何処行くんだ?て聞いた

ら、山菜取りに行くって言っとた」


これ吾郎さんに渡してって言われた手紙じゃ、中

は今夜のご飯取ってくるから、これで作れるご飯

の用意しといてくれって言っとったど」

慌て中を見渡す吾郎だった。

吾郎「……ハクさん先行きおった」

「ワシらに鈴の事預かって下さいと書いてある……」


ハク「……東京へ行く最短の道は何処ですか」

この村でゾンビの事を知っている美優が行きそう

なルート、一般道は危険な事は彼女なら気付いて

いる筈、それに目立つ場所を通る事は村の人に発

見される事、抜ける迄の言い訳である山菜取り、

つまりルートは限られた、東京方面に最も近い山

ルート。


聞いた話から山ルートそれを出来るだけ目撃され

た方へ走る。村人が使っている山道を発見、目撃

者もいた事から間違いなく子のルートだろう山道

を上がって行った、広い山で1人の人間を見つけ出

すことは遭難者と同じ見つけ難いまして見つかり

たくない彼女の捜索は極めて困難にハクは焦る。


駆けゆくと辺りは竹藪だった、辺りが暗くなるま

での時間もあまり無い、運動不足の体に鞭打って

駆け上がる。


いや駆け上がる程体力は無かった、てへ、早歩き

というべきか……

ハク「この速度なら中学生の方が早いかもマズい

な……しかし、は、はっ走れん」


ひたすらに山道を歩く、すると眼前に、こちら側

に向かって走り来る美優の姿がーー

ハク「発見!……あれ?でもなんでコッチに?……

嫌な予感が」


美優「逃げて!うっ後ろからゾンビが!」

美優の背後に12体程のゾンビが現れた、しかも少

し早い、ハクは早く走る為、道具を懐中電灯に絞

り武器は持って来なかった、素早く後ろ向き美優

と並行で走る。


美優「ちょっと!アンタ私助けに来たんでしょ!

武器は?」

ハク「……無いよ」

美優「はぁ?何でもって来ないのよ!」

ハク「逆キレっすね……」

美優「私、アンタの事信用してないしハァハァ」

ハク「ゼイゼイ、そか、じゃ約束、此処切り抜け

たら信用してもらえる?」


美優も余裕は無かった、割と最近ゾンビになった

であろう、此方の方が少し早いとはいえ、追いか

けて来るゾンビの足も油断ならない速さに、息切

れがして、此処まで走った事もあり、今にも止まっ

てしまいそうな美優。


美優「……ケホッ、わ、わかったわよ!」

ニヤリと笑うハク。

ハク「商談成立って事で」

美優「このまま逃れたとしても村には向かわない

わよ、あそこにゾンビを入れる訳にはいかない」


ハク(村に着いたらビリボ君があるから大丈夫な

んだけど……あ、でも確かにビリボ君しばらく充

電してないな……)

自身の身の危険が迫る中、村人や鈴の安全を優先

させる彼女に目が優しくなるハクだった。


美優「も……もう駄目、行って!」

息が切れ今にも止まりそうな美優

ハク「オケ、契約忘れんなよ!あの前に倒れてる

竹まで頑張って!」


この辺りは竹が多く、村人達も伐採した後もあり、

比較的柔軟な若い竹も無数に転がっていた。


竹まで何とか捕まらず到着した2人、

ハク「じゃこの二本並ぶ竹の間に竹を挟んで先の

シナる側の竹を2人で引っ張れ!」


美優「わっ、わかった」

ハク「せーっの!」

懸命に引っ張る2人にどんどん近づくゾンビスプ

ラッターゾンビ!


