内部進行
ーー施設内部ーー
通路の途中で止まるポルキは壁に向かい指を歯で傷
つける、そして自らの血液を壁に押さえる様に押し付
けると壁から枠の様なものが浮き出るとドアの様に部
屋へ通ずる小さい通路へと繋がった。
ポルキ「ここは比較的安全だ、小さな私の様なものし
か入る事が許されない場所だ、知能型は時折この施設
を提供した機械文明との交信も行われる場所だ」
相葉「なら此処が拠点だ、まずは内部の脱出通路の
地図を作成、それに対する安全性の確認と手配だ、通
路を進むと比較的綺麗な壁のある場所へと到着する。
ポルキ「この施設のモニターは各部屋や廊下を映し出
す、広大な敷地に目を凝らし目で見た情報で大まかな
地図を作成する必要がある私1人が内部を知っていた所
で私に何かあればそれで作戦は失敗、それを防ぐ為の
ものだ、彼らが私の生存を知りお前達と共に行動して
いる姿を見れば当然私も殺されるだろうからな、その
作業をお前達で相談しここに何人か置いて行く、最低
でも3人は必要だろう」
勝木「……無茶言うな、これじゃ関西エリアのどこ映
してるか分からない防犯カメラで地図作れって言って
るような物じゃないか」
ポルキ「ヒントをやろう、進化の過程は違ってもこの
施設は生きている、そして魚類や虫とは違いグリマン
の体の作りは人間と似ている、呼吸を肺から取り込み
排泄もある、食べるための器官もある、頭に構造を叩
き込め、そうする事で全体が見えてくるはずだ」
相葉「成程、エネルギーをとりそこを腸が吸収し取り
込まれたエネルギーを血液で運ぶ、食べる事がないこ
の動く要塞はいわば点滴で動く様なものといえど排出
器官があり酸素を取り込む器官、毒素を中和する器官
には全て効率という基礎があるはず」
勝木「まぁ言ってる事はわかった……血液があるなら
まずはその心臓から探せばいいって事だな、全体の構
造が分かればモニターがどこを映してるか想像はつく、
施設の建造物の惑わされる事は無いかそして分かれば
今度は施設で細かい場所の地図を書く」
ポルキ「血液のルート割り出しが出来れば次は動脈を
お前達の文明でいう国道として表せば自ずと地図は完
成する、そして此処から南に1キロ先が肺にあたる」
勝木「だとしても大変だぞ」
ポルキ「いいか念の為、装置には触るな、全てはラン
ダムに映される映像だけを見て作れ」
ポルキ「そして私には一つやる事がある、悪いがこの
部屋で今までの通路の地図を書いておいてくれ」
相葉「どうする気だ?」
ポルキ「私は……やる事がある」
思い詰めた感情を示すポルキだった。
相葉「理由は」
ポルキ「……」
相葉「言えないか……なら1人で行動させる訳には行か
ないな、裏切るとは限らないからな、いくらハク達が
信用していようが油断はできない」
ポルキ「だが行かねばならない」
相葉は考えた、行かねばならないという言葉がどう
も引っかかるのだった、彼もポルキの事は信じていた、
だが簡単に信じ切ることは危険であることも承知して
いる、だが種を裏切って地球に居続ける事は彼にとっ
て完全なる孤独を意味している現実、話は聞いていた
が彼にとっても我らと離れる事は終わりを意味する、
それだけではない、世界の中で人と接する事が出来る
ポルキの存在はあまりにも大きいメリットでもある事
に、それに彼を信じなければ作戦自体が成り立たない
のである、信じるしか無かったと言っても正解だった
ろう、信じないという事もあったがそれよりも、種族
を裏切った彼1人を行動させる危険、作戦の成功の方
が遥かに心の葛藤の割合を占めていた、それ故に彼に
断る理由をつけささない相葉なりの社会で培った人を
動かす、断る事ができない心理学的な配慮でもあった。
相葉「なら俺もついていく、理由は当然だよな」
