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純衣戦 3 心の葛藤

黒田「お前から流れる出血は意識を朦朧とさせる、

平和ボケした理想論をぬくぬくと浸る時代でもな

ければ、そんな人間は居ない現実を知れ、愛は人

を狂わせ嫉妬から人を落とし入れ、また実益がな

ければ消えゆく幻だ、お前は錯乱し、意味がわか

らない言葉を発する、それにだ、その男にお前は

過去いろんなものを与えたかの知れぬが、与えら

れた分はそれを凌いでいるのか?此処で血を流す

お前よりも、俺にも経験はある、だがそれは利益

換算だ、人は裏切る」

純衣「人は損得で動くよね……確かに、した事に

関し同様、それ以上の物を与えられる事を望む」

黒田「当然だ」

純衣「与える事は自身がしたいからする、したい

事に対し、対価を求めるのは自身しか見ていない

証拠だ、それに与える喜びをお前は自身の幸せと

感じた事が無いのか、お前の言う理論、それは自

己愛のみだ、私が彼に求めている事、其れは彼ら

しく居てくれる事以外に無い」

黒田「……」

純衣「だが……私は既に多くの物を彼にいつも貰っ

ている、だけど彼も貴方が言う理論で動いている

訳では無い、彼は今までだってしたいからそうし

ている、それが彼の心の基礎だ、求めなくとも与

え合う、それが本来の愛情というと私は思ってる

、そこに下賤な解釈を入れるんじぁねぇよ、あの

人は……あの人は」

黒田「支離滅裂とはこの事か」

相葉「人には伝えたい本心という事を言葉にする

のは難しいんだ、俺もそうだ……家族に伝えたい

気持ちを言葉に出来ない、だから人は態度や働き

で、そして添える様に言葉で飾り相手に伝え……」


語りかける相葉に対し、憎悪の様な悪意の目で激

しく罵倒する黒田、

黒田「黙れ!弱者の言葉に価値は無い!聞くだけ

で時間の無駄だ!」

相葉「……」


間に割って入る誠が呟いた……

誠「それ今である必要があるのか?」

黒田「どういう意味だ……」

誠「此処に居ないことが全てなのかと言ってる」

黒田「肝心な時に居ない者の気持ち等、たかが知

れてる」

クリス「お前の中には無いのか、居続けるものが」

黒田「居続けるモノ……だと?」

裕太「それは根本にだよ、積み重ね、大きくなる

ものだ、人は忘れやすいよ確かに、最初に感じた

愛だよ、それは時間が薄れさせる事も多いけど、

積み重ね、大きくし、常にそれをと向き合い育み、

自身の中で大切に守ったもの、その想いの積み重

ねは木のように大地に『心』に根を張り、嵐が来

ようとも揺るぐ事も無く、やがて空に『未来』大

きな葉を付ける、そしてその木は『2人の道』互い

が通じ合った中で片方だけで完成するモノじゃな

い、彼女の中に揺るがない気持ちがあるならば、

それは応えるモノであり既に未完ではない完成さ

れた相愛、此処に居ようが居まいが心にあると言

う事、その大樹を囲む2人は同じ気持ちだから」

黒田「訳わからないことを……」


「だが何故だお前の心は折れたはず、だが何故力

を失わない、そんなに芯の中に宿る強さが強いと

言うのか」

「今彼がいない隙間を埋めるのは私の役目、私は

その役目を誰にも譲らない」

それは悲しくもありほんの小さな幸せの中に哀しみ

を含んだ。


黒田は思った、彼らが言う言葉が理解出来ないと、

自身が体験してきた過去に思い人は居た、だがそ

の女は黒田を裏切り、他の男と逃げた、愛はあっ

た、誰よりも負けない愛が、そう自身が自負する

程の……。


黒田は歯軋りが止まらない、肌から鳥肌が立ち寒

気が全身を覆って居た、その彼女も付き合い始め

の頃は想いが通じ合っていた筈だった、私は彼女

の為ならこの身を捨てても良かった、こいつらが

言う愛は詭弁であり幻想、時間の中で透明な愛は

やがて濁り腐っていく腐敗した水は濁り、向こう

側『未来』を見る事も出来ず腐っていく。


黒田「はははっ!鳥肌が止まらねぇ!お前らの言

う言葉ひとつ一つが何故こんなにも俺の心に嫌悪

感と憎悪を湧き出させるのか!まぁ言葉より分か

り易い行動で俺がその化けの皮お剥がしてやる」


そう言うと美唯を呼びつけた。

黒田「おい、女」

美唯「は……はい」

黒田「お前は俺の相棒だ、俺が選んだ女だ」

美唯「……」

黒田「分かっているな、闘技場に立ったお前は此

処であの女と戦う、それを拒否することはボスの

命に逆らう事、つまり仲間達豹の命全てはお前の

行動にかかっていると言うことだ」

美唯「そんな……私なんかが叶う訳無い!」

黒田「叶う訳は無い……か、やる前から決めつけ

