純衣戦 終結 それぞれの力
その様子を眺めていたハクが替わりの棒を純衣に
投げ入れる、武器を失った黒田は辺りに武器はない
か目で追った、だが近くに武器は落ちてはいない、
だがなんとハクが手に持っていた自らの棒を黒田に
投げ入れると俯いたまま手にしっかりと持った黒田
だった。
黒田「……何故、俺はお前の女を殺すぞ」
夏帆「そうだ!何してんだこの野郎!頭おかしく
なったのか」ハクは周りの怒号の声を無視し鼻歌混
じりに座して武器をそしてゴムチューブやらを集め
て何かを作っていた。
由美「あんたの男頭おかしい!」
黒田「……よかろうならば殺す」
其れを見ていた輩の1人が剣を投げ入れる。
輩「よろしいよろしい勝つ為ならばプライドを捨て
敵の武器をも躊躇せず使う、勝てば正義、主張は生
きて勝ったからこそ言葉に出来る、踏みにじれ、人
の感情など甘さなど全てを奪い取れ、そうだそれで
いい、ようやく吹っ切れた様だな、使え」
長尺の大型の剣が黒田の前へと放り込まれる、そ
の武器は重く棒の長さに負けてはいない程の禍々し
い剣だ、重さ長さ共に純衣の持つひ弱な棒と比べる
と勇猛果敢という言葉がピタリとあった剣であった
投げ入れられた剣が黒田の視界に入る、怪しく光る
剣を空いた片方の手を伸ばし力強い腕で強く振ると
見た目に反しない轟音が辺りに響いた、幾つもの快
楽で斬り殺した人間の怨念の様な禍々しい音を立て
る、右手に剣、左手に棒を持つ黒田はその両方をし
ばしじっと見つめた。
打ち震える体に苦悶の表情を浮かべ目を閉じる、
だが黒田の手から離れたのは剣の方だった……
輩「テメェ何してやがる!棒切れなど重さと切れ味
で勝る剣で力でなぎ倒せばよかろうが!」
理解に苦しむ輩達の中でハクが呟く。
ハク「そういう事」
輩「何、どういう意味だ?」
ヌク「幹部が何故あんな刺されても運動能力に支障
なく動けてるか、そういう事なんだろうな、余程の
長けた技術と知識が無いと急所を外し後遺症を残さ
ないなんて事は出来ん、それ程に奴は努力した証か
……だが許される物ではないが、まだ落ち切ってな
いと……拷問器具に苦しんだ分、あんなに悪鬼羅刹
となった訳もそれなら頷けるの、奴も後悔と懺悔に
押し潰されそうだったのかもしれんな」
輩「……そう言われれば確かにクソ気づかなかった、
あいつも偽善者側の人間だとは、だが罪は同じ、い
や理解してやっている俺達の方がまだマシだ」
ヌク「かもな、だが奴は罪を償う事ができる向きに
気が付いた、お前らはその道を破壊しようとした、
この差は埋められるものではない、落ちた人間にも
這い上がれる者とそうで無いものも居る」
ヌク「だが……罪は罪、償える事なんか何をしても
出来ないのじゃどれだけ人を救おうが罪は一生背負
わねばならん、だがその先には何かあるか無いかは
神のみぞ知るだがのそれでも光が人の希望である事
には変わらんのだ」
俯いた純衣の震える体に皆が心配した、がその中
で1人ハクだけは楽しそうに純衣を見ていた、ハクの
笑顔で誠達は皆心配する純衣から目を離し再び己の
戦闘に集中し始めた。
豹「なんでだ!お前ら仲間を見捨てる気か!」
誠「ハクがあんな楽しそうにしてんだ、大丈夫、疑
う余地なんて純衣とハクの2人の中には無ぇんだよ」
夕陽が戦闘場を照らし始め互いが同時に顔を上げ
た時、黒田は驚く、それは純衣の表情が笑顔だった
からだ、其れもとびっきりの笑顔だった、震えてい
ると思われた仕草は足でリズムをとり歌を口ずさん
でいたからだ、対し黒田の表情は険しく顔色も悪い、
怒りに紅葉し赤は青の顔色と交わり紫に見える程
だった、苦しい闘い、かつて経験したことがない程
の苦しみの中、同じ環境での違いに驚きを隠せずに
いた。
黒田は棒をもう一度見つめた、思う気持ちに躊躇
いながら再び激しくぶつかり合うのだった、全く動
きの読めない攻防が続く、
黒田(何故俺は棒を選んだ……)
自身にもよくわからない選択だった、だが先程ま
でと違う点はただ純粋に自身の憎悪を相手にぶつけ
る事のみである、脳で考える点よりも純衣に向かい
全ての気持ちをぶつけた時、標的である純衣に対し