ポルキ「信用と言う言葉は言うには容易いが確立させ
るのは難しいのは理解している、だが身の保証は出来
ない」
相葉「言っただろう裏切られたら計画が成り立たない、
そうなればどちらにしろ命は無い、俺には家族がいる、
成功する可能性をみすみす見過ごす様な生き方はサラ
リーマン、商談のプロとしていないさ」
そういうポルキも彼の心情を読み取っていた、相葉
もまた身の保証が出来ないという言葉に裏切りはない
と確信していた、だがついて行く、それは裏切り行為
をした体の小さな彼を1人には出来ないという信頼の
証、互いが心を読み合った言葉と裏腹の真意を感じた。
ポルキ「……人とは面倒臭い生き物だな」
相葉「……そうだな、俺も本当は行きたくない」
ポルキ「行きたくないが来るのか?矛盾と言うのか、
この星では」
相葉「お前の行動もそうなのだろう?」
ポルキ「……これが矛盾と言う物なのか」
相葉「お前達はどうする」
仲良く3人で首を横に全力で振っている彼等を見てポ
ルキが笑った。
ポルキ「グフフ」
相葉「まっこれが普通だわな」
「無矛盾」
ポルキ「……難しいな日本語は」
相葉「言語の発展の仕方なんだろうな、日本語はより
言葉に微妙な表現すら伝える事ができるように発展し
たと俺は思う」
ポルキ「成程、一理ある、脳に入った情報をまとめる
と言語の幅に違いを感じた」
ポルキ「簡単にいうと太古の言語の発達の仕方が違う
といった所だろうか、言葉の起源は名詞を付ける事か
ら始まりそこから広げていく物だが英語等はその中心
から考えると表現が必要になればそれを無造作に足し
て広げていった感があり日本語等は中心から正確に足
していった感の違いがある」
相葉「そういえば外人などはオーバーアクションが多
いにはそのせいか……言葉の間接部分を自然と補うた
めにそうなったと、それに対し日本人はアクションが
小さいのはその必要性がなく、きっちり正確に言葉を
発展させた故の言葉の表現方法が多彩な訳か……俳句
に例えられる季語や575等確かに他の国よりもその表
現方法は多彩、まぁ……だから面倒で覚えにくいとも
言えるが、漢字にひらがな、カタカナなどもありより
正確にその物事を伝えられるように発展したと解釈す
れば確かに、俺が英語を覚えたのも根本の成り立ちが
違うから日本語に変換すれば文化と同じく噛み合わな
い部分、足らない部分が出るからか……そりゃ1000の
言葉と100の言葉を同じ文に正確に表現することは難
しいからか、現地に行って覚えたやり方は赤ちゃんと
同じく頭より耳で覚えた感があるな、ニュアンスとい
うのか簡単がゆえに難しい……特に日本人が英語が苦
手な理由はそこだったのか」
「つまりより正確な言葉を伝える方法として発展した
言語としては英語は色々言葉を足してその目的に近づ
けていく、最初の幅が広いから大雑把になるが日本語
は中心にある言葉からその幅を広げより正確に物事を
使える、同じに見えても中心に向かうか中心から広げ
るか大きい違いなのかも知れないな……」
「地球に住む人より宇宙人に教えられるとはな……」
ポルキ「学問も同じ、専門であればある程一つのこと
を鍼のように突き詰めるには特化するが全体を見る視
野は逆に衰えてしまう、それは自然とも言える、我ら
星間連合でもそれを独自の文化を補うことで巨大な力
を得たと言っていい、どの星も他の星に負けないテク
ノロジーをもち、その特性を活かし役目を担い星の領
土拡大、監視物資を分け合うのだ」
相葉「だがよく連合間で戦争が起こらないものだな」
ポルキ「過去それは我らの中でもあった、長い、長い
年月を経て平定はなされたのだ、だがその裏ではお前
達が今起きているような現象が起きたからだ、大きい
力が現れた時、それに対する対抗策と言っていい」
