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ハク戦 8




試合会場ーー


「ふざけるな!貴様」

叫び先程とは比べ物にならぬ加速で距離を詰める雪丸に対し、同時

に反応するハク。

「だが後はもう槍だ!いくら俺の攻撃を利用しようとも追い詰めた

のは俺の方だ、お前は円の端、円の中心近くから距離を詰めれば

回避不能、俺はお前の動きに合わせ少しの角度調整で捉えられる、

だがお前は円の端でいくら回避しようとしても今までの数倍のス

ピードで避けねばならぬ、そしてそれは不可能!今度こそチェック

メイトだ!」


 鬼の形相でハクを詰める雪丸、憤る逃げ場をハクに向けるその逃

げ場は確かに無かった、行き詰まる後方からは容赦無い槍が構えら

れている、それは立てかけてあるだけの槍塀では無く人が構える防

護策は逃げようは無い。


「最後だ!距離が詰まり我が間合いに入った時、この腕の引き締ま

りが何を意味するか分かるか!渾身の捻りを加え溜め込んだ拳を今

ようやくお前に叩き込み俺の人生は始まる!」

腕の毛細血管ですら浮き出る彼の腕は異様な紋章を描いた。


がーーハクは後方へ逃げる事も無く横に逃げる事も無かった、怯む

表情を一切見せず前へ出たのだった。

ハク「ふふふん、行くよ先輩!」

「なに?」

ハク「中心から攻めて来るから逃げ場が無い?先輩が円の中心なら

僕も中心になればいい、今ある形状なんてそんなもの何処にある」

雪丸「俺に向かえば確かにお前からも円だ、だが好都合、打ち出す

拳に向かい突っ込んでくるなど愚か!俺の打ち出す拳は既に発射台

にある!」

 ハクが前へ踏み出すと同時に同じく前へと追い詰めながらも踏み

込み足が力強く大地を踏み締める、それと同時にハクも45度の角

度で彼の制空圏とも言える円に飛び込んだ、即座に打ち出される拳

が発射される体勢までは準備が整い対応は異常に早い、だが見て判

断するクリスの交差法の攻撃は攻撃してくる前提の利用した技であ

る、片側が攻撃する前提であるに対し、攻撃する意思の無いハクと

は質が違い反応というよりは変化があれば反応する距離は互いがぶ

つかり合う距離としてでなく制空圏の端で行われる反応であった、

いかに早く拳が出されようが当たるまでには距離があり詰める必要

がある、がその距離外からの異質な動きがあれば対応しなければな

らない防御や攻撃等関係ない、即座に彼のいる位置から遠ざかる為

だけに反応するハクの判断の方が迷いがない分も含め早いのである

ステップを踏み込み自身を円に捉え、ずらす事で逃げる範囲は元々

詰めたものの考えの円で戦うのではなく彼は雪丸の円でなく自身の

円を生成したのだ。


雪丸「逃しはしない!」

 だが常人とはかけ離れた力と技を持つ雪丸の攻撃はそれでもハク

に対し攻撃を当てる事はできた、だがやはりずらした支点から放た

れ当たる攻撃は当てるだけで倒せるというものではなく詰めるだけ

の攻撃、更にはその威力を利用し線で来る攻撃に対し身をずらす、

向きを変え更には身を半身ずらす事で大きく中心線から(ハク)円

は後方は既に槍の構えられた方向ではなくなった、線でくる雪丸の

威力を自身で回転を加える事により追加された力がハクの動きをさ

らに加速させる、槍に向かい放たれた侵攻方向は線だ、対し半円の

動きで迎えたハクと立ち位置は元の彼らの立ち位置からして45度

になっていたがそこに当てられた攻撃の威力に更なる回転を加えた

位置取りはハクの思い通りに操作される事になるのだった。


ヒロ「上手い……打撃の威力を利用して線を線でぶつかり合うのでは

なく電車に当たって弾き飛ばされる原理と同じ、まるでピンボール

だ……ハクさんは玉、その玉を動きながら中心を叩くのは至難の

事って事か、そこにボールでは無い人間だから飛ばされた反動でも

身を返したりわざと自分も回転を加えたりする事で自身の行きたい

方向へと移動する……それにガードは腕にも仕込んだ防護で守り、

