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裕太戦 4





裕太は服についた泥を手で払いながらも微笑んだ、だが彼もまた

微笑んだように見えた。

グリマン「力は良い、だが許せないのは何故今だ戦いの中に笑う」

裕太「僕が?ふふ、なら君も微笑んだ意味と同じだと思うよ」


グリマン「我が?何を馬鹿な」

 一瞬自分がそんな笑いを浮かべた事に言われ気付かされるグリマ

ンではあったが何故かそれを素直に認めた、それほどまでに彼は戦

いに飢え渇望していたのだろう。

「……ふっ人間風情が言うわ」


 一瞬会場は静けさに包まれたが静寂を打ち破る激しい歓声が一気

に噴き出しレイダーやグリマン側からも湧き上がっていた。

レイダー「見たかよ、あのデブ、ただのデブじゃねぇぞ、よく見

りゃあれは筋肉の部位が多い上に脂肪の衝撃吸収が効率よく働いて

やがる」

レイダーA「それにあの身のこなし、柔らかさだけが優位なら勢い

に負け体が持ってかれるのを筋力が無理やり可動域を増やしてやが

る、アイツ確か盾持ちだったな、あの力の合理性に盾はピッタリだ

どんな衝撃にも耐えれる柔軟性に力で強引に衝撃を弾き返す事もで

きる、まるで柔らかい装甲車だ」


 会場隣のハクを見る裕太と目が合った2人は互いに頷いた、その

視線の先にいるハクを見たグリマンに再び怒りが見えた。

グリマン「にしても戦士とは大違いな奴め……奴の体たらくは何だ

クズめ、だが分からん何故お前ほどの戦士が奴に従う」


裕太「誰も従いはしていない、勘違いするな、僕たちは自然と集ま

った友、仲間だ」

グリマン「仲間?同志の事か、我に同志はいても仲間という意味も

わからんが所詮は弱いものが集まり互いの弱さをカバーし合い傷を

舐め合う集団なのだろうが、我らは違う、個の強さを極め熾烈の中

に軍は成り立つ、助けと言うならば敵を一匹でも多く倒せば結果戦

いに勝利する、いわば其れこそが戦いの本髄」


そういうとレイダー達の方を見るグリマンだった。

グリマン「有象無象の人間共め……行くぞ!」

裕太「……今度は僕も行くよ」

 唸る拳にその巨体を乗せ襲い掛かるグリマンに対し裕太も先程と

は違い前に出た。

裕太「……もう少しなんだ何かが分かる」


殴り合いの中グリマンはその顔に笑みを浮かべた。

「ハハハ!ここに来て退屈だった、俺は戦う為に生まれここにい

る!お前に俺の力を全て叩き込む!肉塊となり果てようが俺の力が

尽きるまで!貴様の力が尽きるまで!」


 一方ハクは檻の天井で呑気に食料を食べて横になっていたのだっ

た、当然会場はブーイングの嵐、それはグリマン側の観客も同じ

だった、殺せ!などの声が聞こえる中の見かけの酒やゴミなどを

会場上にいるハクめがけ投げつける輩が増えていったのだった。


ハク「……真ん中にいるから早々当たんないんだよねぇ」

 まるで挑発するかのような言動に白熱する観客達、確かに四角の

リングに直接物を当てる事はできない、当てるならば放射線を描く

様に投げつける事しか出来ない、それに気づいた観客達は当たれば

痛いような物を投げつけ始めたのだった。


ハク「わぁ怖い」

 淡々とした話方をするハク、放射線状に飛んで来た飛来物を掴む

事など容易に捉えることが出来た。

ハク「酒か……予想通りだねん、もっとなんか来ないかな」

ラベルに書かれている文字をじっと見ていた。

「ふむふむ、じゃ食べ物をお願い!」

レイダー達「くそ!何だあいつ!おい飼育小屋から糞持ってきやが

れ!」

 そういうと糞を投げつける始末、大量に投げられるゴミや糞、酒

瓶などを器用に集めていくハクだった。

ハク「糞か、ふーん、なんちて、まぁこれもお宝になるか……」

クンクンと匂いを嗅ぎ分けるハク

「くっさ……これはコッチと、コレは臭くない草食動物か、コレは

こっちと」


 飛んできたゴミに火をつけるハク、彼の座する所は既にトタンの

端やゴミなどで快適な床作りが完成していた、檻の隙間には飛来し

た棒をを組み立てクロス状にしたものの上で火を焚き飛んで来た糞

のいくつかを乾燥させ始めた。


 ペットボトルも多くそれらをじっと見つめるハク、糞を見ながら

何か真剣に見つめる姿は周りから見れば気持ち悪い。

「ふむふむ世の中に無駄はないクソもまた何かに使える筈っと」

 数あるクソを仕分けしだす始末それをいくつか作ると次は彼にし

ては違いのわかるクソをまた飛んできた缶詰の空き缶に入れると火

を灯し乾燥させたのだった。


「うーんなんか飽きた、他にも何か飛んでこないかな」

