侵入
勝木「おい本当に合ってるんだろなぁ……」
波打つ内臓のような通路が続くとハク達が侵入した
通路、皮膚のような弾力性のある通路をポルキの案内
で進んだ、彼等の目的は実験体にされるC棟に脱出計
画を伝える事、祭りが始まりグリマンも参加する事か
ら彼等種族の関心が高い事、故に内部の警備が手薄に
なる以外にポルキにもこの機会に乗じ思う事があった
からだ、それは何か、危険を冒してまで行う理由、そ
して何事もなければいつ行われるか分からない実験に
対し恐怖の中にいるC棟の者に安直に救出作戦を伝え
ると内部の混乱を招くからだ、誰もが助かるかも知れ
ないチャンスを目の前にして実験体に選ばれれば混乱
と妬み等から騒ぎを起こす可能性は高い、密告も充分
あり得る現状からの事前報告は危険だったが状況は変
わった、グリマンが祭りに興味を持った事、そしてそ
の相手が彼ら戦士の中でも最強に入る者だっ事、更に
元々がいい加減な管理体制だった彼らに輪をかけてい
た事、元々が決行は混乱を防ぐために知らせず行う予
定ではいたが、思わぬポルキという協力者によって探
査が上手くいった事も含め決行間直の今が最大のチャ
ンスだったからだ、事前に知らせられる状況は脱出を
スムーズにする、行き当たりばったりで何とかなると
いう無計画なハクの思いつきも馬鹿にはできない、全
ての事柄は始まってみないとわからない、わかり始め
てこそ事は進むのだ、その行動に仲間が皆考えチーム
として自然に起動し始め各々が一つの目標を指針に様
々なアプローチをかけ進んでいた、だが考え抜いた作
戦でも予測不能な状況に中、進む事が結果を産むいい
例だった、時は待ってはくれない、作戦を考え抜いて
いたならば結果何も得られなかった、だが答えはまだ
出てはいない……これからの出来事は苦難の連続が続
くのは誰よりもポルキ自身が気づき始めていたが予測
の範囲を越えない状況に彼もまた単独での行動を始め
たのだった、まじかに迫る台風を含め彼等の行動は全
てがミスの許されない時の狭き中忙しく事を進めてい
た。
植木「意外とすんなり進めてるな」
相葉「ポルキもいるからな、それにクリスが作ってい
た地図も」
ポルキ「我ら種だからだ、我らはずさんだからな、他
の地域で活動している同胞の星達には通用しない、特
に機械文明に特化した奴等もきているからな、もし地
球人が我ら種を制圧できたとしても、その先にいる種
を制覇していかねば地球は取り戻す事はできない、だ
が連合での役割の中で我ら種がその数を増やしこの星
をいずれ制覇する事に特化した種だからこそ遺伝子化
学で進化した我らが船を提供されこのように、ずさん
な体制で連合に参加している意味だ」
勝木「おい……この脈打ってる水道管みたいなの、ま
さか血管って事ないよな……なんか表面もぬるぬるし
てるぞ」
一つ一つよく見ると脈打っているのがわかる、とこ
ろどころ皮膚で覆われた廊下もあったが内臓の中と思
われる部分も多かった。
ポルキ「そうだ、毛細血管の一つだハク達には言った
がこの船は生きている、故に自己修復能力もある、当
然それらを維持する為に血の存在もある、鉄分は微量
故にお前達人間の様な赤ではないがな」
勝木「……ふーん」
真っ直ぐ進むとドームの様な場所に出た、そこは異様
な光景が広がっていたのだった……
相葉「なんだ……何なんだここは」
ポルキ「ここは兵士を増産する場所だ」
相葉「まさか……」
其処にはグリマンの形をした、いやその形状が出来
上がってきている過程と言うべきか、中には骨格しか
形成出来ていないものも多くあった、肉の中に入れら
れた様なものの裏には光が差し込む、中の様子がうっ
すらわかる様な感じだ、その前にはモニターがあり解
読不能のような見た事の無い文字列が並ぶ。
ポルキ「これは子宮の様なものだ、中には哺乳類の様
に卵子と精子から構成された自然形態の者、また右側
にあるものは一つの遺伝子から別々に構成され体が造
られた時点で中に血液を流し機動させる内臓一つ一つ
をバラバラに構成する為、より早く兵士を産む事がで
きるものだ、そして左側、二つの体が入っているだろ
う」
皆が目を丸く凝視する中、勝木が怯えたような声で呟
いた。
勝木「これ……に、人間じゃねぇか!」
ポルキ「そうだお前達人間だ、我らは薬を飲んで地球
の酸素という毒の濃度を中和する事で呼吸をしている、
それでも半日に一回は中和カプセルに入り毒を消さね
ば生きられない、侵略が生活の一部になっている我ら
はあらゆる適合する体を持つ万能身体を目指しては
いるがそれは不可能に近い、宇宙線、放射能、太陽線、
温度、湿度ウイルス、細胞、星の生物は個々にあらゆ
るそれを進化という過程を長い時を経て生まれた生物
だ、環境が違えばあらゆる形態の生命体が生まれるの
は必定だろう」
江頭「そんなに違うものなのか?生き物って環境が似