雪丸の持つ技を駆使した攻撃自体もさせないなんて、どんなに実力

や力の差があってもその本質、技として成立しない上にギリ届く射

程では一番遠く届く蹴り一本に絞れるから選択肢が減る分反応が異

常に早い」

武丸「……確かに針でパチンコ玉を貫く様な物、針がどんなに強固

で威力があり且つ遥かに玉よりも硬度を保った所で破壊する事は限

り無く不可能に近い」

「……各々が逃げの一手と攻撃の一手のみ、迷いなき戦いというカテ

ゴリでありながら全く性質の真逆な戦い、こんな戦い方があるなん

て……まるで磁石だ、互いが違う性質を持ちながら双方が同じN極

であるみたいに接近してもある一定の距離を詰め切れないなんて」

ヒロ「ふふん!あれ君感心してる?今」

武丸「バッ馬鹿言うな!あんなの卑怯者の戦い方だ!」

『だが明らかに押してるのは師匠な筈なのにハクの表情と師匠の表

情をみれば追い詰められてるのは果たして何方なんだ……いやそん

な筈はない筈ない、しかし確かに道場でも過去気の弱さからか攻撃

の意思のない相手を詰めるのは難しかった……そうか!元々戦いっ

てのは両方の意思が相手を倒す事を前提に成り立つものだ……逃げ

る奴がいても苦し紛れに行動は単純、故に本来追い詰めた方が有利

なのは其処に根底的な違いがあるのか、逃げのみに攻める側と同じ

く集中し技を極めれば対人のみの間合いよりも敵対する者の前以外

全てのフィールドを間合いと出来る、故に有利なのは逃げ……』


ヒロ「質は違うが後手必勝という言葉が武道にはあるよね、その言

葉がこの戦いに当てはまるかは疑問だと思ってたけど攻めるレベル

が違う相手でも通用するとは、まぁ確かにどんなけウエイト差があ

ろうがその差がデカければデカいほど逃げる方がその問題のウエイ

トさが逆に仇になり追い付くことも叶わないよね、強さは弱さを生

み、弱さは強さを生みだすという事か……なるほど」

武丸「……確かに逆転の一手とは殴られ怪我を覚悟しても迷いなき一

手を決める事で逆転は可能なケースは多々ある、技は豊富な相手に

対しても隙の一手だけを考える方がはるかに決まりやすい、その間

に倒される事は多くても可能性はゼロから1になるからな」

武丸『そうだ……師匠も言ってた、技を極めれば攻撃する側のモー

ションは打って出た時、攻めるモーションに防御は無いに等しい、

拳なら脇は必ず開き(出ないと殴る形にはならない腕を伸ばした瞬

間は必ず脇が開く)また頭部という弱点も近づいてくる、攻撃モー

ションは常に諸刃の刃だと、殴る姿勢が安定するレンジならそれを

補う技術で弱点を限りなく小さく出来るが大振りやああやって追い

かけ回しながらだとどうしても大きくモーションをとってしまう、

その負はあまりにも大きい。


 雪丸の表情から怒りが増していく……が即座に呼吸を整えると静

かに目を閉じ両腕を上げ円を描き両足は地面へと押し込み回転させ

た、その引き摺った足跡は円を描いていた。


『何だ何なんだ……アイツは、戦いの中であって戦いになってはいな

い、お前がそう言う気ならば俺も体勢を整えた状態で迎え撃つ』

「ならば倒せる力で倒すのみ……武の本懐、完全形態制空圏、この範

囲に入れば俺の勝ちだ、先程とは違い攻撃する事が可能な円ではな

く倒す事ができる円範囲だ、決して油断はしない、お前が目的とす

る何かを果たすには俺を倒す他は無い」


武丸「出た師匠の得意技だ、あの完全形態制空圏は他の武道家とは

比較にならないくらいでかいんだ、動き回り繰り出すさっきとは大

違いだ、あの中へ入った者はあらゆる100%の攻撃で対処可能な範

囲、踏み込んだ足は即座に反応し威力のある力の伝達を促し円を描

いた手は彼の範囲の空気の層の動きを感じ放たれる拳は迷う事なく

繰り出す脳で考える打撃ではなく長年培った本能で動く最速な反応

とスピードを出すんだ、先程とは違い動きながらでは無い完全形態

に避けに徹しようが入ってくる挙動と入る力の方向性は師匠に必然

的に向く、其処に移動が加えようとしても一歩遅くなるんだ」


 静まり返る会場の中、気を沈め肌で風を感じ気で動きを見る雪丸