 そう呟くとレイダーに向かい挑発するように横になるとわかりや

すく反応するレイダー達。

レイダー「あの野郎!舐めやがって」

 数あるゴミはさらに増えていく、先ほど作ったペンチのボルトを

外し先にこれまた飛んできた平たい板状のものに穴をあけ再びボル

トを通すとラケットの完成。

 飛来するゴミはハクのいる場所、つまり柵の中央だ、飛来して当

てるのには楕円形を描く軌道、大したダメージは受けないのを理解

しながらも怒りが収まらないレイダーは賭け対象でもある事から、

怒りと欲望にやはり物を投げつけるという動作を止められなかった

のである、あぐらの格好で座しながら緩やかに飛んでくる物体を子

供がバトミントンでもする様に雪丸に向け下へと弾いていった。


雪丸「……」

 同じく座する雪丸はその飛来物を手で弾いていく、無数に飛び交

うゴミを高速でいなすのは見ていて素晴らしい技であった、中には

重量のあるゴミもあれば刃物のような危険物も当然混じっている。


 上と下では全く環境も違う、それはそうだろう、飛来する物体は

下へ行くほど重力が働く、重い物はそれだけで危険物としては充分

だ、対してハクからすれば緩やかな軌道を描くゴミたちはお遊戯の

域を超えない更にラケットで加速させて落ちるゴミは油断の出来な

いものに変化するからだ、そしてその飛来物に合わせハクは酒の中

身の入ったジンを落とすも雪丸は酒瓶をも豪快に割りながら弾き飛

ばす、酒は雪丸の体にびっしょり付き大人しく座した雪丸も立ち上

がると天井にいるハクを睨みつけた。


ヌク「ハクに向けられたゴミの全てはハクの近くを通り過ぎる訳も

ないわな、楕円を描き無数に降り注ぐゴミの中にハクが打つ加速し

た危険物も混じる訳じゃからの……重量物も観客の距離と高さから

は上まで投げつけ届くには限界がある、故にハクは安全に、雪丸に

は重力も加算し危険という訳か、だが彼奴もよくもまぁあんだけの

数を捌ける卓越した技術があるものだと言いたいが液状の液体まで

選別する事は不可能じゃろうて」


レイダー「おいおい雪丸がべしょべしょなってるぜ?くくっ普段

クールな奴があぁなると笑えるな!いい気味だ!」

ここぞとばかりに畏怖を抱く対象だった雪丸を嘲笑うのだった。

レイダー「だがあのハクって奴俺達が投げ入れた物を選別しながら

攻撃してやがる」

 ハクにとっては全てのゴミは武器となりまた補給物資でもある、

会場が雪丸のびしょ濡れの姿に沸くと投げ入れが一旦落ち着く、大

人しく座していた雪丸も立ち上がると天井にいるハクを睨みつけ

たがハクは物ともせず飛来し会得した物資を見て楽しそうに仕分け

していた。


 雪丸はそっと目を閉じると見開いた眼で観客に呟いた。

「投げた奴は殺す……言った筈だこの戦いを汚す物は必ず殺すと」

レイダー「汚ねぇのは前だろうがアヒャヒャ!」

 その言葉と同時に地面を叩きつける雪丸の拳は地面を抉るかのよ

うに土埃を挙げ轟音を鳴り響かせた。

 レイダー達はその怒りの表現に圧倒され静まり返ると雪丸は再び

座するが一瞬上を見上げハクを見ると舌打ちしながらも大人しく座

した。

道明「おもしレェなアイツ!」

そう言うと道明は叫んだ。

道明「おいおい情けねぇな!檻に入ったライオンだが何だかしれ

ねぇが何を子羊みたいに怯えてやがる!それでお前達はレイダーと

名乗るのか?ハハハ!恐れ慄く子羊レイダーってか!」

仲間「確かに確かに、いかに吠えようがコチラには届かねぇ攻撃に

びびってちゃ今後このコミュニティは舐められるな!忘れたか!子

レは祭りだぜ?他のコミュニティの奴らも多くいる、情けねぇ姿を

見せられんのか?俺は怖かないぜ、お前らもそうだろう?」

道明「そうだ!俺たちゃ無法者だ!いかに雪丸とて数にはかなわ

ねぇ、その真実こそが俺達の強みだろう?叫べ!汚ねぇ言葉こそが

俺たちの証じゃねぇのか!おら叫べ!」


 その言葉に乗せられるように1人、そして1人が声を上げ始めると

やがてそれは大きな渦となり騒ぎは再び会場を取り巻いた。

道明「雪丸……休ませねぇぞ、それに面白ぇからなハハハ楽しまな

きゃな」


ハク「糞は乾燥させると燃焼剤代わりになるから美味しいご飯が作

れるよ?先輩もどう?」

 問いかけに答えず座する雪丸の口元が苦味走った様に歪む、その

片端には酒の入った瓶に元々入れてあったロープを解くハクを見

た雪丸は更に形相が変わり始めた。


ハク「えーと一つ、二つ、三つと」何やら呟くハクだったが眠く

なったようで横になり裕太戦を見ていた。

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