てるから生まれるものだと思ってた」
相葉「それは誤解だ、恐竜がいた頃と今の大気の環境
も全く違う、それに人間だっていいか悪いかはわから
ないが100年も経てば平均身長も大きく変わる、それ
に高所で生活する南米ペルー当の人間と我らでは酸素
濃度の違いはあるのに苦しさや運動能力に大きく違い
はあるし、ギアナ等は同じ時代の中で生きても固有種
というものも多く存在するからなぁ」
植木「それより何でコレ人間と同じ所に入ってるんだ
……」
ポルキ「地球で進化した人間の遺伝子や細胞を調べれ
ばお前達地球の育んだ歴史がわかる、それに適応する
為だ、その一つは本来毒である酸素を克服した要因を
解明する事にある、それ以外にも菌、ウイルス、病気
等も同じだ、そのままで活動できる種族は宇宙にも存
在しない、そして地球に我ら種族が弱肉強食、この星
の頂点になるべく増殖できる新たな仲間を増産する事
で侵略は完了するのだ」
植木はモニターのグラフを見た、何やら変動が激しい
ものがある。
ポルキ「これは今現在の地球に存在する固有種、つま
りお前達人間や哺乳類、爬虫類をはじめあらゆる種の
数を
グラフにしたものだ、お前達のいうゾンビはまだ人間
と言っていい、我らの種の数はアジア範囲内でも本体
が撤退した今、まだ数はお前達に負けている、だが増
産体制を定期的に行える我らは50年もあればこの地上
の種の頂点に立つことは造作もない、三分の一を越え
れば法則は全てを変えていく、だが意志を持つ種はそ
れを人工的に増やす事ができる故に50年も経たずに完
了するだろう」
相葉「ただでさえ……人と呼べる意志を持つ人間がこ
の数字のどれ位いるのやら、もう人類は風前の灯か」
勝木「しかし地球と違いそれぞれに文化が違いすぎる
ぜ、すごい文明だな」
ポルキ「そうとは限らない、例えば我らの種に関して
はお前達人間社会の利で動く社会とは違い倫理などな
い文明ではクローンと言ったか、お前達は、そういう
のを普通に行えるからこそ進化は早い、そして情報を
国という機関で利権という概念で動くお前達には大き
く遅れる原因であろう、クローン一つにとっても病気
進化、薬、大気、あらゆる実験が行なえれば凄まじい
スピードでの進化は可能となるのはわかるな、動物
で実験をせずあらゆる薬を試すことができる、それ
は経費の削減にも繋がる、病は消え種は増え、そして
新たな土地を目指すのは人間以外の種にとっては自然
な事であろう、人でありながら人を否定し人を生かし
ながら人を殺す、それがお前達人間社会である、どち
らが倫理的なのかはそれぞれの考え方だろう、だが
私もお前達を見てその論理には懐疑心があるのも確か
だ、それにこの星でも全ての研究機関が情報を統一す
ればおよそ5000年、いやそれ以上の期間で進化する
過程を200年程で完了できるだろう、地球の愚かな同
種族での殺し合い、危機感がない低脳族ではいたしか
ない事だが、我ら種は近くに同等と思われる文明が近
くにありそれを認知していたからこそ、そういった事
が少なかったのかもしれない、外に外敵がいれば目は
そちらに向き統一する意志を束ねやすいからな」
相葉「資本主義の根底を覆す意見だな」
ポルキ「そうとは限らない、ただ利に固執しすぎた愚
かな種族とは言わざるを得ないがな」
ポルキ「だが希望は捨てない事だ、生命体である事は
生きる事を諦めない事、それのみだ」
勝木「植物や動物だって生きてるぜ?そんな意志なく
ても」
ポルキ「生きているものは本能でそれをこなす、基本
的に水を飲み食べ物もとる、それは全て生きる為の行
為であり本能的に行う生きる意志だ」
勝木「成程……無意識でも同じか、そしてそれが生命
体の基本であり唯一無二というのも何となくわかるぜ」
ポルキ「その意志は進化となりより適応していくのだ」
相葉「確かに……湿度が高く海が地球の殆どを占めて
いたら生物は地上を目指さず海という土地に適応した
進化をしていた可能性はかなり高いだろう……かつて
爬虫類が地上を占めていた時代があった様にエラ呼吸
し酸素を水から得ていてもなんら不思議では無い、魚
はそうやって生き続けているからな」
勝木「だが進化ったって魚が知能を持つまでになぜ今
でも進化していないんだ?イルカなんて人間よりも脳
はでかいんだろ?巨体を持つものは基本的にバランス
をとるために脳も勝手に大きくなるじゃねぇか、あ、
でも恐竜は小さいとは習ったが」
ポルキ「其処は我々にもわからぬ……だがあの星の者
達なら知っているかもしれない、その超えた真実こそ
がマザーが目指す境地だと
私は思う、が……だがその真実のヒントをくれたのは
下等生物……い、いやすまない、お前達人間であるあ
のハクという人物だった、ハクとこの話した事がある
するととぼけた顔で彼は近くにある本屋という建物の
中から本を取り出したと思えば私に言ったのだ」




