稲森晴
とある駅で先陣を切って合うのは稲森晴。
晴とは幼馴染であり親友の1人、ハクとは中学の
時、3年生時に引っ越しして連絡はし合う中ではあっ
たものの、引っ越しが多いハクの家族の住んでる
所はもう知らなかった。
晴「あ~!いい天気だ!ハクとの待ち合わせ場所
迄は車で後3時間てとこだな、予定より2日早く
着きそうだ……」
伸びをし、ポカポカ陽気に休憩中。
県道は殆どマトモに走る事が出来ない状況で迂回
に次ぐ迂回ではあったが予測程では無く早目に出
発した晴であったがあまりにも早く着きすぎる様
で……見渡す限りの田畑の跡地にある雑草の異様
な景色が当たり前になってきた日本である。
平地の雑草畑である……。
晴「そういえばカブトガニとかタニシとか居るか
なぁ……昔は田舎帰ったらよく取った、おお、ザ
リガニいるじゃん!自然は強いねぇ、ザリガニっ
て雑食だからザリガニ餌に出来るんだよなぁ、
身を解いて……枝拾って」
釣りを楽しむ晴……釣れたところでどうするのだ
ろう。
前にも話したが幹線道路は異星人も使用していた
と思われ、ヒビはいっているものの、昔の日本の
状況と然程、変わらない。
が人の手入れが無いもの、例えば田畑を放置した
とする、雑草の生えるスピードは凄まじい、もの
の半年で地面が見えない程にもなる、恐らく皆ん
なが思ってる程、文化で作られた景色は一変する
事となる。
田舎でも道があり人が通るからこその道であり、
いったん遮断されると道路から湧き出る雑草の様
に自然は弱く、そして強い。
道路の脇やコンクリートで覆われた高架下の壁を
よく見よう、雑草が生えてる所も少なくは無いだ
ろう、勿論、日光や土壌の強さには大きく左右さ
れるではあろうが……。
見える景色は一年経てば日本とは思えない姿と変
貌を遂げるであろう、道は断片的に道と判断出来
るか否や、自動販売機が田んぼの中にあるかのよ
うな光景、人の住まなくなった家は一瞬で埃や雲
の巣に覆われる、部屋からは生活に残され、腐敗
し、動かななくなった冷蔵庫から強烈な異臭が放
つ。
電気の点かない夜道は漆黒の闇となり、野犬動物
は徘徊、マンホールは落ち、油断すると落ちてし
まう、都会だからこその危険地帯となり果て、人
は戦時中の様に、自己中心主義と化す、暴徒は人
の性なのか、争い、生き残った人類という同種族
同士が争い血を流す、そこには憎悪がある分、ゾ
ンビよりも酷いかも知れない、法は無く、自由に
生きる事が出来るとすれば貴方ならどうするだろ
う?自由とは孤独、自由とは危険と隣り合わせな
のである、自分が思う欲望は、また他人も同じ欲
望を持つ、力がそれを象徴する時代である。
車を降り休憩をしに廃墟の町をブラブラ散歩して
いた、知らない町だがゾンビの数は少ない、人口
も元々小さな町だった様ではあったが、侵略時の
水害にあった町らしく、ゾンビ化したものも一緒
に流された様だった。
消防車が倒れ、そこら辺に転がる車も使い物には
なりそうに無い、壁が崩れ中が剥き出し状態の家
やマンション群がまるで風に煽られ不気味な唸り
声をあげている様だ、人の楽しむ会話が聞こえる
都会が懐かしい……。
水路を歩く、水の勢いが分かるかの様な堤防は決
壊していた、川に魚影が見える、そんな景色を見
ながら歩いていると……前方に何やら人が争って
いる姿が目に入った。
男A「おい!よこせよ!俺のもんだ!」
男B「俺が先に見つけた!水だ!って叫んだんだろ
見つけた者が優先だろうが!」
どうやらペットボトルの水の取り合いで争ってい
る様だ。
男A「黙って渡せば、いい物を……」
懐からナイフを出し相手を威嚇し始めたのを見て、
すかさず間に入る晴。
晴「まぁまぁ落ち着けよ……水なんかで争ってど
うするよ」
男A「誰だ?お前、関係ないだろーが!向こう行
かないとお前も刺すぞ、それに、たかが水だと?
