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裕太戦 ⑧ 料理


 


 先程のブレる様な動きの中、今まで体感した事のない加速の動き

に翻弄されるグリマン、敵を粉砕すべく渾身の力を込めれば込める

ほどそれは大きな力となり我が身に降り注ぐ、だがその力は緩める

所か彼にとっては更に大きな力を与える原動力にもなった、痛みや

負ける事へのプライド、その恐怖の無い彼の打撃は更に強くなるだ

けではなく心は歓喜の中にも冷静になりつつあった、やはり優位性

はグリマンにあった、徐々に傷が増えていくのは明らかに裕太の方

だった。


ヌク「裕太よ、その調子じゃ」

ヒロ「なんて事言うんですか、徐々に押されてますよ!その調子

じゃ駄目なんですよ!」

ヌク「いやあれでええんじゃ」

ヒロ「……?」

道明『裕太の目……あの目はグリマンと同じか、温厚そうに見えて

やるねぇ……奴の隠し玉はそれか?恐怖は意外と裕太には通じねぇ

みたいだな、だがまだだ、まだ勝てねぇぞ?」


殴り合いの中グリマンはその顔に笑みを浮かべた、攻撃は防戦一方

だった先程とは違い、敵を倒す最善の動きに変わる、一撃一撃に渾

身の力を込めたものとは変わり緩急をつけコンビネーションが加わ

る、裕太に対し敵と認めた証でもあった、カウンター中心に戦う裕

太にとっては全力でくる拳に対応すべき攻撃にむらが出始めた。

「これぞ俺の戦いだ!肉が裂け魂の潤滑油が流れ皮は剥ぎ取られ、

純粋なる力がぶつかり合う、その中で太古から流れる生命体の基礎

弱肉強食の理、恐怖の先にある快感、己が己である証明、雑念など

皆無な純粋たる世界、ここに来て退屈だった、俺は戦う為に生まれ

ここにいる!お前に俺の力を全て叩き込む!肉塊となり果てようが

俺の力が尽きるまで!」


裕太「まだこれからだよ!」


 徐々に押されはじめ防戦一方だった裕太の目は恐怖ところか更に

強く激しく輝きはじめた。

ヒロ「あの眼……グリマンと同じ」

ヌク「敵が我がを超えればそれをまた超える……その繰り返しが何

を生み出すかよく見とくんじゃ」

 攻撃に転じ始めたの裕太、それも乱暴に無鉄砲にではなく力を抜

きカウンターを基礎とした中に何やら呟きながらの激しい交戦状態

に入った、その動きは今まで優位性に運んだグリマンとの戦いを対

等にまで引き上げる動きに変化していた。

グリマン「なんだ、動きが……先程とは全く違う」

 更にその攻撃の幅は無限に思われるかのように広がりを見せつけ

るのであった、緩急をつけた戦いに昇華したグリマンに対し更に適

応し技を昇華しまたも対等にまで登りつける裕太。

「それにその攻撃は何だ、う、動きが全く読めぬ」

 ジャブの様な攻撃に見えた拳の直線の動きを見せたかと思えば手

刀に切り替わる、それも直線的な動きと思えば横から縦から連続、

更にば掌を返し脇腹の肉を掴む指が裕太の怪力によって千切れる様

な痛みが体の神経を激烈に刺激し地面へと叩きつける。


裕太「肉は柔らかく繊維を断つ」

その言葉の通り健を刻むように手刀で叩きつける裕太の言葉は続く

「更に熱を加え」

 掴んだ指はグリマンの背中の肉に食い込み指先の第一関節までも

が血が滲む肉の中に入り込んでいる程にがっちりとホールドされ弾

けるような裕太の腕はバンプアップの極限まで膨れ上がると強引に

地面へとグリマンの体を容赦なくリングへとすりつぶす様に引き

摺った、顔面は地面との摩擦で擦れ苦痛の中に追い込まれる。


「おおおおおお!」

唸る言葉と共にグリマンの巨大な体ごと持ち上げ雄叫びを上げた。

グリマン「グハハ!」

攻められているグリマンも歓喜に酔いしれていた。

「いいぞ!いいぞ!」

 まるで鍋に具材を放り込むかのように巨体を地面へと叩きつける

とグリマンの口からも緑の血液を吐きながらも素早く身を起こした

瞬間間髪入れず反撃に出た。


ヒロ「相手の動きに対して動きが変わってる……あんな豊富なコンビ

ネーションとバリエーション豊かな人だったのかな」

ヌク「ははん、ハクが言った言葉は助言か……あれは料理じゃ」

ヒロ「料理?そんなもの戦いに役立つとは……」

ヌク「最大の弱点である動きの単調さを料理という方法でカバー所

か利点に変えておるわ、その料理のバリエーションが豊かであれば

あるほどコンビネーションの幅は広がる、普通闘いの中で安易に自

身のスタイルを変える事なんぞ簡単に出来る物ではない、鍛錬や繰

り返し行う鍛錬の中で自ら編み出すものだ、応用はできても根本の

動きにはどうしても癖が出る、幾千の戦いの中でその動きを読む力

はさすがグリマン、異常に長けていたが、流石に裕太の動きは読め

ないじゃろな、面白い、まさか本当に料理が闘いの力になるとは」

ヒロ「しかも肉体の弱点である筋繊維を正確に見抜いての攻撃にグ

リマンの攻撃力も下がってる、あれですか、食材は多種多様、魚、

肉、更にはその種類に野菜等、歯応えや柔らかさを出すための基礎

が長けている料理人ならではの見切りってとこですか……奥深い」


ヌク「そうじゃな、人が美味しく頂くために長い歴史において培っ

た技術や知識、奴らが戦闘に長け優位性があったとはいえ、その歴

史の長さと謙虚さ、思いやり、美味しく作ろうとして発展した文明

の中で培われた料理技術は確かに彼らが戦う為に得た力に引けはと

らんということじゃな」

ヒロ「あ……あれカレーから掴み方がまるで餃子の皮の包み方、と

思えば攻撃が力からスピードに変わった、あれ多分力抜いて中火の

表現て所ですかね」

ヌク「臨機応変か、いやあれは中火というより敵の攻撃が変わった

ことによって変化した魚のおろし方じゃろ?」

ヒロ「何言ってんすか!あれは中華っすよ!」

ヌク「何じゃと?あれは三枚おろしの仕方じゃ骨の先から包丁を入

れてじゃな」

ヒロ「ここは引ませんよ!いくら師匠でも僕料理得意だもん!」

ヌク「何を!」

ヒロ「何ですか!」

ヌク「ならば……」

ヒロ「望む所ですよ……」

ヌク「終わったら料理勝負じゃ!」

ヒロ「終わったら料理勝負です!」

誠「……何を熱くなってんだか」

純衣「ふふ、人に美味しく食べてもらう、健康でいて欲しい、その

想いが料理の醍醐味よ、ほら楽しそうじゃない2人共いがみあって

もね、そして彼らも!」

誠「確かにな、いい顔してるぜ裕太も」

純衣「ハクも穏やかな顔なって焼きおにぎり作ってるわ」

誠「……そこは違うだろ」


栗栖「昔関西地方で存在していたヤンキーと呼ばれる者たちが喧嘩

の際美味しく料理してやるぜ、とか言ってたセリフがあったな、あ

の意味はこういう事が由来だったのか」

誠「……そこも違うだろ」

ハク「ガー……ガッあれでしょ?舐めてんじゃねぇぞ!てやつ、あ

れも相手からどんな味してるか舐めて味見したから出るんでしょ?

味覚が昔から喧嘩に使われてたなんて奥深い」

誠「……」




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