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純衣戦12 強さとは

 後退気味の黒田を押し除け菅が前に立ちはだかった

その目は消えかかる瞳とは思えない程の美しさだった

そして覚悟した眼差しに黒田はたじろいだ、その背し

か見なかったが哀愁の漂う人の最後の覚悟に黒田の心

を揺らす言葉が聞こえてくる。菅「私ごと貫いて……

貴方は生きて、今はかなわなくても貴方ならいつか彼

等と並ぶ強さを宿せる、そして今は貴方の選んだ道の

その途中である道の為に私を利用して……だって私の

全ては貴方の為にあるから」


黒田「お前を犠牲にして俺は……俺は勝てるのか」

 その言葉虚しく黒田の目は瞬時に敵に勝てると言う

欲望に飲み込まれた、だが菅は背後に殺気を漂わせた

黒田におじける事なく真っ直ぐ純衣の目を見て離さな

かった。

菅「アンタ最高だった、最後にいいもの見せて貰った

よ、こんなに正直に自分に生きて思う言葉のままこの

人に愛を語れる日が来るなんて思いもしなかった……

私はそれだけでもう充分だ、仲間の事、黒田の事頼む

……な」

純衣「あつかましいね……」

黒田「女はあつかましい位が丁度いいのさ……アンタ

も少しあのハクとやらにあつかましく行動してみな、イチコロだよアンタなら」

純衣「……ふふ」

菅「顔真っ赤だよ、本当に素直で可愛い娘だね」

 純衣と菅は一時も目を話さず互いに少し微笑んだ、

そして純衣は棒を静かに上げ突きの構えをとる、そし

て菅の背後に黒田もゆっくりと近づいて行ったのだっ

た。

菅という壁を向き2人は構え距離は近づいていく……

黒田「……さ、最後に役に立ちそうだな」

壁の向こうで純衣が呟いた。

純衣「……アンタその剣を刺したら終わりだよ」

黒田「元より終わっている」

純衣「終わって無いよ、その証拠がお前を守ろうとす

る菅と言う壁だ、あんたの為に生きる人間がいる、命

をかけて戦おうとする人が愛を強さに変えてアンタの

目にいる」黒田「……弱気愚者の命など取るに足らん」

純衣「アンタの事か」

黒田「俺が弱い……」

純衣「お前は強いのか?」

黒田「……認めよう、お前ほどでは無い」

純衣「私とお前の実力の差なんてかわりゃし無いよ」

黒田「……まだ愚弄するか」

純衣「私はハクが居なければ拷問器具の時点で終わっ

てるよ、アンタの勝ちだった」

黒田「……」

純衣「アンタが強いなら何故、菅の背後で泣く」

黒田「……真の強さとはなんだ、俺はどうやったら強

くなれる」

純衣「認める強さ、そして立ち上がる力、お前が今す

べきことは、その剣を引くことだ、怖いか?負けるの

が」

黒田「怖い……」

純衣「その剣を貫いた時点でお前は負ける、私にでは

なくお前自身に、決して逃れられ無い自己からな」

黒田「引けば勝てるとでも言うのか……」

純衣「自分にはな」

構えながらも純衣は話を続けた。

「一つ聞く……お前が勝たねばなら無いのはこの試合

だけか?」

黒田「笑わせる……俺はお前を倒し雪丸をも倒し俺を

蔑んだ全ての悪意に勝ち続けるんだ!」

純衣「その度にお前はお前に負け続け本当に勝たねば

なら無い戦いには決して勝て無い」

黒田「何故そう言い切れる」

純衣「己に勝て無い者に勝利は無い、そしてお前が目

指す頂きにいる目標とする人間は常に自分に勝った者

達だからだ、雑兵に勝ちたい訳では無いだろう、その

度にお前は自己から逃げ楽な道を進み」

黒田「黙れ!俺はどんな苦難にも勝ち、今ここに立っ

ている!」

純衣「そしてまたお前は負ける」


現実に勝て無いと心の何処かで思っている黒田には苦

痛の言葉。黒田「お前に俺の何がわかる!」

純衣「わからないね……わかっているのはお前自身の

みだ、お前は今現実と直面し思い悩みそして選んだ道

に迷いがあるからこそ悔しいのだろう?腹が立つのだ

ろう?そしてその怒りは私に向けてではなく、その怒

りの本当の矛先は自分自身と言う現実から逃げてるだ

けだ、自分に問え、真実を!そしてその恐怖から逃げ

るな、立ち向かえ、悩み苦しみ、負け、その度に立ち

上り挑み、そして何度でも自分に勝ってお前は強くな

る」

黒田「聞かせてくれ、俺は……強気ものの言葉しか聞

か無い、何故この弱い女を庇う」

純衣「お前が言う弱者はここに居無い、菅の行動は仲

間を託し権力を捨て愛のためにプライドを捨て矛盾に

も敵である私にお前を救ってと言った、お前には出来

るか?お前の仲間は出来るか?命を差し出し、自己を

賭けて本当に守りたいモノを守ることが」


ハク「守りたいものは自分であってもいい、だけど自

分を守る事から逃げてるのは君だけだ」

黒田「自分に負けてる……」

純衣「全てはお前次第だ、お前の世界はお前だけが持

つ世界、他人が関わろうがそれも含めお前が見た世界

感じた世界はお前だけのものだ、そしてお前はその本

当の心の中の一番求めてる世界を裏切ろうとしてる、

愚かにも自身の手でな」


ハク「強くなる目的に恐怖はない筈、君の中に求める

目的、強さが本当の目的ならば負ける事は恐怖になら

ない、そして本当に勝ちたい勝負に勝ちたいのなら先

ずは自分に勝て、逃げるな、考えて、そして考えるな

その先の答えは常に自分の心が指し示してくれる」


 黒田の持つ剣から力が抜けその目には生気が薄れて

いった……その時、背後から集団の声がした。


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