筋肉は即座に反応すべく適度に張り詰めた状態を維持した。


『来るがいいハク……時間が無いのはそちらも同じ筈、このまま試合

を長引かせどさくさに紛れ逃げようとも決して、決して逃しはしな

い、どこまでも追い詰め決着はつける、俺の決意は感じてる筈だ、

そして今度はお前と俺の立場が逆だ、おそらく来るな

ら体を捻りながらでしか攻撃できない後方か斜め後方、だが油断は

出来ない、先程の音速のカラクリもある、しかしこの体は脳を使っ

ての判断や動きでは無い、如何に音速とて致命傷をわざわざ喰らう

事はない』

 半開きの目に静かなる気は瞑想状態にも近かった、威厳ある風体

に先程の烈火のような気とは違い尊ささえ感じる程に静かな気を放

つ様は神々しさすら感じた。


 緩やかに様子を見て動くハク、その動きは雪丸に攻めあぐねた様

に感じる中、会場内でヒロは何か違和感を感じ始めていた、グルグ

ルと雪丸の周りを探るハクの動きは時折しゃがみあらゆる角度から

観察する。

ヒロ「くそ僕になんかできる事はないのか……こんな敵だらけの試合

で味方は自分だけなんて」

 辺りを見回すヒロだった、賭けの対象でもある試合の中で先程の

グリマン戦の影響もありハクはギャラリーにすら命を狙われている

状況だった。

ヒロ「ふふふ……あるじゃあーりませんか!それも山程!」

そう呟くと一目散に駆け出したヒロだった。

武丸「なんだアイツ……」


 試合は拮抗した状態が続いた、飽きやすいレイダーでも緊迫した

空気を肌で感じる中ヤジを飛ばす者も居なかった。

レイダー「これはどうすんだ、俺でも分かるわ、ありゃヤベぇ、迂

闊に近づくと瞬殺だ」

 時折先程と同じく砂をかけ、舞った砂埃の視界の悪さを利用し石

を投げるハクではあったが相手はハクだ、敵に手の内を見せる事な

く本体が近づくまではその石は甘んじて受けた。

 円陣のリングは大きい、ハクは大きく雪丸を中心にその周りを確

かめるように歩いた、後方へ回ると足場は砂から平地へと変わった

が背後を取られても尚雪丸は以前として動かぬままである。


 静かに風が走った、雪丸の露出した腕の体毛が揺れ動く、彼は風

の動きすら掴み取る。


ドロア談ーー

太古の昔から人は体毛を保護する役目と見てきた、だが感じてみ

よ、夏の暑さは毛が逆立ち空気を体に通し冬は寝かせ体温を維持し

ようとする、虫も然り毛はそれだけでは無い、触覚の動きも感じよ

うと思えば感じれる筈だ、人の体は進化し退化を繰り返す、その体

の構造は親から子へ語り継がれる遺伝子の他に生存する現在すら進

化する事が出来る、未来男性が減り(遺伝子の弱まり)XXがXYに

変化しずらい時代に入った、近未来の今も仮説ではあるが男性の胸

の形状が変化してきた、更に不必要とされたかは不明であるが体毛

や体内の髪のメラニン色素にも変化は凄まじく起きている、一重に

添加物のせいでもあるという学者もいた、確かに途上国よりも経済

成長を迎えた国に多くある現象の一つだ、順番もその通りである、

体毛も減り顎の骨も退化し親知らずという現象も出てきた、未だ未

開の土地に住む者や発展途上である国では顎が発達しており今でも

親知らずは立派な歯としての役割を担っている、だが人間の全ては

最初はXXから始まる、つまり女性は全ての構造を体内にもつ人と

しての完璧な構造を持つ種である、そしてその種は生きながらにし

てその危機を体に感じ自ら体内に精子を作り子を産む事が出来るだ

ろう、そして人間に限った事ではなくそれは生物の世界では多く存

在する種がいることからも安易に想像できる、話はずれたが人の感

性や求める心はあるべきものを呼び起こし発展できるという特性を

持つが生物界では言わば一番鈍い存在と言うのが真実だろう、命の

危険を感じず堕落と快楽へ逃げる術を生み出した人類はそれに気づ

きもしないで進化という幻の世界の中で常に退化しているのだから


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