その水がなかなか今は手に入らないんだよ!」
男B「コイツ水、独り占めする気なんだ!まだ仲間
は3人いるんだ、分け合わなきゃ全員ゾンビになっ
ちまう」
晴「水があれば、いいんだろう?」
男A「あん?お前水持ってんのか」
リッュクからゴソゴソと新品のペットボトルを差
し出す。
晴「あぁ、一本新品がある、やるよ、それに水は
濾過すれば飲み水なんて、幾らでも確保出来るか
ら、もう喧嘩はやめろよ、なっ」
AとBは顔を見合わせ、晴の言葉に嘘は無いのか表
情で読み取っている様だ、そして、信用出来ると
判断した2人は互いにうなずき喧嘩は止まった。
A「まぁ、そう言うんなら……」
この時代、知識の無いものは水の確保すら出来ず、
汚染された水を飲み、命を落とす者も多かった。
汚染された水は下痢を引き起こし、吐き気等、体
力を奪う、赤痢や寄生虫、細菌の宝庫である。
仲間の元へ案内される晴は男3人、女2人のグルー
プに招かれ、水の濾過方法を教え、実演し、この
グループを救う事となった。
晴「この場所から、あまり移動しないなら、山菜
やキノコ、食べれる物を教えてやるよ」
そう言う晴に、生活への光明が出来たと彼等はは
喜んだ。
ーー稲森・晴ーー
サバイバルサークルクラブ、通称サバ部の部長、
身長も高く、精悍な顔立ちの爽やかで、人から好
かれる性格の持つ好感度満点の熱い青年である。
特技はサバイバル知識、よく1人で海外の山を登り
に行く位の冒険家でもある。
晴は感じた、このメンバー逃げる途中で出会った
らしいが全員が全員自分の事しか考えて無い様に
も見えた……。
喧嘩を仕掛けていた男。
時男 25歳
皆んなの分と言っていた喧嘩を売られた側の男。
正人 26歳
何やらこのメンバーではビクビク怯えている様に
見える若い男。
陸 16歳
チャラチャラした感がする女。
美香 21歳
気のキツそうな女。
ユキ 28歳
正人「おい、この人が食料と水の心配を無くして
くれそうだぞ!これで争い事もしなくて済むぞ」
陸「……」
ユキ「マジで?ちゃんと飲める水なんでしょうね、
嫌よ私、泥水なんか、あ、それならお風呂も入れ
るわよね?」
時男「まぁ俺は食いもんと水をくれるなら何でも
いいや」
美香「ありがと~」
一通り挨拶を済ませ、この日は夕暮れもあり説明
をする為に、焚き木を囲い共に過ごすことにした。
時男が側にある小石を陸に投げつけ、小石は陸の
頭に当たる、怪我をする程の大きさでも無い小石
に身をすくめ怯える仕草を見せる陸を見た晴は、
晴「おい、やめろよ嫌がってるじゃないか」
時男「いーんんだよ、怪我する小石でも無いだろー
が、うるせーなテメエは」
時男「おい陸、お前、明日、この兄ーちゃんと一
緒に行動してキノコやら釣りやら覚えて来いよ、
晴ってたっけ、まぁコイツに任すから教えといて
よ」
晴「いや、みんな覚えておいた方がいい、何かあっ
て、陸君が居なくなったら困るのは君達全員も同
じだろう?」
ユキ「面倒臭いわ……大体食料調達なんか男がや
るもんでしょ、ねぇ美香」
美香「そうよ、私達スカートなのよ、着替えも無
いし、移動も自由に出来ないし体力も無いし」
晴「……」
「スカートが動き難い訳では無いよ?スカートっ
て元々バイキングが発祥だからね、動きやすさを
追求した衣服なんだぜ?それ」
美香「……ふーん」
(何いってんのかしらコイツ)
ユキ「だから?」
(面倒臭い男……)
晴「……」
陸「僕が行きます……」
正人「よく言った陸!俺と時男は物資取りに町に
行って来るからさ、ゾンビが現れても陸はどうし
ようもないだろ?頼むな」
美香「適材適所ってヤツね」
晴「適材適所には賛成だが……基礎は覚えておか
ないと」
ユキ「あーも、うるさいなぁ……いいじゃん、私
達はここで待ってるから後、宜しくね、陸ちゃん」
晴「いいのか?陸……言いたい事があったら言っ
といた方が良いぞ」
陸「……いやいいんだ」
晴はジッと陸の影のある横顔を見ていた……しか
し彼等の近くにも不穏な動きを見せる男達がいた
のだった……。




