更に
作業を終え、晴がロープを伝いハク側に降りる、
先程いた駐車場の壁の裏に到達した晴が指示を出
した。
晴「よーし!じゃあ登ってこい!」
時男「よし、俺から行く」
そう言うとシッカリとロープを掴んで上がり無事、
壁裏に到達、そして次ユキがロープを握り上がり
始めたが……ロープを登る事が出来ないのだった。
ユキ「……やっぱ、駄目、私こんなの上がれない
よ!」
それは美香も同様だった。
正人「上がれなきゃ終わりだぞ、頑張れよ」
美香「無理に決まってるでしょ……」
正人「時間が無いんだよ!早く上がれよ!」
足元の迫るゾンビを足で蹴落としながら正人が叫
ぶも無理なものは無理……実際ロープを伝い上が
るのには女性では難しい、腕立ても満足に出来な
い彼女達にとって最初の一歩である体を引き上げ
て自分の体重を支える事すらままならないのだから
正人「じゃ先行くぜ、仕方ないだろ」
ユキ「……また置いて行くのね」
正人「仕方無いだろーが、おぶって行けって言う
のか?それこそ2人とも滑落して終わりじゃないか」
ユキ「……」
事実の壁が彼等をまた絶望へと導き始める、壁を
先に上がった正人も下に居るユキらが気になって
仕方が無いのか晴に声を掛けた。
正人「……ちっ、おい!聞こえるか!女2人ロープ
登る事が出来ねぇ!」
晴「俺が行く、おぶってでも連れて来る」
時男は晴の肩を掴み首を振った……
晴「……」
時男「お前、手見てみろ、血で滑るだろ、人抱え
てロープを握り上がる何てとても無理だ」
落ちないよう自分の体に女子をロープで結び上が
れば何とか?晴は考えたが無理は事実だった……
しかしハクを入れこのメンバーで一番力のある晴
しか出来ない事を理解している彼はそれでもロー
プを掴み上がろうとした。
晴「しかし時間が無いんだ!やるしか無いならや
るだけだ!」
ハク「はい、その通り、晴が今やる事は手の消毒」
ハクは消毒薬を晴に投げ渡し、同時に手袋を渡し
た、何を焦っているの?といった表情で彼等を見
るハク。
ハク「大丈夫だよ」
「おーい正人だっけ?聞こえる?ロープに結び目
作って、それで手をそれに引っ掛けてジッとして
て~、こちらからロープ引っ張るから塀の上に着
いたら下の人にロープ下ろして同じように上がる
んだ」
正人「あー成る程、わかった!」
そう言うと結び目を作ると裏側に居る晴と時男で
ロープを引っ張り、一気に引き上げる、スルスル
とエレベーターの様に上がり塀の上に到着した正
人は結び目のついたロープを下に降ろし美香がそ
れに掴まった。
そして陸、美香も一気に塀の上まで引き上げられ
たのだった。
美香「早い!凄い!これなら助かるわ!次ユキ!
下ろすよ!」
ロープが下に投げ込まれる、ロープの結び目を掴む
ユキだったが、手が震え上手く握れない。
美香「どうしたの?早く!後ろの鎧男だいぶ近づ
いてる!早く!」
正人「駄目だ震えて握れないんだ」
塀の上でその様子を見る3人も焦るーー
美香「そうだ!手に巻きつけて!」
ユキ「駄目…手が震えて上手く出来ないよ」
どんどん近づく鎧男に恐怖心が体の機能をうばっ
て行く……
美香「ゾンビなっちゃうよ!」
正人「何度も置いて行きたくねーんだよこっちも!
早くしろよ!」
晴「駄目みたいだハク!やはり俺が……」
ハクを見ると何やら片手に反物を持っている、
ハク「問題無いよん」
晴「?」
時男「……」
陸「反物?」
美香「?」
正人「???」
一同がその反物を見て何をするか訳がわからなか
った、反物の長さは一反約13メートル。
ハク「晴、付いてきて」
晴が頷き、塀を上がる、ハクは反物を二つに折り
真ん中の折り返し地点を下へ投げ込む。
ハク「陸と正人で下側の反物の端を持って、決し
て離さないで」
ユキの方を見て指示を出すハク、
「ユキ、反物の折り目にオムツ履くように跨いで!
わかるね?反物の中に入る感じ」
ユキ「うん、折り目の中に入る感じで跨げばいい
のね、こう?背中に反物、前にも反物、股に挟む
感じになるけど」
ハク「そうそうバランス取りやすい様に足は反物
の外に出して密着させるのは股の部分だけにしな
よ」
「よしじゃ晴と俺で引っ張るよ、左右の上げ方が
違うとバランスが取れないから1、2、掛け声で行
くよ!せーの!」
「1、2、1、2」
漁師が網を引く様に同時に反物の上部、ユキから
は背中に当たる部分だけを引っ張り上げる。
スルスルとユキの体が上がり無事塀の上に
辿り着区事が出来た。
栗栖(反物であんな使い方があるとは……ははっ
コイツは面白い!)
「だが次はどうかな……」
ーー正人談ーー
俺だって置いて行きたくはないさ、人でなし!な
んて攻める奴もいるだろうが現場にいない者には
解らないのさ、お化けや怪物、なんて目にしたら
誰か置いて行くなんて普通だろ。
誰も俺を攻める事なんて出来ないし俺が悪い何て
思う方もおかしいぜ、戦争だってそうだろ、映画
でもあるだろ、直面した恐怖に勝てる奴なんてそ
うそういる者じゃ無いんだ。




