表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/237

裕太戦 13


ヌク「合ったな……とうとう、その域に達するには違いが互いを認

め合うだけでなく究極まで昇華した集中力が必要なのだ、グリマン

は執拗に自身だけを見ろと言った、それに裕太をその域まで行けた

のにはハクの助言もまた功績は大きい、不安なく、他の気遣いを取

り除いてやった、また仲間の信頼が戦いにおいて折れる心を後ろか

ら支え、防ぐ、双方が迎えたこの感情は簡単には得られん、まして

差別や偏見のある物同士など到達出来る筈もない、裕太、お前は絶

えず仲間を思い、常に後で支える事ができる心優しいお前だからこ

そ、そして戦いをそこまで昇華させる事ができるには同等に近い力

が必要だった、特にグリマンは力に固執する、そして壊されず、対

等に純粋なる『力』を持つお前しかなし得る可能性はゼロに近かっ

た見事じゃ、到達した力が今想像から現実になった、全力でやった

結果が最後の結末を逆転に向かわせる可能性の種を0から限りなく

0に近い奇跡を生むやも知れんそうなれば……」


 その世界はやがて2人だけの世界へと変わった……互いの動きが

見える、それを知っておきながら避けるものでもない、むしろ流れ

に身を任せ己の思うままに互いが拳を撃ち合う、だが互いの視野の

中に存在すべき存在は無い、そこには景色すらないのだ、裕太は生

まれて特異体質だった、その力は人と言うには強すぎた、その力が

強い程彼は本来人が体験する全力という経験すらさせてもらえな

かった人生を歩んできた、心の根が優しい彼は人を傷つける事を嫌

い、忖度する人生を歩かざるを得なかった、幼少期一度だけ家族の

危機に見舞われた際80%程の力を出した事があったがその時、健

は傷つき肉は切れる寸前まで軋み40度の熱に二週間うなされた経

験があった、だが彼はその力の代償を知った、側で看病する母や父

の涙を知り自分という存在が自分の物だけでない事を気付かされた

守る存在を守るべき行動がより愛する者を悲しませる結果に、そし

て無事ではあったものの大怪我を負わせた相手の事にもだった、正

当防衛ではあったがその家族もまた裕太の親同様、涙に濡れた姿を

見た時その両方の涙に自身の痛みなど到底及ばない深い痛みを心に

おったからだった……それ以後彼が全力を出す事はなく彼の人生は

ここまで来た人を傷つけるより自身の身を傷つけることで彼は心を

守ってきたのだった


 「我の名はボルダ!貴殿の名は裕太!お前との戦いは我の乾いた

心を満たし続ける最高の戦士だ、今までの強敵の誰とも違う、名等

覚えた事もない、語った事もない、何故、何故だ!貴様との戦いに

於いて我は真っ直ぐにお前に全てをぶつけられる、妥協もない思慮

もない命令もない忠誠心もない全てが消え失せた世界の中でお前だ

けが我の目に映り我だけに全てを対等に痛みを与えてくれる!」


「僕もだ、今まで全てを全力でする事を抑えて生きて来た、全力で

何かをする感情を教えてくれたのは君の他ならない!その意味がわ

かるかい?我慢して我慢して感情を押し殺し自身を人形の様に感じ

てきた、それは最早生きてるとい事を放棄したに等しかった……

だけどハク達は僕という存在を大切だと言ってくれた、そしてそれ

をいつも行動で示してくれた、戦いとは違う方向で僕は彼等に助け

られた、今も僕が僕でいられる様に、この世界へ誘ってくれた……

わかってる、特にハクは助言してくた、だけど本当はそれは以前

あった様に彼を苦しめてるだろう、他から見ればひどい風に見えて

もその本心は常に他にブレる事なく僕だけを見て、僕にとって最適

な世界へと導いてくれた、その悲しみを僕は……僕は知ってるから

こそ君に負けるわけには行かないんだ、その千切れるような心の苦

痛の中に答えたい、そして君は戦いの中で僕を強敵と言ってくれた

勝てた条件の試合の中で常に仲間と同じく僕と言う存在に正面から

そして正々堂々と向き合ってくれた、僕はそんな君に答えたい!」

『例え……僕が倒れても、これが最後の戦いになったとしても』


 それは互いのみに通じる共感性の中で生まれた究極の連帯感で

あった、団体競技の中に身を置くものは感じた事があるだろう感覚

それは多種ある人間の、いや生命の持つ力の一つであるだろう、

裕太は今本当の意味で体の解放に酔いしれ、自由を感じた、彼が

生きて来た生涯の中で全力を出す事の許されない事は全身を縛られ

生きる様なもの、狭い空間の中で閉じ込められ生きる様なもの、そ

の中で心を仲間に体を今異星人であるグリマンが解き放ったのだ、

侵略戦争の憎き敵という概念も消え去り、対人と生命が繋がる心の

対話の中に、過去繰り返された人類の歴史の中、された側、した側

双方が相容れなかっただろうか?個の生命体において人種や国等、

差別する社会だけが真理だろうか?うねる波の中、人も異星人もか

くあるべく繰り返された歴史の中で平和があった時代もあった、だ