勝ちたい欲望を勝りひた向きに気持ちをぶつける子
供的発想のみが支配していた他ならない、だがその
思想は犯罪者特有の自己満足やプライド等ではない、
一見八つ当たりにも似ているが大きく違った、過去
複雑な思いで日々を過ごし脳を使いマイナス思考を
増長させ僻み切った心で戦う黒田に初めて均等さ、
つまりバランスが生まれた思考になったと言うべきか
心と体のバランスは健康においても重要だ、理性
と本能も然り、どちらに偏りすぎてもその心は正常
とは言えない、そこに信念が加わり人は物事を判断
するからこそ己が生み出した価値観や常識という幻
に振り回されないでいけるとも言える、武器を殺人
の為だけに選んだのなら迷う事なく剣をとった筈、
だが其れは優位性を履き違えた結果となる、スピー
ド勝負まして相手は純衣だ、ゾーンに入った相手に
対しパワーは最早武器ではない、この戦いにおいて
棒は勝つための最善の物でもあったと言えた、あえ
て虚を捨て動きの良くなった自身の動きを妨げてい
る物、それは自身の培った無駄な動きで相手を翻弄
するスタイル自体にあったと言っても過言ではない、
越えられない壁に直面した彼は最も得意とした戦法
を変え挑む勇気を自身の中で生み出したからこそ過
去を越え新しい力を過去から学んだ経験を基に昇華
させる事が出来たのだった、現実を捉えあえて今
乗っている自身よりも得意な惑わされスタイルを変
えたのなら彼は即座に倒されていただろう、だが純
衣はあえて倒さないだろう、そしてもう一つの最大
の心の変化が黒田の中で大きくなって行く、そんな
中、純衣の声呟いた。
純衣「黒田……見えるか、私の後方で戦う由美の事を」
ゾンビに押されながらもその後ろにいる乙音を庇
いながら戦う姿が映った、戦闘力は乙音の方が上に
見えた、だが弱い筈の由美の声が聞こえた乙音の動
きが良くなって行くのも感じていた。
由美「乙音!踏ん張りな!」
乙音「ネェさん達がいるから安心して戦える、私よ
り自分の戦闘に集中して!」
純衣「あの子は気丈だが戦闘は弱い、だが力の弱さ
だけが強さでも無い、弱さの中に優しさを持って守
べき相手と守べき対象者を見失わない女だ、弱いか
らこそ強い力もある。
黒田「……」
その時ゾンビが由美の背後からその美しい背中に
歯を立て覆いかぶろうとした。
乙音「姉さん、後ろっ危ない!」
孝雄が気づき駆け寄ろうとするが間に合わない、
悲痛な声が孝雄の叫びとなって響いた。
孝雄「や、やめてくれ!」
瞬間、黒田の棒が純衣の回転の威力が加わった
横薙ぎ払いの威力に弾かれ、スルスルと黒田の持つ
棒が手から離れようとした、手に力を入れ吹き飛ぶ
のを力ずくで繋ぎ止めた棒からその方向性へ加わる
力を利用し大きく回転させると純衣の顔目がけ襲う、
屈んで避けたその棒の先が由美を襲うゾンビの顔を
抉り玩具の様にゾンビが吹き飛んでいった。
由美「あれ……」
孝雄が駆け寄ると強く由美を抱きしめた。
由美「孝雄……お礼はまだ先よ、てか苦しい」
孝雄「すまぬ、すまぬ私が側にいる、もう危害は加
えささない」
由美「……ありがとう、でも守られてるだけの女じゃ
アンタに好かれる資格は無いからね、戦おう一緒に」
孝雄「……そんな女だから惹かれたのだろうな、2人
共ありがとう私の全てを守ってくれた、本当にあり
がとう」
黒田「……」
ーー再び戦いは続く
純衣「あれがリーダーの夏帆だ、リーダーらしく弱
音を見せる事が出来ず数ある家族の安全と平和に貢
献している、こんな時代だ女は弱い、彼女だって平
和に生きてきた女だというのに誰かが立たねば仲間
を救えない現実に立った1人だ、菅だってそうだろ
う仲間に生きる為に体を捧げる商売なんてやりたく
てやっている訳じゃない者が殆どだろう、そして恨
みや蔑み、仲間からの恨まれ、時には八つ当たりの
対象とされ其れでも生きるために彼女は仲間を守る
道を選んだ、お前が見た目で判断してきた女の中に
はクズもいただろう、人は悪い方へとすぐに流され
る傾向がある、その中に1人でも正しい人がいたと
しても悪い人間に心囚われてしまう生物だ、その人
生の苦労や努力をお前は見た目で判断が出来たのか?