相葉「まさか……お前達でも叶わぬ敵がいるという
事か」
ポルキ「……上には上がいる、日本語にもあるな、だ
が連合をまとめた物は武力では無かった、ある一つの
星がそれを成したのだ」
相葉「……武力以外?」
ポルキ「……そうだ、平定は武力という自体の考え方
を超えたテクノロジーだ、平定は何かしらのメリット
デメリットで全てが整わなければ成り立つものではない」
相葉「興味あるな、その星の物は地球侵略の複合連合
の中にいるのか?」
ポルキ「来てはいない、彼等に戦闘の意思はない、だ
が我ら連合でも勝てない絶対的な別の力を持っている」
相葉「それは何だ」
ポルキ「それを知る事が大切なのではない、それに気付く、気づこ
うとする意思がやがて到達する力の源だ」
ポルキは囁く様にもう一言付け加えた。
ポルキ「もう一つ存在する脅威の存在、あれは別物だ」
相葉「……なんだそれは」
ポルキ「人の想像をも超える次元の存在、意思があり
生命体でありながら異文化……いやそういった次元の
ものでも無い、我らが束になろうがその常識の範囲で
は倒せないものはある」
相葉「……」
ポルキ「果てしなく続く宇宙の中で放浪し文化、進化
を止められぬ理由……出ないと、出ないとそれこそ」
相葉「そ……そんなものがブラックホールの様なものか」
ポルキ「そう言った想像が既に超えたものだ」
相葉は息を呑んだ……その存在は自分の視野、発想、
想像、空想を超えた物であると理解したからだ、未知
なるものへの恐怖、それは今味わっている、だが彼ら
が恐る程のものが存在する事態が言いようもない恐怖
そのものだった、それを理解したからこそ想像ができ
ない恐怖にそれ以上の問いは無駄だと悟った。
3人を置いて進むポルキと相葉は地下深くの深部に
近づいていたそこにある部屋へと入った、一見何もな
い壁に見えるその入り口は壁に彼等の文字を入力する
と入れる仕組みのようだ、文字というよりマーク、
古代エジプト文字やマヤ文字の様な物だった。
隙間のないドアは珍しいものではない、研磨技術が
高ければ見た目にはわからない様なものが出来上がる
のは既に現代の技術も存在していた、特に肉体である
肉のようなもので作られている施設においては建造物
とは違いそれを更に発見しにくい構造であった。
ポルキ「他の部屋は閉ざされていた、そしてここが
一番近い、他を当たっていたら間に合わない、そし
て私の登録抹消が済んでいたらここで終わりだ」
ギョッとした表情で慌ててポルキを止めようとする。
相葉「や、やめろ、そんなの済んでるに決まってる
だろ!」
ポルキ「安全な確率は高い、先ほどの部屋よりもここ
は他種の種族が母船のメンテナンスに使う部屋の一つ
だ、この船は我らの遺伝子テクノロジーと他文明種2
部族のテクノロジーからなる共同制作物である、我ら
は情報を提供しただけで内部構造や実際操作している
のは他民族と言っても過言ではない、故にロック式が
種の統一情報以外のものが使われている、それに他の
部屋にも入れる確率はさほど低くはない、セキュリ
ティーという概念で言えば我ら種の上層階級であれば
あり得ないが、我ら地球に残されたものは全てマザー
に見限られた存在、其処に知性は乏しく戦闘能力と
本能が高いB級品、故に機械の扱いに慣れた私の様な
頭脳特化の種の数は多くは量産されない、それは以前
言ったように反乱を防ぐ為、それに指揮は上層部がす
る、我ら頭脳型は3000体にして一体生産されれば言
いと言っていい」
相葉「知能が高いと……叛逆や内乱を防ぐ為か」
ポルキ「……考えたくはないがそう理解したならそう
だろう、だが私の口からはやはり言えぬのだよ……
その絶対的な感情は純粋にして未熟、故に本能がそれ
を許さないのだ」