る雌豚が、泣いて許される時代は終わったんだよ

、それに現実は勝てるさ……ふふ」

黒田はそう呟くと美唯の着る上着を剥ぎ取り上半

身裸のままで武器を持たせ純衣の前に立たせた。


観客「ヤフーい!流石、旦那だ!サービスを忘れ

ねぇとは!戦いは血と花がなきゃな!」

盛り上がる観客達をよそに美唯は震えていた……。

黒田「お前が言う愛とやら行動で示してみな、見

ての通りこいつはただの雌豚だ、強さも無い、知

性もない、取り柄も無い、あるのはこの世に授かっ

た苦労もせずある肉体で男を喜ばせるだけの雌豚」


純衣の額から汗が滴り落ちた……。

黒田「勝てるだろ?おい女、行け」

追い詰められる心情に観客の騒ぐ声に目眩がする、

視界に入ったのは夏帆や由美、豹の仲間の姿だっ

た、美唯は剣を握り絞め、一歩、そして一歩前へ

と純衣に近づいていく。


誠「汚ぇ野郎だ!それが狙いだったか!仲間に攻

撃させる事で純衣を精神的に追い詰める事が目的か」

ヌク「マズいの……彼女が立ってられるのも精神

力の強さの他ならない、黒田はそれを知って攻め

方を変えてきたの、勝ちに対する執着心の中に残

虐さとはよく言ったもんだ」

孝雄「彼女は美唯を攻撃することは」

ヌク「出来ぬだろうな」


夏帆「汚ねぇ!」

菅「何が汚い……ルールの乗っ取り最善の策をし

ただけだろう?言っとくが相棒を強気者にしたと

しても純衣の不利は一向に変わらないむしろ誰も

相棒に選ばなかったあの女が馬鹿なのさ」

由美「そうだよ、なんで誰も選ばなかったの!勝

たなきゃ誰も救えない!自身の身だって!私達全

員の命もだ!」

夏帆はその意図を理解していた、だからこそ由美

の肩に手をそっと添えると首を横に振り言った。

夏帆「アイツは全てを救おうとしてる、馬鹿だけ

ど……責められる馬鹿じゃ無い」

真剣な眼差しで訴える夏帆の顔を見て由美もそれ

以上は何も言わず席に座った。


美唯の攻撃は上段からの振り下ろし、お粗末な力

のない斬撃が純衣に向かい振り下ろされる、それ

を半身を捩り攻撃を躱す、さらに横からの斬撃や

斜めの斬撃、目を瞑りながらも美唯もまた仲間の

為に戦い続けた。


黒田「おいどうした、攻めないのか?」

美唯が再び横からの薙ぎ払いの斬撃を躱した瞬間、

空いた美唯の脇をも切り裂きながら鏢が純衣を襲う

純衣「!」

鋭い鏢の矛先は美唯の胸をかすめ純衣の眉間を正

確に狙う、反応が少し遅れた純衣は棒を盾にし、

鏢は棒に刺さり何とか攻撃を凌ぐ。


黒田「おい油断するなよ、タッグ戦だって事忘れ

んな?」

純衣「女を盾に……」

黒田「女?相棒だよ、競技場に立った者は戦闘者

だ」

黒田が顎で美唯に指示を出す、早くいけと……戦

闘は続いた、純衣は予想通り美唯を攻撃する事は

出来ず、更に隙を見て黒田の猛追に苦しんだ、だ

が自身が傷つくよりも震え、仲間の為に戦う美唯

の体自身をも傷ついていく姿に何より心を痛めた。


戦いは20分続いた、美唯の体から真紅の血が至る

所から流れ彼女の意識も出血から朦朧ちし始めた

姿を見た純衣が襲いくる剣を躱しながら美唯の背

後を取る、黒田が放つ鏢を高速回転させた棒で弾

くと美優の体を左手に支え、まるでバレリーナの

様にクルクルと美唯、純衣自身の体が駒の様に回

り始めた。


黒田「何する気かわからないがさせないぜ……」

味方の判別もない鏢による猛追が純衣達を襲う

『ヒュ』っと息を素早く吸い整え高速回転した棒

は美唯を守る様に悉く弾き飛ばした、だがそれを

凌ぐ速さで繰り出される黒田の鏢に自身の身もや

がて傷をおう、そして棒は遂に猛追に耐えれなく

なり額に向け放たれた鏢の刃を受けた場所から次

第にヒビは大きくなりやがて破裂するように片一

方の棒の先がボロボロになったのだった。


黒田の手が止まると同時に純衣もまた高速回転が

緩まり膝を地に落としたのだった。

純衣「ケホケホッ」

黒田「……出血により意識が朦朧とした所で高速

回転で気絶させ女の戦闘能力を無にした上に愚か

にも敵を守るか、もはや見事」

拍手で純衣を称える黒田であった。


黒田「見る度に殺すのが惜しくなる……だが、答

えはまだ見えてない、それで守ったつもりか」


司会「あのその……声のかけるタイミングがむず

かしい、だがそれ程の素晴らしき試合!だが美唯

選手は行動不能とは言えませんね!純衣選手、追

撃で彼女に止めを刺さないのであれば仕切り直し

となりますが?しませんか?しませんよねぇ」


純衣から美唯を引き剥がし黒田の側に引きずって

いく司会。

司会「さて仕切り直しだ!試合続行!」

黒田と純衣は動かない、純衣は先がボロボロになっ