一見悪い奴に見えながら自身を犠牲にして悪意を一
身に受ける者もいる事を少しでも考えたことがある
か?お前もお前の嫌う人と同じ事をした結果が今で
は無いのか、お前が言うお前が感じたお前が悩んだ、
お前が恨んだ……そうお前自身がお前自身を結局恨
み妬み、蔑んだんだ」
人を蔑み己が心の弱さに1人を選んだんじゃない
か?逃げたんじゃないのか、だが彼女たちは違う、
力を鍛えるのが強さと思い込み逃げたんじゃないの
か、其れでもお前に彼女達を蔑む事が出来るのか、
その答えを気づき始めたお前の目に彼女達、今まで
蔑んだその眼と同じようにお前の目には未だ映るの
か?その答えを頭ではなく感動や悲哀、劣等感、其
れを感じた場所で感じてみろ。
憎悪の燃やす心で感じる……黒田の中で黒く歪ん
だ場所の中にその言葉が混ざっていく、少しの痛み
を感じたがその光は大量の闇に再び埋もれていくーー
円に動く純衣に対し線で応戦する黒田、口に含ん
だ仕込み針が3発鋭い動きで純衣を捉えようと走る
が純衣は既にその場所には居なかった、ただその針
は夏帆を襲う輩の顔に突き刺さるのだった。
戦いは続く、その隙に輩達が更に多くの血を吸う
為に縦横無尽に暴れわ舞っていた誠含めゾンビと戦
いながら蹴散らすも数が増えていく敵に翻弄される、
だが気がつけば辺りで戦いの場を移動しながら戦う
黒田達に巻き込まれるように次々と倒れゆく輩達が
いた。
激しい横の攻撃と純衣の円がぶつかり合って身体
事飛ばされる2人、そして嵐の様に激しくぶつかっ
た後2人の距離が空いた……俯く黒田の動きが止まる
と地面を見つめていた、そして静かに瞼を閉じ束の
間の時間が流れた、彼の感じた瞬間の今は彼の人生
の中で最も短くそして最も長い時だった。
再び目を開けるとゆっくりとした動きで静かに懐
から出された物は黒く妖しく光る銃だった……
黒田「……俺はもう戻れない」
寂しそうに銃を見つめる黒田は呟いた。
純衣「戻る時は誰にも無いんだよ」
夏帆「今更銃だと!どこまでも汚ぇ!」
黒田「汚いか……」
純衣「汚いね」
だが其れでいいと言う満足げな表情を見せた純
衣だった、ゆっくりと銃の的を純衣に向ける、銃を
握り締めると直ぐ様躊躇う事なく銃口が純衣に向け
られようとした、それは人を傷つける為にのみ作ら
れた冷たい鉄の塊から発射された悪意のみの弾が命
の灯火の熱さに向けて放たれた。
『ドン』1発目
弾丸の軌跡がまるでスローモーションの様に黒田に
は感じ取れた。
(なんでこうなった……いつから私は)
撃鉄を起こした瞬間、純衣は身を丸くし異常なま
での低さの姿勢からまるでバネのように弾けた、そ
の弾は純衣の影に砂埃を撒き散らした、容赦なく2
発目の引き金を引いた、躊躇いなどない悪意を込め
た銃声が辺りにこだますると戦う者達も戦いながら
もも注目していた。
2発目『ドン、ドン』
(全てが妬ましかった、憎かった……出会った時か
らムカついた、そして……楽しかった)
ジグザクに動く純衣に低い姿勢での的は当たりに
くい、凄まじい動きの彼女はスピードを生かし身を
素早く反転させながらも器用に棒先を地面に刺しそ
こを支点に半円を描き跳ねる、時には小さく、時に
は大きく、そして棒の刺す勢いを乗せ光の様なス
ピードを感じさせた、長い髪はゆるりとその影を追
い踊るような髪は美しい曲線を描いた、トリガー式
短銃での連発の間もあり3発目の引き金を引く時、
既に純衣は彼の目の前まで迫っていた。
トリガーの引く指が止まる……だが反し純衣が叫ぶ。