がうねる波は人が動いて起こる現象である、その人が波を作る元素

であれば他価値を後から付けた物など所詮人のエゴから生まれた力

を持たぬ副産物に過ぎない、それを不可能という夢と言う力を持た

ぬ力に人は翻弄されやがて波に呑まれるのだ、個を認め個と向き合

う事こそが理想という副産物を最も当たり前の側にある現実となる

グリマンもそうだった、彼の生き方において想像を抑制し続ける社

会の中であっても生命体の考える、そして感じる力はどんな洗脳と

いう付加価値で覆い尽くそうとも真の心の中にあるものまでも支配

する事など本来は不可能な事なのである、人は知的生命体として生

まれ、想像し進化の中に退化を生み出した、グリマンもそうだ、だ

が心を持つ生命体は動物であろうが人はそれを隣人とし側に置き信

頼を生んできた、ペットがそうだ、だがその本能で生きる者や動く

動物達の中にはその域まで達し得ない種族の方が多い、それは退化

した人の中にもある、その生命体は生きる糧となるものも少なくな

い、だがそれは人の想像など及ばない理の中に生まれたとも言える

かもしれない。


 激しい攻防は周りも巻き込んだ、彼らには周りの世界は最早、異

次元のワールド、圧倒という言葉しか見当たらない世界に、魂の世

界を垣間見た感覚が彼らを黙らせ息を飲みながら戦いを見守った、

その世界はまた周りをも別の次元へと昇華させるのだった。


『主に謝罪しよう……そしてこのような物を導いてくれた貴殿にも

感謝しよう、今まさかこの星に来て我が心を満たす物が……本来な

らばこの星で力有り余り朽ちていく体を、いかに入れ替えようが

肉体の限界は必ずある、幾度も一から出直した所で本当の心を満た

す戦いに出会えた事は奇跡、故かそれ以上驚いたのは私にこの様な

自身を越える力がある事にも気付かされた、お前という敵が……俺

をこの見知らぬ境域へと導いた、こんな世界が、生命を感じる力が

破壊し無にするとは正反対、無にすべく今までの闘いはその存在が

小さくなりやがて消え失せる、その虚無感の残る闘いではなく、そ

の逆、互いの生命力が高まる感覚、負の闘いが過去であればこれは

まさに真逆、正の闘いだとでも言うのか……だが闘うだけではなし

得ない経緯、お前にはお前の仲間がいてこそ我が最大の敵へと昇華

した事は紛れもない事実、認めぬ、認めたくはない!だがやはりい

くば考えても認めざるを得ない」


ーー肉体は疲労し衰えるが反対に心の力が増幅しそれは再び心をエ

ネルギーとし新たな力を生み出していくーー


 グリマンの右の頬に裕太の拳がめり込む、血と共に奥歯が宙を舞

い今度はグリマンが裕太の左顔面を同じく拳をめり込ませる。


『認めざるを得ないこんな世界が……認めよう紛れもなくその方も含

め仲間の存在があったに他ならぬ』


ーー認める事は受け入れる事ーー

裕太『僕の最後の相手が初めての全力でぶつかれた君で良かった、

他の惑星からきた異星人など関係ない、クラスや人種、貧困、土地

国や星など関係ない、今僕は生命として同じ生命である君に感謝す

るよ、経緯は攻めてきた側かもしれない、それは過去起こした人間

だって同じだ、戦争の中に民族が全て敵なんて解釈が人間から消え

ない限り平和なんて来るはずも無い、兵器や武器など使わなくても

戦いと闘いの違いのように個でぶつかり合う事で生まれる物もある

そして今戦いは闘いと変化する』


グリマン『お前の体は限界だろう、信じられる筈もない、お前と同

様この進化の極みの俺の体ですら限界を超えた、だが貴様の体は再

生出来ぬ程のもの、まさに命を賭けた闘い、生物は戦いの中に身を

置きその実態は恐怖、逃げ惑う者を追い込み殺戮の中に己の生を感

じ恐怖を打ち消し快楽に変えるため強さを求めた、また憎しみの中

に己の憎しみをのせ、どちらが優劣で勝るか、その悪意を悪意で捻

じ伏せ己の生を感じる世界……それが母なるマザーへの忠誠に繋が

り我は生きてきた……それこそが生きた証、生きている実感、種の

魂を奪い現実世界に留まることの許された強者の報酬だと、常に、

常にそんな世界だった、憎しみの目線、恐怖の目線、その中でそれ

を越える狂気の中での強さが全てだと信じた我の世界の中は負の感

情と表現するのか貴様の世界では、だがこの世界はどうだ……戦い

であって闘いであるという言葉が相応しい、お前の目線はこれまで

見てきた感じてきたどの世界とも違う、わかるぞ……我を個の生命

体と認識し差別など微塵もない、ましてお前の目線は誰のものでも

なく我を認め我と繋がろうとした、恐怖など微塵もない、憎悪、懸

念、怒り、恐怖、どれも違う、我と魂が芯なる重なりの中で高めあ

うこの力が我の心を満たしていく……』


司会「何だ何だ!この戦いは……血は流れその熱くなった体から揮

発する蒸気が黒く、赤く、緑に舞い上がって……だけどわかる、も

う体を動かそうとも双方ともその原動力となる血がいくら何でも

足りない筈だ、決着は近い」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