相葉「親には変わらない……そうだからか」
ポルキ「……それでもはみ出しものは出ると言う事だ、
ともかく我等特に戦闘タイプのグリマンは野蛮性を
武器と誇りにしている、その中で統率や管理体制は皆
無に等しい、この星で言う猛獣にして知能は10歳と
言った所だろう、だが我ら全てが統一し行動する理由
がマザーに対する忠誠心、お前達でいう親族間の感情
に近い……故に裏切る事も0に近い」
相葉「「……そうとは限らないだろう、地球人だって
親を親とも思わない、子を子とは思わない輩も残念な
がら少なくはない」
ポルキ「そう言ったものは自由が与えた副作用なもの
だろう、それに10歳程度の子供が親に逆らうことがい
かに難しいか、反抗期などホルモンの影響だ、他の者
に頼らねば生きては行けない事には変わらない、それ
に我らはお前達の言う解釈の自由はない、だが、いや
……自由と言いなが自ら自由を無くしているのは人間
の方である事もまた真実である」
彼が指を置きまた違う文字を書くと一面に数多くの
モニターに映し出されたものを見て相葉は驚愕した……
相葉「……なんだこれは!」
ポルキ「これが彼等の目的であり我ら種族が地球人、
いやアジア領土の権利を得た我らの理由だ」
相葉が見たものは彼の常識や倫理とは大きく違ったも
のだった……
ドロア談
ワシは壊滅的破壊が予想される侵略に対し異星人との
コンタクト方法にも着手した、だが異星人に対し言葉の
壁は予想よりも難しい、彼らにそういった意思があれば
彼らのテクノロジーでは簡単なのだろうが未だ争いが絶
えない地球はその分野の進化は鈍足だ、通常言葉は便利
だが事、戦争などにおいては言語の共通は人を大きく結
びつける、銃殺など戦争において会話ができる人間同士
では情が生まれやすいからだ、人が真に望む健康、薬や
外科的技術などにおいても利権が絡み争い利己を第一に
考える種族の致命的欠陥だと言える……長い年月が人間が
この地球を支配した現代においても未だ統一化されない
問題、そこには多種族への畏怖、そして差別、あらゆる
ものが未だ人間を支配しているからこそだろう。
そこには言葉を統一することにおける消えうる文明の尊
厳やプライドなどがある、未だ地球はそう言った狭い
視野しかもとない下等生物なのだ。
そこで考えたのが万国に存在する共通点を割り出した
この機械である、この小さな携帯型翻訳機は動物が行動
に使うパターンを何億通りに記憶させ言葉を絵やモーシ
ョンなどで表現するものだ、たとえば笑えば人は笑う動
画が流れ、褒め称えるには手を合わせ拍手する、そこの
物をとってくれといえば画面には手が物を取る映像が瞬
時に流れると言ったものだ、地図などは言葉を発すれば
地図と連動し言葉で伝えるより正確にナビとして起動す
る、大まかではあるが人が物を掴む、怒る、笑う、伝え
ると言った動作には4本の手足、指の動き顔の表情など
決まったものがある、これを使い言葉の通じない民族等
に使ってみたが実験は成功した、西洋の表現が身振り手
振りが多いのと同じだ、その補助的作業を翻訳のメイン
にしたのがこの装置だ、これならば異星人といえど言葉
がなくてもある程度表現することが出来る……筈だ、
だが確証はないが、こうやって一つ一つ人類は生き残る
術を探さねばならない、会話が出来ればそれが大きな一
歩となる筈だ、わしの研究が進んんだとしても、この地
球はまだまだ幼子と同じ、天才がいたとしてもその発明
を考えを拒み押さえつけ利権にしようとする種族の未来
はもう既にないと言えよう……だから狙われるのだろう、
だが諦める訳には行かぬ……
例え人間に狂人と言われ、罵られようが、救おうとする
人間に命を脅かされたとしてもワシは……
ワシは……止まる訳には行かぬ。