た棒を黒田に向け黒田は新しい武器を手に取った、

それはサーベルであった。


黒田は出血に高速回転から意識が朦朧とし横たわ

る美唯に向け呟く。

「使えない肉塊だな……では理由その2だ」

冷たい目で美唯を見た黒田のサーベルの剣先が純

衣に向けられる。

純衣「……」

黒田「この武器は細いが鋭い速さを持つお前を切

り刻むにはいい」

「だが……理由その2」

黒田「ヒャハハ!」

笑い出した黒田の剣先は純衣から美唯に向けられ

た、純衣は身を起こしそうとするが上手く体が動

かせない、黒田はその姿を見て笑う横たわる美唯

の体を切り刻み始めたのだ。純衣「や、やめろ!」

黒田「ヒャハハははは!聞こえないね」

わざと致命傷を与えず皮膚一枚を丁寧に斬る、痛

みで美唯も意識を取り戻し泣きながら体を丸める

しか出来なかった。美唯「痛い!痛いよぉ!何で

私が何をしたって」

黒田「役立たずが!相棒の役目を果たさせてやっ

てる」

切り刻まれる美唯の体を見た純衣は呼吸をも整え

ず駆け出した。

黒田「な?無防備で来やがっただろう?相棒、初

めて役に立ったなおめでとう!」

近づく純衣に鋭い突きの連打が襲う、3撃目、5劇

目、尚も躱しながらも近づく純衣、その躱すタイ

ミングの隙を突き、尚も美唯を斬り続ける黒田、

美唯「痛い!痛いよぉ、夏帆ねぇさん助けてよぉ」

夏帆や由美、豹の仲間達に誠らも立ち上がる。

誠「男か!テメェ!俺が相手だかかってこいや!

今すぐにだっ!」


純衣「埒があかない!」

そう呟いた純衣の動きは直線に変わり黒田の眼が

光った瞬間、鋭い突きが襲う、だが純衣は首を曲

げ辛うじて躱しながらも躱し切れない剣は白く美

しい純衣の肩に勢いよく刺さるのだった。


黒田「……馬鹿め情に負けるとはな」

純衣の顔が細く微笑んだ。


黒田「な!」

純衣の肩にさったサーベルを純衣自身が尚も前へ

押し込んで行く、サーベルの切先が見えなくなる

ほどに純衣の肩にめり込むと、その身を捩り苦痛

の表情も見せず体でサーベルを折った、尚反転し

回転中に自身の体にめり込んだサーベルを素手で

抜き取るとその先を持った手で黒田の首めがけ刺

そうとする、黒田も危機を感じ懐に隠し持った近

距離用剣、扇状のなった形状の刃で辛うじて攻撃

を防ぐと後に身を翻し距離を置いたのだった。


黒田「こいつ……」

黒田の目に映った純衣は自らの上着を彼女に掛け

はだける胸を隠す様に包み込んだのだった。


観客「テメェ!見えねぇだろーが!何隠してんだ」

「はぎ取れ!黒田!」

醜悪な怒号と眼が純衣に向けられる、その光景を

黒田もしばし純衣から目を背け見ていた。


黒田(地獄の亡者共め、汚くひもじい劣悪な肉の

塊め……息をするな言葉を発するな……)


そして純衣を見る……。

黒田(偽善者め……吐き気がする、自身が傷つき

守るだと、その行為は見ろ、周りを、観客の悪意

を増長させているだけだ)



ーー笠田ーー


「優位……だが危ういな、いつ形勢が逆転しても

かしく無いな」

秘書「まさかここまでやれる駒がいるとは誤算」

笠田「……先程の連絡は確かなんだろうな」

秘書「はい毒を盛られているのは間違い無いかと」

笠田「虎のリーダーは黒田の崇拝者だ、間違いは

ないだろう、となると時間を伸ばした方が優勢、

状況的にも、そして精神力でもっているとなれば

心を折る方がいい」

秘書「そうですね、観客達も喜びます、そして今

の体制の根本、自己主義で成り立つ我がコミュニ

ティーの根本をもう一度奴らに見せるメリットは

大きいかと、何せ一戦目の戦いは観客の心の中に

危うい感情を呼び起こさせた種を腐らせなければ

なりません、同時に勝利とそれを摘み取るには実

に効率的かと」


笠田「新しい装置を試すにもいい機会だ、やれ」

秘書「了解しました」


司会「時間です!新たなカードが選択されます!」

相葉「何だと!時間告知は来てないはずだ!」

司会「カードはお見せしたでしょう?公平性を保

つ為、誠意は示しました、だがそれは貴方型のカ

ードです、公平性は此方にも権利があり、交互で

時間カードの選択を行う、これで五分五分、です

よね交渉は互いのメリットで成り立つのです」

相葉「……メリットだと?これは試合だろうが!」

司会「先程、それを交渉カードを利用し策を講じ

たのは先方が先」

相葉「どう足掻いても向こうの都合のいいように」

司会「ではカードが切られました!何々……」

司会「……」


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