裕太戦 終結 戦いの傷跡
ーー時は来たーー
ハクは再び会場に向けて声を上げた。
「さて皆々様!お待たせしました!」
そう言うとなんと会場へと降り立ったのだった、雪丸の前へ立つ
ハクに対し雪丸もその腰を上げると一言呟いた。
「……済んだか」
「はい」
同時に隣の会場からも歓喜の声が響き渡るのだった。
雪丸「……見なくていいのか」
ハク「大丈夫」
会場から消えた誠と純衣、そしてヌクも彼らに問うた。
「最後まで見なくて良いのか」
「もう大丈夫、それに後の事は夏帆や由美達に任せてある、私が今
裕太の為に出来る事はあの場所でいる事じゃない」
誠「あのグリマンはもう大丈夫だ、目が漢になってたからな、後は
裕太に恥じぬよう俺たちは成すべき事をする、じゃねぇと裕太の闘
いに意味を持たせらんねぇからな」
頷く2人を見たヌクの顔は満面の笑みを浮かべていた。
『次の時代を担う彼等のなんと逞しく気高い事か……前世代の我らも
彼等には負けてる場合ではないな』
その言葉の意味は現実であった、振り上げた拳を高々に空に上げ
たグリマンはその拳を振り下ろすのではなく天に向かって更に突き
上げるように挙げると歓喜の雄叫びに変わっていたのだった、振り
下ろす拳に振り下ろさずこれからの人生を意味を成す決心に変わっ
た突き上げられた拳、静かに身を沈め裕太を抱き抱えると再び拳を
高々に挙げ2人の勝利に酔いしれたのであった、だがそれはグリマ
ン問いう種族からの反感の行為でもあった、『滅した敵を粉砕し我
が力と成す』その理念に反した彼の行動に多くのグリマンが彼に異
議を唱えたがそれを阻止したのは彼の直属の部下数名であった。
「彼ボルダは闘いに勝利した、愚かな人間のルールに従い勝利した
そう理解しこれより先には進めせぬ」
直属の部下であっても多くの者が理解出来ぬ状況に怒りを露わに
したがマルスの言葉に人間を使った遊びとして始めたこの闘いに熱
き戦いの末に決着した結果は彼等にとってもまた憎しみで戦ってき
た結果とは違う事の結末に困惑したからである。
戦いの場を離れマルスは問いた
マルス「場は収めたが私も納得する結末ではないとだけは伝えてお
く、急ぎ再生カプセルへ行くがいい、だがどうであれあの地球人を
我らの再生カプセルへは連れて行けぬ、限られた残されたエネル
ギーの無駄使いも出来ぬ理由もあるがそれより重要なその意味はわ
かるな」
ボルダ「理解している」
夏帆達も急ぎ裕太の側へ駆け寄ったがその怪我の前にどうする事
も出来ぬ状況を瞬時に悟る。
夏帆「酷い……」
由美「こんな……」
目を閉じ意識を失った裕太の手を握る2人の側に駆け寄る孝雄は
巨体の裕太を軽々と持ち上げた。
「早く治療を……」
三人衆が医療班を待機させ裕太は医務室へと運ばれた。
医者「もう立つことも叶わぬだろう」
その言葉に皆は言葉を失った……
戦いは虚しい、いつの世においても意思なき戦いからは何も生ま
れない、奪われ消えゆくもののみ、戦いは多くの言葉や似せられた
嘘の意味が多ければ多いほどその実態は醜く残虐で矮小な物だ、意
味とは逆の多様化しない単純な道、国や政治、強制それに付随する
多くの正義に化けた言葉や意味のカルマである、意味に意味はなく
意味は自身の中で作り育むものだ、それに多くの意味が存在するな
らばそれは虚構である、その意味が単純であればその意味は意味を
初めて力として持つだろう。
太陽を向き雑念が無い子供の時の清き真っ直ぐな心に問い、迷う
事なき単純な答えでただ単純に前を向き歩けばいい、その単純な答
えに幾つもの、何千何万の意味をつけただろう、それは増え続ける
度に迷い行く道の道しるべは遠く薄くなっていく。
私は未だ悩みその答えに辿り着けず苦しみ今も足掻き苦しむ、だ
が今ようやくその糸口を掴んだ気がする、彼を見てそう思わずにい
られなかった、裕太殿の戦いを見てそれは確信に変わり私はその悩
み長い年月をかけ自身が作り出した無数の道の前でどうしていいか
分からない赤子の様に震え動けずに居た、その知識なき赤子である
自身に答えがある事を今ようやく私は……私の前の多くの道は崩れ
やがて姿を現したその道は見たからに頑丈で強く、そして眩しく
輝いていた。
ーー丸菱ーー




