未来
ハクは廃墟からの脱出により次の目的地に向かっ
ていた。
「さてと、気ままな1人旅の再開っと」
空は青い、時折、移動中にも聞こえて来る銃声に
爆発音、ゾンビの呻き声、ノイズは多いが地球は
まだ生きている、下を見ると地獄だが雲は流れ、
視界を上に向けると今まであった全てを風が流し
てくれる様だ……
ハクは先程の争いの前、晴の遅刻の原因が争い事
に巻き込まれた事を想定し、武器になりそうな物
を多く運び出してはいたが、本当はそろそろ物資
が無くなる今、拠点となる僕達の秘密基地を作ろう
と考えていた。
農耕を中心に安全な場所、水、ゾンビ対策もでき
る田舎暮らしの家作りだ。
うってつけの仲間
晴はサバイバル知識
誠は大工技術
純衣は警護
裕太は食事
僕が一番役に立ちそうにも無いけど……お手伝い
全般とソレを上手く活用するアイデアを考える役
目くらいか、誰でも出来そうな気もする……。
だが、5人が居れば安易に敵う事が出来ると考えた、
ゆくゆくは人を集い、村から始まり、やがて町へと
発展させる事を夢見ていた。
ハクは元々放浪癖がある、彼等4人の仲間に安全な
場所を提供したい、その一念であった、出来上が
れば彼はまた出て行くつもりでもあった。
とある人口の少ない村へと辿り着いたハク、地図
で確認した過疎化の激しい村である、家は数軒、
隣近所も遠い、元々電柱も少ない隔離された空間
の様な所だ、森林が多く村は森に囲まれた環境に
佇んでいた、小川が流れ、都会では見れなくなっ
ていた昆虫や野生化した鶏が村を悠然と歩く。
アスファルトも少なく、農作業が盛んだった頃を
思い浮かべる事が出来る道は当時、荷車や人が毎
日通った土の道路、踏み固められた土の道路は雑
草が生え難い、まぁ手入れはしないと雑草で道幅
は狭くはなっているが、都会ではアスファルトは
割れ、撤去するにも重機が必要だ、全てに於いて
本当は発展し過ぎた都会より、人が生物として暮
らすにはいい場所である。
とある民家を覗くーー
「こんにちわ~お邪魔します~」
「……」
静かだ、屋根は風化し破損、木漏れ日が屋根から
差し込む、
「雨漏り確定……」
人が住まなくなった家の風化は思ったより早い蜘
蛛の巣が辺り一面ビッシリとある。
「人より強いね、君達は……」
畳が剥がれ、上がるのも危険な感じの平家、部屋
の隣はトラクターが置いてある、燃料も入ってい
た、音が大きいトラクターは移動には不向きでは
ある当然利がないという事は言い換えれば、利が
あるという事にもなる。
辺りにゾンビが居ないか民家に所々に寝転がる様
に見えるゾンビが活動可能かどうかを見定めるの
にも適している事からエンジンを動かしコレで散
策する事にした何せ、もう足がクタクタであるか
らして……
『ブルンブルン、どどど……』
煙が凄い、暫く動かしていないせいか?まぁバッ
テリーが無事なのは助かった。
『トトトトト……』
麦わら帽子と手拭いがベストなトラクターでの移
動は何故か安心感がある。
しかし空気が美味しい……皮肉では無いが人が生
産しない過度な工場が出す煙や汚水が無い状況は
こうも自然に優しいのか……なんて思ったりもし
た、人は個人資産も大事だが、住む星あっての財
産だ、人が大事なら星を大事にする、基本は母体
となる星ファーストで生きるべきであると思うハ
ク、核爆弾に戦争、エゴの塊の贅沢を潤わす為の
工事や排気ガス、どんな大義名分があろうが偉そ
うな学者や政治家、資産家が文字列を並べ自己正
当化しようが地球を傷つけて生きる意味は無い、
生かされている現実に背きやがてそれは星、地球
をダメにし生きる地面を失う事となる、最早、幼
稚園児でもわかりそうな事柄に大人や偉い人は、
『現実は甘くない』口を揃えてそう言う、現実が
わかってないのは何方だか……更にどの国も我が
国民ファーストと言うが、もっと視野を広めるべ
きだとハクは感じていた、そう地球だ、更には宇
宙だ。
生きる為に必要なのは電気でもガスでも便利グッズ
でもお金等では無い、元になる大地なんだ、と
優雅な時を楽しむ、スピードの出ない一見、この
世界には無用に思えるこのトラクター。
年間通して、これ一台有れば何人もの食糧を作る
事が出来る代物だ、人類の英知というべき物、食
うという燃費の異常に悪い人間にとって、一番の
活躍出来る機械と言っても過言では無い。
この時、農作業も令和から進み、年配でも操作出
来る軍事仕様のパワーアーマーも農作業用具として
販売はされてはいたが今はまだ見ていない高価な
代物でもあるからか、しかし有りそうな都会に近
い場所に行くには危険すぎる。
恐らく侵略者もソレを見つけては破壊しているだ
ろうから……今は平成時代の名残を活躍させる時
代である。
