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当然


晴「すまない……」

「だが、俺は諦めない、皆を助ける!」

時男「軽々しく助けるだ?助けろよ!じゃ、やれ

るもんならやってみろコラ!」

背後から近寄るゾンビの距離ももうあと僅か、前

進する甲冑率いるゾンビ軍団との距離もますます

近付いている。


チラリと横の塀を見た晴が叫んだ、

晴「塀に行け!俺が押し上げる!早く!」

皆が指示通り塀に行くと晴が両手を組み足場を作っ

たのだった。


晴「俺の手に足をかけろ!一気に押し出す!塀を

越えて逃げるんだ!」

時男がそれに従い晴の手に足をかけたと同時に晴

が勢いよく塀に向かい押し上げる、宙に浮く時男

の体が塀越えをした、続き正人が続く、女子は体

が上手く動かせない上に運動能力も乏しい、晴は

肩車の様に肩にのせ、立った姿勢で塀を越えさせ

時男、正人で引き上げた。


晴「陸!後はお前が最後だ!一気に行くぞ」

陸「え?でも晴さんは……」

「俺はいい、ここで足止めをする、甲冑の中は人

間だ、塀に何かしてゾンビを渡らせる細工をする

かも知れない、いいから行け!」


そして優しい笑顔で陸に語りかけた。

「陸、ナイフ出せたな!お前の心だろソレ、俺に

向けてだけどな、出せた事はいい事だ、そのナイ

フで今度はお前自身を守れ!」

陸「……」

晴「出す場所間違えんなよ!よし来い!」

陸は晴に足をかけ塀を上がった、暴言を吐いたも

のの陸は晴を心配そうに見ていた。


時男「おい!早く行くぞ陸!」

陸は自分の事しか考えない彼等に晴を気にもしな

い行動や言動に今逆らおうと言葉を発しようとし

た直前時男の怒号が響いた。

「早くしろや!」

そして再び肩をすぼめ、晴に背を向け5人はその場

を離れた。


晴「さてと」

首を動かし、手をブラブラさせ準備運動をし、拳

をポキポキ鳴らしながら鎧男に向け歩き出す晴。

晴「気合だ!俺!いきますか!」


ーー5人ーー


ユキと美香に肩を貸し逃げる5人、通路に居た新た

な徘徊するゾンビがそれを追う……


ユキ「もう駄目……歩けない」

陸「しっかり」

正人「支えてる俺の方が重いんだよ歩けよ!引き

ずる様にユキを運ぶ正人が立ち止まったユキの肩

から手を離す正人、


正人「あーしんど、もうお前置いてくわ」

ユキ「ヤダ!助けてよ!」

正人「お前の代わりなんてこれから出てくるわ、

お前だって逆の立場ならそうすんだろ」

時男と美香がそれを見ていた、何も語らずただジッ

とするだけだった。


ユキ「ヤダヤダヤダ!食べられる!うわぁん」

泣き出すユキは正人にしがみ付くも、足を振りユ

キを引き剥がした。

陸がそれを助けようとするが正人が殴り付けたる。

正人「置いて行くってんだろ!ボケ!」

殴られた陸の口から血が滴り落ちる……正人を睨

みつけた陸に再び正人が殴りつけたーー


正人「お前もここで一緒に餌なるか?あぁ!俺達

と生き延びるか、お前が決めろ」

そう言い放つと正人は美香に肩を貸し、3人は逃げ

出した。

正人「美香、お前もちゃんと歩かなきゃ置いて行

くからな」

美香はそれを聞き、支えられながらも懸命に歩き

続けた。


長い通路の出口まで3人は後50m少しである。

ユキ「陸!アンタ置いてかないよね?置いてかな

いよね?ね?ね?」

懸命に懇願するユキを支えようとするも恐怖にか

られたユキは全身の力を込め陸にしがみ付いた。


陸「ちょっと!離して!動けない、助けるから!」

ユキ「イヤ!イヤよ!そうやってアイツらみたい

に置いて行くんでしょ!イヤよ!」


捥がくユキが陸の動きを封じる、そのまま引きず

ろうとするも、歩こうとしないユキを引きずる体

力が無い陸の足も地面を滑るだけで前へとは進ま

なかった……。


さっきまで少し距離のあったゾンビが既に近くま

で来ている事に気付く2人が叫ぶ!

ユキ「キャアアアア!」

陸「あわわ!」


腰を抜かした2人は這いずる様に逃げる、だがゾン

ビはとうとう彼等との距離を詰め目の前に来た。

叫ぶ声を聞き振り返る3人、

時男「……ごめんな、これで時間稼げる」

正人「仕方なかったんだ、仕方が」

そして無情にも曲がり角を曲がり姿を消した3人で

あった。


そしてゾンビの手がユキの顔を触れようと伸びる、

もう一体のゾンビも陸の足を掴んだ、ポッケに入っ

たナイフを取り出しゾンビに向けて振り回す、そ

の切っ先が当たるも痛みの感じないゾンビには動

きを止める事も無くナイフを持つ手も掴まれた。

「もう、駄目だ!僕も女をこの人を置いていけば

よかった!情なんて邪魔になるだけだ、人なんて

所詮、そんなもんだったんだ!」

泣き叫ぶ陸にユキ……


しかしその瞬間、横たわる2人の頭上に信じられな

い光景、ゾンビ2体が宙を舞う姿が映った。

ユキ「?」

陸「?」

『よっ!』

その声は晴だった、後を追ってきた晴は危険に迫っ

た状況を見、駆ける足を止めるどころか速度を上

げ、迷う事なくゾンビに猛タックルをぶち当てたの

だった。


手を差し伸べる晴に2人は起き上がる。

ユキ「置いて行ったのに助けてくれるの?」

晴「?」

「当たり前じゃないか」

その笑顔は本当に純粋で、彼等から恐怖を取り除

き、絶対に置いて行かない揺るがない安心感を胸

に刻みつけたのだった。

ユキ「……女だから?」

晴「?」

晴「関係無い、俺は誰も見捨てない」


ユキは初めて男に安心感という感情を知った、そ

して陸も同じ事を痛感した、この世にはこう言う

人間がいるんだ……と。


晴「ほら!立て!行くぞ」

恐怖心より包容力と言えば良いのか、ともかく安

心したユキは足が上手く動かせる精神状態に戻り、

3人は正人達が逃げた方へと逃げた。


晴「早く合流しなきゃ彼等が心配だ」

ユキ「置いて行ったのよ!アイツら!そんな奴ほっ

といて安全な所、3人で行こうよ!」

陸「そうだ、そうだよ」

晴「安全な場所はここには無い、それに言ったろ?

見捨てるって選択は俺には無い」


晴はそう言う奴である。


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