結束
陸「晴さん、休んでて下さい、必ず、必ず僕は貴
方を守ります」
晴「なに、これ位……大丈夫さ!」
ハク「何言ってんだか、フラフラでしょ?少し休
め晴、陸はもう大丈夫、僕が保証する」
晴「そうか……お前がそう言うなら完璧だ」
その言葉に安心したのか、全身の力が抜けてゆく
晴を支えるハクも晴の体躯のいい体重に一緒にヨ
ロめくも、それを素早く支えたのはユキ、そして
美香の2人だった。
ユキ「晴、見捨てないで居てくれてありがとう」
美香「ほんとーに、晴!アンタカッコいい!」
ユキと美香は顔を合わせ頬を赤らめた、晴も照れ
臭そうに上を向き指で鼻を掻く。
時男「晴は俺達に任せてくれ、俺も悪かった、置
いて行かない人間に俺がなりゃいいだけの話なん
だよな、求めてばかりだった……俺」
正人「俺もだ……見捨てられた人間の気持ち、他
人の感情なんて気にした事なかった、命は大事だ
けど1人じゃ、どうせ生きてけないもんな、考えた
ら当たり前の事だった」
正人・時男「陸、ユキ、すまなかった、特に陸、
遊びのつもりだったけど俺達、佐々木と似た事し
てたんだな、イジメだと今更、気付いた、本当に
ごめん」
陸が爽やかな笑顔で答えた。
「気にするな」
「てへへ……晴さんならそう言うだろうからさ」
照れた顔で恥ずかしそうに答える陸。
それを微笑ましそうに見る晴にハクが肘打ちする。
ハク「……」
晴「ウグッ」
ハク「この、人間たらしっ!」
「じゃあ、ここで休んでて……」
晴「じゃあお言葉に甘えて……少しだ、少しだけ
待っててくれ……」
ユキと美香に支えられながら腰を落とし顔はうつ
伏せの状態で息を荒くする晴、
「晴を傷つけた代償はキッチリ返えさせて貰う、
……必ずだ」
一歩前へ出るハク、その目は静かだが怒りの感情
も読み取れた、その目と同じ目をしたもう1人が立
ち上がった。
陸「僕も行く」
ハクに並び横に付く陸、
ハク・陸「行こう」
互いの拳と拳を合わせ微笑み合う2人、それを見て
にこやかな顔をする晴に見ていた佐々木の顔が強
張る。
「キモいキモいわ!寒気がするわ……」
「友達ゴッコかよ!クールじゃねぇ……クールじゃ
ねえわ……そんなもん、お前らは主戦力を失い、
軽率な行動を取った、あのガキに怒り、仲間割れ
する所だろが」
「そんな甘っちょろい考えしてっから、殺されち
まうんだよ!裏切りは人の性なんだよ!自分が命
落としたら全てが終わりじゃねーか、頭わりぃん
じゃねーか」
自分が一番求め、手に入れられなかったモノ、捨
てたモノ、そして経験、今までやってきた己の自己
否定するかの様な光景に苛立ちが隠せない、どう
しようもない程の猛烈に怒りが佐々木を襲う、お
もむろに背中のライフルを取り出し、そして構え
た……。
『カチャ……』
冷たい銃に頬を付け蛇の様な目をした佐々木の狙
う獲物は、この状況を作り出すハクに向けてだ。
「俺の邪魔ばかりしやがって……お前らの希望と
やら……俺の指一つで消せるモンなんだよ」
指をトリガーから外し、ハク達に向け独り言を話
す、そして再びトリガーに指をかけた、引き金の
指が静かに命を狙う……その弾丸はようやく一丸
となった彼等の希望を確実に消すには充分な鉛の
塊であった。
「平和な世の中じゃねーん、だ、よっっと」
引き金を引く佐々木、
『パァァアアアアアァァァァァ……ン……』
ライフルの乾いた銃弾の音が辺りに響いた。
その音に皆がビクっと体をすぼめる、カラスが飛
び、ゾンビの声もしばし静寂を奏でた、時が止ま
る……再び時が戻ると呟いた。
「どうして……こうなる」