ゾンビは皆無だった、痩せた年配者が多い田舎で
はゾンビに変わっても動かななくなる期間が短い
のであろう、此処を拠点とするには満点だ、ハク
は思った。
問題は住む場所だ……
異星人は侵略の際、洪水を引き起こした、時折あ
る地震も地殻変動を利用している可能性は否め無
い古い家屋が倒壊したら、それこそ危険だ……
僕は近くの図書館へ赴き、この土地における過去
の災害状況、及び土地の形状を調べた、川の氾濫
も少なく、高い山とは言えないが、山からの下ろ
し水の確保、そして岩盤の位置、全てを吟味して
いた。
□90点□
まずまず、いい土地が見つかった、仲間が集いし時、
此処を拠点にしようかと思う。
更に民家探しへと移る、一から作るにも土台があ
るか無いかでは大きく違う、何せ仲間は5人しか居
ないのだから……畑やビニールハウスのあった場所
と思われる場所に着くと土を掘り出してみる。
土壌は雑草が生えている事から、何らかの汚染状
況は回避出来そうだ、詳しくは勿論専門家でもな
いし検査機械があるわけでも無い、曖昧な判断だ
が草木が生える事は命が育まれる大地という証拠。
僕達の体は既に汚染されていると言ってもいいだろ
う、各地で起こった襲撃の際、洪水に地震原発に
よるセシウム問題に異星人の緑の謎の霧発生によ
るゾンビ社会、だが生き残りさえすれば人は進化
し、汚染された大地も地球と言う生命体が其れを
薄め、いずれは元に戻してくれるだろう。元は宇
宙から生まれた物質は菌やウイルス、魚や岩、空
気までもがそうなのだから……
元々あった野菜が野生化した物を収穫、口に運ぶ
「うげ……苦い、不味」
思わず口から出してしまう。
放置された野菜の大半は交配しあってしまい、味
もだが食いづらい食べ物へと変化していた。
「同じ種で育てないとこう言う状況が起こるのか」
日々生活の中では知らない知識が多過ぎた、生活
に置いての平和な時代には必要とされない知識を
学校で教えるべきだとも思えた、いつの時代も平
和は仮初なのだから……
国によってはバイクのキーがなくてもエンジンの
起動の仕方を教えている国もある、それは災害時
に備てだ、平和に見える日本では無論、無い、平
和という社会にあぐらをかき自己判断で善悪の区
別ができない人々、何を持って裕福なのだろう、
犯罪というものと人の命、それを利用する人間、
そう全ては人間次第なのだ、人は裕福になれば劣
化する、それは筋肉と同じ、使わなければ退化す
るのと同じだ、堕落に染まり、それに慣れ、いつ
しか国や人は命より世間体を気にする様になった。
人は人を恐れ注意することも出来ず、反抗するばか
りの声を世間は拾う、人に優位性という順序を自
らつけ、格差を作る、関わることを恐れ、また関
わらないと文句を言う、犯罪は寂しさから人を巻
き込み、自らの生をまっとう出来ないものは集団
で人を巻き込み、社会は日本という国以外の事を
他人事のように被害者を見る、僕の時代に人と呼
べる人間は少ないかった。人の皮を被った堕落を
貪る地獄の餓鬼すら思えた、おっと話がずれた……
公民館の、そうアレは美優達と出会った時の農家
が盛んな田舎にいたお爺さんやお婆さんの凄さが
身に染みる、知識は知ってしまえばまだマシだ、
だが一からソレを知ろうとすると、一つの種にで
も何年もかかるだろう。
自然界そのままだから来年は大丈夫だろう、なん
て考えた日には、この曖昧さで人生のうち気付く
までに一年、いやまだ一年で気付くと良い方だろ
う……。
コレが人が1人では生きていけない理由の一つであ
る、土壌の良さは解らない、が掘り起こすと水分
がありミミズ等が入ればまぁ出来るだろう、たっ
たそれだけだ。
昔ならいざ知らずこの現代で起こった異星人侵略
まだ知識を知る人間がこの地球にいる限り希望は
ある、これが何年も後になり機械が全てをする時
代に侵略が行われたならば、人類はいとも簡単に
崩壊、絶滅は免れないだろう。
文化と共に人は成長する、時代は豊かになり生活
はエンターテイメントが主流になる。
土臭い農業は衰退、漁業はその科学の発展により
重要度は下げられ海は汚れ機械が人間の代わりを
果たす、だがそれが機能しなくなった時に発展は
基礎を虐げて生まれる物ではないのか?と思う時
がある。
冷静になり考えても栗栖が言ったように人は自分
の生活を中心に考える、悪いことではないが電力
アップの為に原発を増やし、今は土壌が危険レベ
ルを超えている、先がどうなろうが、利権を止め
られる状況ではなくなる。
じゃ国が俺の給料だすのかよ、出せないなら俺が
した事業に口出せるのかよ、俺だって生活がある、
こう言われても仕方ない、だからこその個の人間
性を育まねば人類はどう進化しても滅びゆく運命
なのだろうとハクは考えていた……