ハク「まだよん、近づいたら手を同時に離してぶ

ちかますから頑張って!」

美優も理解したようで何も言わず懸命に竹を支え

る、汗で手が滑りそうになるのを必死で堪えた。


ゾンビは呻きながら2人の近くまで接近したその時、

ハクの号令がーー

ハク「3、2、1で離すよ、いいね」

頷く美優、

ハク「3、2、1今!」


竹は風切り音をさせ、勢い良く前方へと弾き出さ

れる、低い位置での発射により、軒並みゾンビの

足に直撃、横並びに居たゾンビもそれを追随する

ゾンビも竹に足をとられ転けた。


美優「やった……」

ハク「そだね、あんな勢いの竹だからね、弁慶の

泣き所所ではないよねぇ、当たったゾンビは大抵

足折れてるよ」


「ほい、あと残った5体は今の要領で、もうゾンビ

もバラバラだから、後は自分で引ける小さいの探

して各自撃破といきましょか」

頷く美優。


ハク「出来るだけ青いの探さないと折れちゃうか

らね、気をつけて」

こうして竹でゾンビを無事撃破した2人であった。

美優「……助かっちゃった」

ハク「契約成立、ぬはは」


だが表情は変わり下を見てうなだれる美優、

美優「……」

ハク「……」


ハク「東京までは僕が連れてくよ……」

うなだれた顔を一気に上げハクを見る美優、しか

し再び顔を下に向けた。

ハク「帰り辛いんでしょ?一旦帰るよ」

泣く美優にハクが言葉をかけた。


「ほり、竹拾ってこ、使えるヤツ、これゾンビ撃

退に使えるから、お土産って事で、それに吾郎さ

んは言ってないと思うよ、鈴ちゃん置いていった

事、大丈夫」


「お土産付きだよ~て、自分のした事をマイナス

にするかは自分次第、これ持って帰ったら村には

大きな財産なると思うし、なんせゾンビ吹っ飛ば

す威力あるからね、君のした事プラスに変えてみ

よっ」


美優「……」

ハク「プライドも言い訳も、やるべき事が、目的

があるなら邪魔でしか無いよ?考える時は今じゃ

無い、こうして、下向いて悩んでる時間は無いよ」


『やるしか無いならやるだけだ、他の思考は全て

そう全てが邪魔なだけだ』


美優「でも……」

ハク「んー……例えば今悩むぅ、ゾンビ来る、慌

て、物事を繰り返すぅ、体力も減るぅ命も危ない、

鈴ちゃん残されるぅ、ご両親悲しむぅ」


美優「……」


ハク「悩むぅ、夜道危なぃ、帰り待つ鈴ちゃん悲

しい時間増えるぅ、村人心配するぅ、探すぅ、ゾ

ンビに襲われるぅ、被害でるぅ」


美優「……」


ハク「悩むぅ」

美優「しつこい!わかった!言いたい事はわかっ

たから」

ハク「ご理解いただけたか……」

美優「アンタ意外と性格悪いわね」


ハク「釣られ悪い顔をするハク」

美優(優しいねホント……)


そんな美優の気持ちを知ってか知らずか、2人は懐

中電灯を照らしながら、終始笑うハクの緊張感の

ない、だが何故か安心する雰囲気に先程あった恐

怖など忘れる位に談笑して村へと帰路に着いた。


美優にとって鈴を見なければ、しっかりしなけれ

ば……年老いた公民館の人達にも若い自分は甘え

る事ができない緊張感に心が疲れて居たのだろう

公民館の中では歳が近いハクに心を許し始め彼女

は安堵を此処にきて初めて感じたのだった。


【今日のポイント】


使える物は全て使え、周りに逆転のチャンス

は転がっている。

ただの棒を棒としてみるか……

自転車を見て自転車だと思うだけか

創意工夫は人の持つ最大の武器と言っていい


物事を成し遂げるには100で成功ならば、

悩む事は成功に導く事に悩む、

100の内10悩んだとしても100回やったら

10負ける、あー自分運が悪いから10に

当たりそうだなーと思う人は多いでしょう

答えは一つ100なら100で対抗しよう。


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