純衣「引け!全てを込めて今こそお前の全てを込め
て放て!」
その声に黒田は条件反射で本気の引き金を引いたーー
3発目『ドンドンドン』
黒田「当たるな……当たるな当たるな当たるなあ!」
引き金を引いた瞬間彼にも何故その言葉を呟いた
か分からなかった言葉と反し彼の引き金の殺意は本
物だった、だが同じく反し脳の思考は追いつかず出
た言葉もまた本心だった、燃やし尽くされる寸前の
悪意は最後の炎を燃やす様に殺意となりて最後の弾
に込められた、ほんの瞬きの間もない程のほんの小
さな小さな時間の中、全てが消えるか生かされるか
……時と場所ほんのコンマで全ては本当に消え彼女
のみならず彼ら仲間とそれを取り囲む全ての運命は
消える現実があった……ほんのコンマの差の中に、
そしてそれは逆も然り現実になり得るかは人の運命
の別れ道などそんなほんの小さな時の中で交差し、
またどれも現実となり得るのだ……
「アンタのためにも当たらないよ……」
微かに聞こえたその言葉を聞いた時、黒田の視界
は歪み黒く染められて行った……彼の体は大きく空
へ舞い純衣は棒を回転させると綺麗な髪の毛が彼女
を取り巻く様に下へと流れる中、言った。
『愛から出直して来な』
その瞬間歓声が地響きの様に辺りに響いた、考え
る事もなく意識のない筈のゾンビも一際大きい歓声
の圧に動きが一瞬止まる程に、そして多くの者達が
敵味方問わずその戦いに魅了されていたことを証明
する様に大きく激しく歓声が地響きのように響き
渡った。
黒田の巨躯が地面へと落ちると視界がぼやけなが
らも気を失う寸前の光景が目に入った……その光景
を彼はすがる様に心に焼き付けたのだった……その
目には懸命に菅を救おうとするヌクの姿、今まで敵
対し争っていた虎や豹達も我先にと言わんばかりに
輸血に協力している姿、そんな仲間を囲み皆懸命に
守ろうと戦う姿が目に入った……
黒田の思考はもう働いてはいなかった、ただ心の
見えるまま、そして感じるままに震える唇を噛み締
めて心の声を現実にしようと絞り出す声で言った、
そう確かに言った……それは一言だった。
ーー『ありがとう』
皆が懸命に戦った、救助活動を妨げささないよう
戦った、そう『力』で……皆が懸命に戦った、消え
ゆく灯火の中、敵味方問わず自身の血を菅に与え
戦ったそう『力』で……戦う彼女を信じ、こうなる
事を躊躇いもなく信じ、仲間達の力となる武器を懸
命に作りながらもハクが大事に作っていた物、それ
は気管挿管だった、それを使い気道を確保する姿を、
戦った、そう『力』で……
見窄らしく汚いだけの老害である筈のヌクが彼女
の体から噴き出る血を顔に浴び拭いながらも懸命に
戦った、そう『力』で……
決して敵と戦うだけの『力』では救えない命の灯
火、其れを皆の違う『力』で繋ぎ止め、そして一つ
の希望に向かい先のわからぬ結果に向かい誰1人諦
める事なく最初から戦う姿に、そして『力』にはい
ろんな種類がある事に、そして其れを繋ぎ一つの新
しい『力』を生み出す『力』誰1人として1人では成
し得ない『力』を見たのだった。
そして黒田は気を失った……大歓声が止まない中、
2人の戦いは闘いとなりて今終結の時を迎え新たな
命を吹き込んだ。
「反吐が出る……偽善者のペテン師集団が」
だがそんな中、不審な影が一つ……豹達に倒され
た輩の1人が銃を片手に的に銃口の標準を合わせてい
た、獲物それは美しい髪を靡かせた純衣の背中に
だった、皆、菅の治療に気を取られ気付かなかった、
長いゾーンに入っていた純衣も戦いが終わり普段の
彼女に戻った事で気付けなかった、この場で生まれ
た希望という光が全てが一瞬でひっくり返るほどの
悪意、其れは銃という名の人工物。
輩「茶番劇か、反吐が出る、だがこの状況からあの
女が倒れれば状況は一変する、完全なる絶望ってや
つだ、面白ぇ!」
引き絞る引き金に最後の力を込めた瞬間、輩の
手に緑の大きい手が上からかぶさると一瞬でその手
ごとメキメキと嫌な音をたて歪な鉄の塊と肉の塊に
変化する、ほんの一瞬何が起こったか理解出来ない
輩は己の手を眺めた後痛烈な痛みが脳に認識した瞬
間、悲鳴にも似た怪奇音の様な叫び声を上げたの
だった、だが背後に立つ恐怖その物の圧に振り返る
と其処にいたのはグリマンだった。
大きいグリマンは人間にはわからない言葉で囁いた。
「戦いは神聖、戦う者の戦いを汚すものは許さない」
戦闘民族であるグリマンだったからかもしれない
だが、彼等に於いて戦いとは神聖なもの、母なるマ
ザーに捧げる儀式としての認識だった、侵略時大勢
の人間を殺めた時の感情は作業ではあったが真の戦
いに於いては戦うものに敬意を持つ民族でもあった。
そして辺りを見ると騒ぎはいつの間にか沈静化し
ていた……原因は静観を決めていたグリマン達が動
き出したから他ならない、その巨大な体躯と力で熊
やゾンビ、輩達を次々と軽く薙ぎ倒していたから他
ならなかった。
豹「何故あいつらが?今まで静観していただけだっ
たのに」
虎「心を動かした……そういう事なんだろうな」
豹「へーアンタらの口からそんな言葉が出るなんて」
虎「あんな戦い見たら誰でもそう思うでしょ、それ
に私達だって人間だ、善悪の良し悪し位するさ、時
代によって感覚は麻痺していくものだけどさ、色々
大切なものはまだこの地上に残されてるって思うと
さ……嬉しいし賭けてみたくなるよね」
豹「そうだね……どんな時代が腐ろうが、まだあん
な純な子がいると思うと色々考えさせられるよね」
皆思った、皆感じた、彼女に過去の平和な時代の
匂いを、荒んだ世界の中、平和な時代の自由を、彼
女の真っ直ぐさはまた平和な時代に於いても理想と
する生き方そのものであった事に、その心は少女の
様に世界に染まらず世界を作り出していた時を……
沈静化した状況になり無言で立ち去るグリマン、
そして1人のグリマンがハッチの前で振り返るも何
も言わず立ち去ったのだった。
丁度其処に現れた笠田は辺りの凄惨な光景に目を
疑った、
笠田「何が起きていた」
秘書「……」
誠「毒は完全に消えた様だな
純衣「ほぇ……そういえば私元気だ」
ヒロ「そりゃそうでしょうよ」
純衣「どう言う事?」
裕太「ふふふ」
クリス「気楽なもんだな」
ヒロ「菅さんから約束通り解毒剤を勝ち取ったハク
さんが飲ませたんですよ」
夏帆「アンタもう自力で飲む力さえ無かったんだよ」
由美「ハクさん解毒剤一気に口に含んでさ」
純衣「まさか……まさかまさか」
ヒロ「熱いキスだったっす!俺も彼女欲しいっす!」
純衣「えー!えーーー!馬鹿ばか私!気がつかな
かったヨォおお」
おどける彼女を取り囲む皆の中にあれだけ澱んで
いた闇は消え去り皆の明るい話し声だけが辺りを照
らした。
こうして闘いは終結した、大きな歓声と共に、そ
して試合は第三試合、明日の朝開催される。
不安な影は人のみにあらず、停滞と進行を繰り返す
巨大台風はその数を増やし歪な進路を取りながらも
近づいていく……
 




